妻と浮気と調査と葛藤

pusuga

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天罰の可能性

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男ながらに思う。
 (つくづく男は単純な生き物だ)

 あれだけ疑って、探偵事務所に依頼してしまうほど思い悩んでいた俺はどこへ行ってしまったのだろうか?

 あれから一ヶ月。
 妻は妊娠三ヶ月目に入った。
 気にしていたスキンシップに関しては、赤ちゃんがお腹にいるからと言う理由で腫れ物に触る様に、むしろ自分から進んで妻には指一本も触れなくなった。よく夫がお腹を撫でると言う行動を耳にするが、そんな事をして何か異変があったら大変だ。
 無意味に過敏になっていた。

 そして年明けの旅行。
 俺がどうするんだ?と聞くまでもなく翌日には妻がキャンセル。

 これで全て解決した。

 俺の疑念はただの杞憂だった。

 もちろんその期間、葛藤の小競り合いはあった。それは以前とは違い単純に意固地になっていたからだ。

 後は無事に子供が産まれてくる事を願い、妻を全力でサポートするだけだ。

 これで終わりのはずだった。

 そろそろ探偵事務所には、調査中止の連絡をしなければならない。
 すぐには中止依頼をしなかった。万に1つの可能性を視野に入れ、継続してもらっていたのだ。但し前回で約束した、年明けの報告日は一度白紙。
 まとめての報告ではなく異変があれば、依頼の為に作成したメールアドレスに一報入れてもらう様にお願いしていた。

 最初は毎日ログインしていたが、気持ちを切り替えた俺は今回一週間ぶりにメールボックスを開く。
 あわよくば、二度と事務所には行かずメールで今回の調査中止、金額を提示してもらい振込実行。完結出来ればと考えた。
 疑って依頼したのにも関わらず、子供が出来たと言う事で疑念を遥か彼方へ追いやり、何もなかった事の様にするつもりだ。

 我ながら思う。
 俺は調子の良い奴だ。

 いや、むしろこう言った俺の性格をわかっていて妻は結婚してくれた。
 俺の悪い所も全て受け入れて、人生を共に過ごしてもいい。いや、そう言うあなたが好きと考えていてくれているんだろうな。ありがたい事だ。

 そんな俺の都合の良い思考に天罰が降ったわけではないが、メールの内容はこうだった。

 【以前奥様がお食事をされ、男性名義で契約している場所にお住まいの方の素性が判明致しました。女性の様な風貌をした方は実は男性だったのです。いわゆる性同一性障害と認識して頂ければ、わかり易いかと思います。付きましては、直接当事務所に足を運んで頂き、詳しい事をご報告させて頂く必要があると判断致しましたので、取り急ぎご一報させて頂きました】

 メール受信は、たったの5分前だった。
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