28 / 49
028 大豪邸を買ってみた
しおりを挟む
「これが俺の家かぁ」
ジャイアントサンドワームを倒した龍斗は、久が原の豪邸を3500万という超格安価格で購入した。手続きはその日の内に完了し、魔物を討伐した数時間後には明け渡された。
龍斗と仁美は買ったばかりの家に来て中を見て回る。探検しているような気分だった。建物面積570平方メートルの豪邸はあまりにも広く、どう見ても使用人が必要な大きさだ。
「家具が最初からあるってのは楽でいいよねー」
「それには同感だけど、ベッドもそのままってのはなんだか気持ち悪いな」
「その点は安心していいよ。寝具は新品と交換してあるからね。だからほら、すごく綺麗でしょ?」
「たしかに」
二人はひときわ大きな寝室の中に来ていた。壁には落書きにしかみえない絵画が飾っており、それを観た龍斗は「前の持ち主とは絶対に性格が合わねぇな」と思った。
「それにしても広い家だね。しばらくは一人だろうし、すごく寂しい気持ちになりそうだけど大丈夫?」
「寂しさがこみ上げてきたら実家に戻るさ」
「えー勿体ない。誰か呼んでパーティーとかしないの? 友達とか」
「それも悪くないかもなぁ」
と言いつつ、龍斗にはその予定がなかった。友達がいないからだ。精神年齢が大人の彼にとって、小中学校の同級生とは話題が合わなかった。それで自分から周囲と距離をおいていたのだ。
「そんな反応してるけど、友達いないでしょ?」
仁美が龍斗の前でニヤリと笑う。
「バレたか」
「バレバレだって」
「なんだったら仁美もこの家に住むか?」
それは龍斗にとって何気ない一言だった。
だが、仁美は「えっ」と驚いた。
「俺だけじゃ大きすぎるし、両親は実家から引っ越す気はないと思う。で、仁美はお金を稼いでアーリーリタイアしたいんだろ? なら今の家を引き払ってここで暮らせばいい。俺が光熱費を払うから、家賃に加えて光熱費も節約できるぜ」
「でもそれって、同棲ってことになるんじゃない?」
「女と男が一つ屋根の下で過ごすことを同棲って言うならそうだろう」
「だよねー。嬉しいお誘いだけど、やめておいたほうがいいと思うよ」
「なんで?」
「もしもだよ、いずれ恋人が出来た時にさ、血の繋がりがない女と一緒に暮らしてるってなったら、相手の子が嫌がると思う」
「その時は仁美に出て行ってもらえばいいさ」
「私はそれで問題ないけど、女ってのは嫉妬深いからね。出て行ったとしても尾を引くよ。だから、私のことを恋愛対象として見ているのでなければ、やめておいたほうがいいと思う」
「ふむ」
「それでもよければ私は構わないよ」
「うーん……」
龍斗は悩んだ末に首を振った。
「ごめん、やっぱりやめておくよ」
「オッケー」と頷く仁美。
「女ってのは難しいな!」
「あはは、そうだね」
この時、龍斗は気づいていなかった。
仁美はあえて女に限ったように言っていたが、この話題に性別なんて関係ないのだ。もしも自分の恋人が血の繋がりのない異性と同棲していたとして、「ただの友達でやましいことはないから安心して」と言ってきても、大抵の人間は安心できない。その時は強がって「問題ない」と言っても、どこかで綻びが生じるだろう。
だから彼女にとっても、この家で同棲するというのは容易に承諾できる話ではなかった。将来できるであろう彼氏に対する配慮が必要になるからだ。それでもなお、仁美は「龍斗がよければ同棲してもいい」との発言をした。
そこまで龍斗の考えが至っていれば、彼女の秘めた想いに気づけていたかもしれない。
ジャイアントサンドワームを倒した龍斗は、久が原の豪邸を3500万という超格安価格で購入した。手続きはその日の内に完了し、魔物を討伐した数時間後には明け渡された。
龍斗と仁美は買ったばかりの家に来て中を見て回る。探検しているような気分だった。建物面積570平方メートルの豪邸はあまりにも広く、どう見ても使用人が必要な大きさだ。
「家具が最初からあるってのは楽でいいよねー」
「それには同感だけど、ベッドもそのままってのはなんだか気持ち悪いな」
「その点は安心していいよ。寝具は新品と交換してあるからね。だからほら、すごく綺麗でしょ?」
「たしかに」
二人はひときわ大きな寝室の中に来ていた。壁には落書きにしかみえない絵画が飾っており、それを観た龍斗は「前の持ち主とは絶対に性格が合わねぇな」と思った。
「それにしても広い家だね。しばらくは一人だろうし、すごく寂しい気持ちになりそうだけど大丈夫?」
「寂しさがこみ上げてきたら実家に戻るさ」
「えー勿体ない。誰か呼んでパーティーとかしないの? 友達とか」
「それも悪くないかもなぁ」
と言いつつ、龍斗にはその予定がなかった。友達がいないからだ。精神年齢が大人の彼にとって、小中学校の同級生とは話題が合わなかった。それで自分から周囲と距離をおいていたのだ。
「そんな反応してるけど、友達いないでしょ?」
仁美が龍斗の前でニヤリと笑う。
「バレたか」
「バレバレだって」
「なんだったら仁美もこの家に住むか?」
それは龍斗にとって何気ない一言だった。
だが、仁美は「えっ」と驚いた。
「俺だけじゃ大きすぎるし、両親は実家から引っ越す気はないと思う。で、仁美はお金を稼いでアーリーリタイアしたいんだろ? なら今の家を引き払ってここで暮らせばいい。俺が光熱費を払うから、家賃に加えて光熱費も節約できるぜ」
「でもそれって、同棲ってことになるんじゃない?」
「女と男が一つ屋根の下で過ごすことを同棲って言うならそうだろう」
「だよねー。嬉しいお誘いだけど、やめておいたほうがいいと思うよ」
「なんで?」
「もしもだよ、いずれ恋人が出来た時にさ、血の繋がりがない女と一緒に暮らしてるってなったら、相手の子が嫌がると思う」
「その時は仁美に出て行ってもらえばいいさ」
「私はそれで問題ないけど、女ってのは嫉妬深いからね。出て行ったとしても尾を引くよ。だから、私のことを恋愛対象として見ているのでなければ、やめておいたほうがいいと思う」
「ふむ」
「それでもよければ私は構わないよ」
「うーん……」
龍斗は悩んだ末に首を振った。
「ごめん、やっぱりやめておくよ」
「オッケー」と頷く仁美。
「女ってのは難しいな!」
「あはは、そうだね」
この時、龍斗は気づいていなかった。
仁美はあえて女に限ったように言っていたが、この話題に性別なんて関係ないのだ。もしも自分の恋人が血の繋がりのない異性と同棲していたとして、「ただの友達でやましいことはないから安心して」と言ってきても、大抵の人間は安心できない。その時は強がって「問題ない」と言っても、どこかで綻びが生じるだろう。
だから彼女にとっても、この家で同棲するというのは容易に承諾できる話ではなかった。将来できるであろう彼氏に対する配慮が必要になるからだ。それでもなお、仁美は「龍斗がよければ同棲してもいい」との発言をした。
そこまで龍斗の考えが至っていれば、彼女の秘めた想いに気づけていたかもしれない。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
宝くじ当選を願って氏神様にお百度参りしていたら、異世界に行き来できるようになったので、交易してみた。
克全
ファンタジー
「アルファポリス」と「カクヨム」にも投稿しています。
2020年11月15日「カクヨム」日間異世界ファンタジーランキング91位
2020年11月20日「カクヨム」日間異世界ファンタジーランキング84位
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる