上 下
9 / 50
第1章 異世界で始める特許登録

第9話 魔人襲来

しおりを挟む
 
 特許登録できた魔法が20件を超えたので、再び女神様の結界の外まで空撃ちしにやって来た。最初に雷哮を放ったのと同じ場所。

 ここなら遠くまで見渡せるから、誰かに魔法を当ててしまう可能性はない。

「さて、何からやろうかな」

 色んな魔法を登録してみた。
 どれから試すか悩ましい。
 
 高威力のだけじゃなく、初級魔法の効率を上げた魔法や身体強化系、回復系、敵の能力を低下させるデバフ系など幅広く権利化している。

 クラスメイトたちが俺に食料などを届けるため、一度帰って来てくれると言った日まであと2日。それまでに40個は魔法を登録しておきたい。

 結局、魔物を倒しに行くのは諦めた。

 スキルに極振りすることに決めたので、俺の雑魚ステータスのままでは危険だと判断したんだ。

 クラスのみんなが帰ってきたら、俺のスキルで新しい魔法を使えるようにしたと自慢するつもり。俺のスキルが役に立つと分かってもらえれば、魔王討伐の旅に連れて行ってくれるはず!

 そうなると信じている。
 だから俺は頑張れる。


「アイリス。周囲にヒトはいないよね?」

『はい、大丈夫です』

 問題なさそうなのでさっそくやろう。

 まずは汎用性が高いステータス向上系の魔法から。


御前上等ごぜんじょうとうたる精霊よ、龍脈より溢流いつりゅうする魔力をかてとし、御身おんみまとわれに加護を与えよ。精霊魔装!」


 無事に魔法が発動し、俺の身体を強力なオーラが包んだ。

 とても身体が軽い。

 今ならなんだってできそうに感じる。

 やった、大成功だ!

 俺が最初に特許登録特典で発動させたのは、中級身体強化魔法の進化版。使用者本人の魔力だけでなく、龍脈と精霊の力を借りて発動する魔法だ。ちなみに龍脈というのは、この世界の大地を流れる膨大な魔力のこと。


 よし、この調子で行こう。

 次は魔法詠唱を短縮するためのバフ系魔法。あらかじめ魔法を使う予定の精霊に頼み込んでおくことで、詠唱を短くするけど威力はあまり落とさないでねってお願いするための魔法だ。


「強く偉大な精霊よ、寛大なる御心の精霊たちよ、我が遺漏いろうゆるし、難敵に才幹さいかんたまえ」


 魔法名は無い。詠唱自体が上級魔法であり、この魔法だけはどの文節も絶対に省略できない。可能な限り短縮できるように色々試して、この文量になった。

 戦闘前にこれを詠唱しておくことで、最上級魔法を除く全ての魔法を詠唱破棄で発動可能になる。加えて、詠唱破棄しても2割程度しか魔法の威力が低下しない。

 ソロで戦う魔法使いには必須の魔法だ。

 魔法詠唱を一部間違えたりしても発動が可能になるという副次効果もある。


 もう1個、戦闘時を見越してバフ系を入れておこうかな。

 次に使う魔法は、詠唱破棄の魔法を使用中でも詠唱が省略できない。ちょっと特殊な、命に保険をかける魔法。


「偉大なる光の精霊よ、御身おんみに我が心魂しんこんを信託す。不虞ふぐあれば、自律を是認ぜにんするゆえ、我を救済し賜え。時限式自己蘇生術!」


 この魔法は一度発動させると、俺の魔力が0にならない限りいつまでも永続する。

 つまり俺は一度だけ死んでも蘇れるってこと。

 死んだことはないけど、多分ものすごく痛いんだろうから絶対に死にたくはない。

 でもここは何が起こるか分からない異世界だ。できればクラスメイト全員にこの魔法を使って欲しい。

「この魔法だけ特許実施許諾契約なしで使ってもらうとかできないかな?」

『可能ですよ。“解放特許” にすればよいのです。解放と言っても権利の放棄ではないので、祐真様が望まない第三者の利用を制限することも可能です』

 おぉ。マジっすか。

「そういうのも可能なんだ! じゃあこの魔法は解放特許にしようかな」

『ステータスポイントを10も消費して特許登録した魔法ですのに……。祐真様は、お優しいですね』

「そうかな? でもこれ以外の魔法じゃ、ちゃんと利益の一部を貰うからね」

 俺はクラス全員で生きて元の世界に帰りたい。それが叶うなら、10ポイントとか安いもんでしょ。


「さて、次はどの魔法を発動しようか──」

 その時、何かが空から降ってきた。

 落下の衝撃で土埃が巻き上がる。

「な、なに? なんなの!?」

 もしかしたらクラスメイトの誰かが飛んで戻ってきたのかと思った。

 しかしそうじゃなかった。


 土煙が消え、視界が晴れる。

 頭部に黒く大きな角を生やした男が、俺の前に立っていた。

 
『ゆ、祐真様。お気をつけください。こいつは、です』

 これまで聞いたことのない、緊迫したアイリスの声が俺の頭に響いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。 時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。 「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」 「ほう?」 これは、ルリアと義理の家族の物語。 ※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。 ※同じ話を別視点でしている場合があります。

続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん
ファンタジー
⭐︎書籍化決定⭐︎  『拾ってたものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』  第2巻:2024年5月20日(月)に各書店に発送されます。  書籍化される[106話]まで引き下げレンタル版と差し替えさせて頂きます。  第1巻:2023年12月〜    改稿を入れて読みやすくなっております。  是非♪ ================== 1人ぼっちだった相沢庵は小さな子狼に気に入られ、共に異世界に送られた。 絶対神リュオンが求めたのは2人で自由に生きる事。 前作でダークエルフの脅威に触れた世界は各地で起こっている不可解な事に憂慮し始めた。 そんな中、異世界にて様々な出会いをし家族を得たイオリはリュオンの願い通り自由に生きていく。 まだ、読んでらっしゃらない方は先に『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』をご覧下さい。 前作に続き、のんびりと投稿してまいります。 気長なお付き合いを願います。 よろしくお願いします。 ※念の為R15にしています。 ※誤字脱字が存在する可能性か高いです。  苦笑いで許して下さい。

【完結】失くし物屋の付喪神たち 京都に集う「物」の想い

ヲダツバサ
キャラ文芸
「これは、私達だけの秘密ね」 京都の料亭を継ぐ予定の兄を支えるため、召使いのように尽くしていた少女、こがね。 兄や家族にこき使われ、言いなりになって働く毎日だった。 しかし、青年の姿をした日本刀の付喪神「美雲丸」との出会いで全てが変わり始める。 女の子の姿をした招き猫の付喪神。 京都弁で喋る深鍋の付喪神。 神秘的な女性の姿をした提灯の付喪神。 彼らと、失くし物と持ち主を合わせるための店「失くし物屋」を通して、こがねは大切なものを見つける。 ●不安や恐怖で思っている事をハッキリ言えない女の子が成長していく物語です。 ●自分の持ち物にも付喪神が宿っているのかも…と想像しながら楽しんでください。 2024.03.12 完結しました。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

私のバラ色ではない人生

野村にれ
恋愛
ララシャ・ロアンスラー公爵令嬢は、クロンデール王国の王太子殿下の婚約者だった。 だが、隣国であるピデム王国の第二王子に見初められて、婚約が解消になってしまった。 そして、後任にされたのが妹であるソアリス・ロアンスラーである。 ソアリスは王太子妃になりたくもなければ、王太子妃にも相応しくないと自負していた。 だが、ロアンスラー公爵家としても責任を取らなければならず、 既に高位貴族の令嬢たちは婚約者がいたり、結婚している。 ソアリスは不本意ながらも嫁ぐことになってしまう。

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ
ファンタジー
※コミカライズスタートしました!  2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です 2023年9月21日に第一巻、2024年3月21日に第二巻が発売されました 2024年8月中旬第三巻刊行予定です ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。 高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。 しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。 だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。 そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。 幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。 幼い二人で来たる追い出される日に備えます。 基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています 2023/08/30 題名を以下に変更しました 「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」 書籍化が決定しました 2023/09/01 アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります 2023/09/06 アルファポリス様より、9月19日に出荷されます 呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております 2024/3/21 アルファポリス様より第二巻が発売されました 2024/4/24 コミカライズスタートしました 2024/8/12 アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。 ☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ
ファンタジー
 第15回ファンタジー大賞、奨励賞頂きました。  投票していただいた皆さん、ありがとうございます。  励みになりましたので、感想欄は受け付けのままにします。基本的には返信しませんので、ご了承ください。 「あんたいいかげんにせんねっ」  異世界にある大国ディレナスの王子が聖女召喚を行った。呼ばれたのは聖女の称号をもつ華憐と、派手な母親と、華憐の弟と妹。テンプレートのように巻き込まれたのは、聖女華憐に散々迷惑をかけられてきた、水澤一家。  ディレナスの大臣の1人が申し訳ないからと、世話をしてくれるが、絶対にあの華憐が何かやらかすに決まっている。一番の被害者である水澤家長女優衣には、新種のスキルが異世界転移特典のようにあった。『ルーム』だ。  一緒に巻き込まれた両親と弟にもそれぞれスキルがあるが、優衣のスキルだけ異質に思えた。だが、当人はこれでどうにかして、家族と溺愛している愛犬花を守れないかと思う。  まずは、聖女となった華憐から逃げることだ。  聖女召喚に巻き込まれた4人家族+愛犬の、のんびりで、もふもふな生活のつもりが……………    ゆるっと設定、方言がちらほら出ますので、読みにくい解釈しにくい箇所があるかと思いますが、ご了承頂けたら幸いです。

処理中です...