上 下
7 / 50
第1章 異世界で始める特許登録

第7話 スキルに極振り

しおりを挟む

 どうやら俺が魔法を放った先に、たまたま魔物がいたらしい。

「……って、そんな都合よいことある?」

 この世界の魔物で、一番危ないのはSランクって言われてる。ドラゴンとかがそのランク。異世界から来た勇者が成長した後でも装備が揃っていなければ苦戦するのがAランク。Bランクの魔物を倒せれば、王国の騎士や宮廷魔導士として召し抱えられるぐらいになる。つまり、Bランクの魔物ってかなり強いんだ。

 そんな魔物が、たまたま俺の空撃ちで放った魔法に巻き込まれるとかある?

 確かにかなりの広範囲を消滅させたけれども……。

『初回サービスです』

「えっ?」

祐真ゆうま様がクラスメイトの方々の元へ向かうため、ステータスも上げたいとおっしゃっていましたから。勝手ながらレベルがあげられるよう、指示をさせていただきました』

「もしかして、あの方向に打てば魔物が倒せるって分かってたの?」

『狙うように言った大木は、何年も前からキンググリズリーの住処でした。私が把握していたのはそれだけです。黒狼など他の魔物がたくさん巻き込まれたのは、祐真様が考案された魔法の威力の賜物ですね』

 偶然で俺、150体以上も魔物を倒せたのか。

 アイリスに魔物を索敵する能力があると思って期待した。もしそうなら、今後は安全圏から魔物のいる方角に向かって魔法を放てば良い。新たに特許化した魔法を1回魔力フリーで放てる特典でね。

 でも索敵能力はないらしい。
 ちょっと残念。

『魔物の位置は分かりませんが、祐真様が魔法を放つ範囲にヒトが居ないかどうかは分かりますよ。知らないヒトを巻き込みたくはないでしょう?』

「もちろんそうだよ。あ、でもそれには、俺が使う魔法がどんなものか分かってないとだめだよね? アイリスはどうやって魔法の効果を理解したの? 詠唱で?」

 この世界の魔法は、詠唱で精霊を崇める文章を伸ばせば威力が高くなる傾向があるって気が付いた。だから詠唱の半分以上は、いかに雷を司る精霊が偉大かを表現している。攻撃を表すのは “我の敵を塵芥のひとつも残さず殲滅せよ” の部分だけ。

 正直これでは魔法の効果が分からない。

 イメージしながら魔法を放ったが、そのイメージ通りに発動した。もしかして精霊って、俺の脳内イメージを理解できるってこと?

『そうですよ。ちなみに私も、祐真様が考えていることを知ることができます』

 えっ、マジ!?

『マジです。口に出さずとも、頭の中で私に話しかけていただければそれで大丈夫なのです。戦闘中など、敵に知られることなく作戦を立案し、共有することだって可能な機能です。是非ご活用ください』

 そうなんだ……。

 ガイドラインって、俺の心の声も聞こえちゃうんだ。
 
 これじゃムフフな妄想とかできないな。
 セクハラになっちゃう。

『私はスキルですので、お気になさらず。もしそれでも気になるようでしたら、スキルをオフにすることも可能ですよ』

「そうなの? でもなにかと便利だから、オフにはしないかな。今はひとりで寂しいし。アイリスが話しかけてくれて、俺は凄く助かってる」

『もったいないお言葉。では、これからも祐真様のサポートとして、おそばに仕えさせていただきますね』

「うん。よろしく!」

『はい。ところで祐真様、せっかく手に入れたステータスポイントです。何に割り振るかはお決めになられましたか? レベルが31上昇していますので、310SPを獲得しています。魔法使いとして強くなれる推奨のポイント割り振りをお伝えすることも可能ですが、ご希望でしょうか?』

 テンプレート的なステータスの上げ方があるんだ。

 でも、俺は──


「全部【特許権】に使うよ!」

『えっと、全てのポイントをスキルに使用するのですか?』

「そう。全部使って詠唱を登録すれば初めの100ポイントと合せて41個魔法を特許化できる。できれば100個まではステータス上げるより先に権利化しておきたい」

『100個も……。それほどたくさんの魔法詠唱を考案できるのですか?』

「ううん。改めて考える必要なんてないよ。だってこの世界を来る前に、千個は魔法を考えてあるから」

『せ、千!?』

 もし異世界に言って、妄想していた魔法詠唱が使えるってなった時、“千の魔法使いサウザンド マジシャン” という二つ名を自称したかったんだ。

 だから俺の暗黒呪文集ダークネス オブ スキルズには魔法の詠唱が千個書き記されている。そのノート自体はこっちの世界に持ってきていないけど、ほとんど覚えているから何の問題もない。

 雷哮のように、この世界の魔法詠唱ルールでそのまま使えそうなのが30個。少し改変したら使えそうなのが70個くらいある。ベースがあるので、完全に新呪文を考案するのだって難しくない。


「アイリス!」

『は、はい』

「お城に戻って、魔法詠唱の特許を登録しまくるよ!!」

『承知致しました』


 クラスメイトたちが食料を届けてくれると約束した日まであと3日。

 それまでに俺は最低41個の魔法を特許登録する。もしレベルアップ出来て、更に増やせるのであれば100個まで登録してしまいたい。


 俺がステータスを上げるより、スキルを優先するのにはちゃんと理由がある。

 特許実施許諾契約で得られるのは俺が特許化した魔法を誰かが使ってレベルアップした時の5%らしい。ステータスポイントはレベル1から2に上がる時も、レベル30から31に上がる時も変わらずもらえるのは10SPだけ。

 ということは、レベルが上がりやすい早い段階でクラスメイトたちに俺の魔法を使ってもらう必要があるんだ。それは早ければ早いほど良い。

 ただしレベルアップ時のステータスポイントを5%も支払って良いと思えるほど、俺の魔法を使うメリットがなければ、みんなに使ってもらうことはできないだろう。

 そのために俺は便利で強い魔法をたくさん用意しておく必要があるんだ。

 いくら便利で強くても、レパートリーがなければクラスメイト全員には使ってもらえない。この世界では戦士系も身体強化魔法を使える。

 つまり本当にみんなのことを考えて魔法を創って特許化しておけば、純粋な魔法使いだけじゃなく、クラスメイト全員が俺の魔法を使ってくれる可能性がある。

 クラスメイトは、俺を除いて32人。

 その全員が俺と特許実施許諾契約を結んで、全員がレベルアップしてくれれば、とんでもない量のステータスポイントが俺に入るようになる。

 ステータスを上げるのはそれからでも遅くない。

 だからやるしかない!
 今こそ頑張るべきなんだ!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで

あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。 連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。 ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。 IF(7話)は本編からの派生。

創造魔法で想像以上に騒々しい異世界ライフ

埼玉ポテチ
ファンタジー
異世界ものですが、基本バトルはありません。 主人公の目的は世界の文明レベルを上げる事。 日常シーンがメインになると思います。 結城真悟は過労死で40年の人生に幕を閉じた。 しかし、何故か異世界の神様のお願いで、異世界 の文明レベルを上げると言う使命を受け転生する。 転生した、真悟はユーリと言う名前で、日々、ど うすれば文明レベルが上がるのか悩みながら、そ してやらかしながら異世界ライフを楽しむのであ った。 初心者かつ初投稿ですので生暖かい目で読んで頂くと助かります。 投稿は仕事の関係で不定期とさせて頂きます。 15Rについては、後々奴隷等を出す予定なので設定しました。

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

Bグループの少年

櫻井春輝
青春
 クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

処理中です...