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第19話 裏の世界へ
しおりを挟む結局あの後、2回もアーティとしてしまった。
今回は彼女にされるだけじゃなく、俺も頑張った。
声を我慢しているアーティが可愛い。そんな彼女が『ここは電脳空間です。妊娠することはありませんので、祐樹様のをすべて私の中にください』──なんてことを言ってくるから我慢できるわかなかった。
(無事にレジスタンスの方々とコンタクトを取れたら、今日もここに泊まりましょう。夜はもちろん、電脳空間で一緒に寝るんです。良いですよね?)
「うん、何事もなければね」
ヤバいフラグが立ったんじゃないかなって思うけど、アーティがいればきっと大丈夫。全て上手くいく。だから今晩も俺はアーティと一緒にここへ戻ってくる。
そんなことを考えながら、俺は帝国ホテルを出た。
──***──
「レジスタンスのアジトってどの辺にあるか把握してるの?」
(もちろんです。今はまっすぐその場所へと向かっています。ただ一点、問題が)
「問題?」
(途中に少し、治安の悪い地域を通る必要があるのです)
第4地区の中でも最も大きく、政府軍も駐在している主幹都市でも治安が悪い場所なんてあるんだ。俺が過ごしていたのは第5地区の田舎の方で、そんなに治安が悪い場所ってのを知らずに過ごしてきた。たまにエアバイクに乗った暴空族ってのが暴れて警察が追いかけてるのを見るくらいのことはあった。
アーティが言う治安が悪いって、どのくらいのレベルかな?
(人身売買、臓器売買、麻薬密売、違法能力改造などが行われる程度です)
「思ってたより数倍ヤバかった」
(ですがご安心ください。ただ通過するだけなら問題ありません。通行料を払えと言われた際は、手をかざしてください。彼らは金払いの良い人間を客だと判断します)
でもそれって、悪の組織に資金を提供しちゃうことにならない?
(祐樹様が嫌だとおっしゃるなら、強行突破も可能です。もしくはそのエリアを完全制圧し、政府軍に抵抗するための足掛かりにしてしまうのも一考かと)
「よし。素直にお金で解決しよう。アーティなら、俺が支払ったお金もこっそり回収したりできちゃうよね?」
(当然可能です)
「じゃあ、それでよろしく」
作戦が決まった。
郷に入りては郷に従え作戦だ。
──***──
「おう、そこのお前。この辺じゃ見ない顔だな」
「ど、ども」
危険だと言われたエリアに入ってしばらくすると、耳に大きなピアスを付けたスキンヘッドの男に声をかけられた。政府軍No.5の炎鬼ほどじゃないけど、この人も十分怖い。雰囲気がまさにその筋の人って感じ。
「この辺に用事か? それとも、この先に行きてぇのか?」
「えと、この先に行こうとしてます」
「そうか。じゃあ通行料が必要だな。10万だ」
ただ通るだけで10万円も取るのかよ。
払えないって言ったらどうなるか知りたくない。
「わかりました。これで良いですか?」
アーティに言われた通り手を男に向かって手をかざす。
「あ゛? マジ? 払う気か」
スキンヘッドがズボンのポケットからスマホを取り出して俺の掌に当てた。シャリーンと音がして、決済が完了する。
「お、おい! 50万も入ってんぞ」
えっ、なんで!?
(金払いの良さを見せておけば彼らは態度を変えます。ですからこれで良いのです。『チップだ』とお伝え下さい)
「……チップです」
「くわぁー。どこぞの金持ち坊ちゃまが火遊びに来た感じかね。まぁいい、それならアンタは俺の客だ。ついて来いよ、この辺を案内するぜ」
(ついていってください。政府の個人情報データベースによると、彼はこの地域を縄張りにする犯罪集団の幹部です。たまたま彼に目を付けられたのは運が良かった)
犯罪集団の幹部だよ!?
なんで運が良いって言えちゃうんですかっ!?
「どうした、こいよ。安心しろ、取って食ったりしねーから。払ってもらった分のもてなしはしてやる」
「は、はい!」
怖いのと緊張でどうにかなりそうだ。
でもアーティが行けと言うなら従おう。
(私がついています。どうかご安心ください。祐樹様はその気になれば目の前の男を瞬殺できる力をお持ちなのですから、何も怖がる必要はありません。もし彼が祐樹様に害を及ぼそうとしたら、その瞬間が彼の寿命となるでしょう)
アーティさんは頼もしいんですが、ちょっと怖いです。もうちょっと穏便に済むようお願いしますよ。できれば俺、血を見ずに過ごしたいです。
(善処します)
ほんとに頼むよと念を押しながら、俺は犯罪組織の幹部だというスキンヘッドの男についていった。
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