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013 初めての仲間
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龍斗が放つ渾身の一撃、全力全開のキャノン砲。
「すっご! とんでもない威力!」
「でも、倒せているかは分からないのです!」
「そうよね、相手はボスなんだから」
仁美は「神様お願い」と強く祈る。龍斗の一撃によってボスが死んでいることを。生まれてこのかた一度たりとも神の存在を信じてこなかったくせに、最終的には神頼みだ。
「やったか!?」
よろしくないセリフが龍斗の口から飛び出す。
彼もまた、無神論者であるにもかかわらず神に祈っていた。
結果は――。
「………………」
そこには、なにもなかった。
かつてボスが眠っていた場所はぽっかりと空間になっている。
そして、龍斗の足下には菱形のクリスタルが転がっていた。
ブラックライオンの魔石だ。
「やったぁあああああああああああああああ!」
龍斗は両手に握りこぶしを作り、その場に膝を突いて叫んだ。表情に乏しい彼にしては珍しい喜びようである。
「本当に一撃で倒しちゃったよ!」
「凄いのです! 龍斗さん!」
仁美とポポロも感動している。
「仁美、龍斗のもとへ行ってワーイワーイするのです!」
駆け出すポポロ。
「先に行ってて! 私はすることがあるから!」
仁美はスマホを取り出し、何食わぬ顔で操作する。自動で送信するよう予約していた家族や友人に対する遺言メールを慌てて削除していた。実は彼女、ビビリながらボスに近づく龍斗を見て、密かに「こりゃダメだぁ」と諦めていたのだ。
「龍斗さん、凄いのです!」
「ありがとう、どうにか理論に狂いがないことを証明できたよ」
「おめっとさん、龍斗ー」
少し遅れて仁美がやってきた。
「ありがとうな、俺を信じて傍にいてくれて」
「えっ? まぁ、そりゃね、ハハハ、当然でしょ。私は勝利を確信していたよ」
遺言メールのことは言えねぇな、と思う仁美だった。
◇
ボスとの戦いで、龍斗たち3人のレベルは大きく上がった。
龍斗は50から55に、仁美は40から47に、ポポロは39から47になった。仁美とポポロは戦闘に参加していなかったが、同じPTということで経験値が分配されたのだ。
「すまないねー、寄生するような形になっちゃてさー」
魔物のいなくなった大空洞を歩きながら話す仁美。
「かまわないさ。ここまで護衛してもらったお礼だ。もちろんブラックライオンのクエスト報酬も分配しようぜ」
「えっ、クエスト受けてたの?」
「当然さ、俺は最初からアイツと戦うつもりだったからな」
「抜かりないなー! ザコの魔石も処分したら全部でどのくらいになるかな?」
「おそらく一人当たり100万円くらいになるのです」とポポロ。
「三等分だしそのくらいだろうな」と龍斗も頷いた。
「100万!? 1日で!? ヤバスギじゃん! 今日はラッキーデイだ!」
興奮する仁美。
「いや、ラッキーデイなんかじゃないよ」
龍斗は真顔で言う。
「ラッキーデイじゃないって、なんでさ?」
「仁美とポポロが協力してくれるなら、今後も同じ稼ぎが続くからさ。ラッキーデイではなく、当たり前の日常として俺たちは100万を稼ぐ」
「うはっ! 本気なの!?」
「俺はそのつもりだが。アイツを狩り続けてレベル75まで上げたいからな」
「なにその目標……。ある種の病気ね」
「俺は自らの理論を証明する為に生きているんでね」
「なんだかよく分からないけど、私はその話に乗るわ。この調子なら今年中にアーリーリタイアできそうだし!」
「仁美が乗るなら私も乗ったなのです! 小学校が始まるまでの間、よろしくお願いしますなのです!」
「ありがとう、二人共。こちらこそよろしく頼むよ」
こうして龍斗は、今後もライオン狩りをする為の地盤を築いた。
仁美とポポロは、彼にとって初めてとなる冒険者仲間だ。
「すっご! とんでもない威力!」
「でも、倒せているかは分からないのです!」
「そうよね、相手はボスなんだから」
仁美は「神様お願い」と強く祈る。龍斗の一撃によってボスが死んでいることを。生まれてこのかた一度たりとも神の存在を信じてこなかったくせに、最終的には神頼みだ。
「やったか!?」
よろしくないセリフが龍斗の口から飛び出す。
彼もまた、無神論者であるにもかかわらず神に祈っていた。
結果は――。
「………………」
そこには、なにもなかった。
かつてボスが眠っていた場所はぽっかりと空間になっている。
そして、龍斗の足下には菱形のクリスタルが転がっていた。
ブラックライオンの魔石だ。
「やったぁあああああああああああああああ!」
龍斗は両手に握りこぶしを作り、その場に膝を突いて叫んだ。表情に乏しい彼にしては珍しい喜びようである。
「本当に一撃で倒しちゃったよ!」
「凄いのです! 龍斗さん!」
仁美とポポロも感動している。
「仁美、龍斗のもとへ行ってワーイワーイするのです!」
駆け出すポポロ。
「先に行ってて! 私はすることがあるから!」
仁美はスマホを取り出し、何食わぬ顔で操作する。自動で送信するよう予約していた家族や友人に対する遺言メールを慌てて削除していた。実は彼女、ビビリながらボスに近づく龍斗を見て、密かに「こりゃダメだぁ」と諦めていたのだ。
「龍斗さん、凄いのです!」
「ありがとう、どうにか理論に狂いがないことを証明できたよ」
「おめっとさん、龍斗ー」
少し遅れて仁美がやってきた。
「ありがとうな、俺を信じて傍にいてくれて」
「えっ? まぁ、そりゃね、ハハハ、当然でしょ。私は勝利を確信していたよ」
遺言メールのことは言えねぇな、と思う仁美だった。
◇
ボスとの戦いで、龍斗たち3人のレベルは大きく上がった。
龍斗は50から55に、仁美は40から47に、ポポロは39から47になった。仁美とポポロは戦闘に参加していなかったが、同じPTということで経験値が分配されたのだ。
「すまないねー、寄生するような形になっちゃてさー」
魔物のいなくなった大空洞を歩きながら話す仁美。
「かまわないさ。ここまで護衛してもらったお礼だ。もちろんブラックライオンのクエスト報酬も分配しようぜ」
「えっ、クエスト受けてたの?」
「当然さ、俺は最初からアイツと戦うつもりだったからな」
「抜かりないなー! ザコの魔石も処分したら全部でどのくらいになるかな?」
「おそらく一人当たり100万円くらいになるのです」とポポロ。
「三等分だしそのくらいだろうな」と龍斗も頷いた。
「100万!? 1日で!? ヤバスギじゃん! 今日はラッキーデイだ!」
興奮する仁美。
「いや、ラッキーデイなんかじゃないよ」
龍斗は真顔で言う。
「ラッキーデイじゃないって、なんでさ?」
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「うはっ! 本気なの!?」
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「ありがとう、二人共。こちらこそよろしく頼むよ」
こうして龍斗は、今後もライオン狩りをする為の地盤を築いた。
仁美とポポロは、彼にとって初めてとなる冒険者仲間だ。
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