上 下
13 / 49

013 初めての仲間

しおりを挟む
 龍斗が放つ渾身の一撃、全力全開のキャノン砲。

「すっご! とんでもない威力!」

「でも、倒せているかは分からないのです!」

「そうよね、相手はボスなんだから」

 仁美は「神様お願い」と強く祈る。龍斗の一撃によってボスが死んでいることを。生まれてこのかた一度たりとも神の存在を信じてこなかったくせに、最終的には神頼みだ。

「やったか!?」

 よろしくないセリフが龍斗の口から飛び出す。

 彼もまた、無神論者であるにもかかわらず神に祈っていた。

 結果は――。

「………………」

 そこには、なにもなかった。

 かつてボスが眠っていた場所はぽっかりと空間になっている。

 そして、龍斗の足下には菱形のクリスタルが転がっていた。

 ブラックライオンの魔石だ。

「やったぁあああああああああああああああ!」

 龍斗は両手に握りこぶしを作り、その場に膝を突いて叫んだ。表情に乏しい彼にしては珍しい喜びようである。

「本当に一撃で倒しちゃったよ!」

「凄いのです! 龍斗さん!」

 仁美とポポロも感動している。

「仁美、龍斗のもとへ行ってワーイワーイするのです!」

 駆け出すポポロ。

「先に行ってて! 私はすることがあるから!」

 仁美はスマホを取り出し、何食わぬ顔で操作する。自動で送信するよう予約していた家族や友人に対する遺言メールを慌てて削除していた。実は彼女、ビビリながらボスに近づく龍斗を見て、密かに「こりゃダメだぁ」と諦めていたのだ。

「龍斗さん、凄いのです!」

「ありがとう、どうにか理論に狂いがないことを証明できたよ」

「おめっとさん、龍斗ー」

 少し遅れて仁美がやってきた。

「ありがとうな、俺を信じて傍にいてくれて」

「えっ? まぁ、そりゃね、ハハハ、当然でしょ。私は勝利を確信していたよ」

 遺言メールのことは言えねぇな、と思う仁美だった。

 ◇

 ボスとの戦いで、龍斗たち3人のレベルは大きく上がった。

 龍斗は50から55に、仁美は40から47に、ポポロは39から47になった。仁美とポポロは戦闘に参加していなかったが、同じPTということで経験値が分配されたのだ。

「すまないねー、寄生するような形になっちゃてさー」

 魔物のいなくなった大空洞を歩きながら話す仁美。

「かまわないさ。ここまで護衛してもらったお礼だ。もちろんブラックライオンのクエスト報酬も分配しようぜ」

「えっ、クエスト受けてたの?」

「当然さ、俺は最初からアイツと戦うつもりだったからな」

「抜かりないなー! ザコの魔石も処分したら全部でどのくらいになるかな?」

「おそらく一人当たり100万円くらいになるのです」とポポロ。

「三等分だしそのくらいだろうな」と龍斗も頷いた。

「100万!? 1日で!? ヤバスギじゃん! 今日はラッキーデイだ!」

 興奮する仁美。

「いや、ラッキーデイなんかじゃないよ」

 龍斗は真顔で言う。

「ラッキーデイじゃないって、なんでさ?」

「仁美とポポロが協力してくれるなら、今後も同じ稼ぎが続くからさ。ラッキーデイではなく、当たり前の日常として俺たちは100万を稼ぐ」

「うはっ! 本気なの!?」

「俺はそのつもりだが。アイツを狩り続けてレベル75まで上げたいからな」

「なにその目標……。ある種の病気ね」

「俺は自らの理論を証明する為に生きているんでね」

「なんだかよく分からないけど、私はその話に乗るわ。この調子なら今年中にアーリーリタイアできそうだし!」

「仁美が乗るなら私も乗ったなのです! 小学校が始まるまでの間、よろしくお願いしますなのです!」

「ありがとう、二人共。こちらこそよろしく頼むよ」

 こうして龍斗は、今後もライオン狩りをする為の地盤を築いた。

 仁美とポポロは、彼にとって初めてとなる冒険者仲間だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

宝くじ当選を願って氏神様にお百度参りしていたら、異世界に行き来できるようになったので、交易してみた。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」と「カクヨム」にも投稿しています。 2020年11月15日「カクヨム」日間異世界ファンタジーランキング91位 2020年11月20日「カクヨム」日間異世界ファンタジーランキング84位

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

処理中です...