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3話「異世界やんけ!」

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光の熱を感じて目を開けようとしたが、眩い光に目を開ける事ができなかった。
しばらくして光に目が慣れ、改めて周りを見渡してみると、そこはどうやら広場のようだった。
広場の外を見てみると石造りの建物が立ち並び、歩く人々の服装も自分が来ているもの|(ジャージ)とはほど遠く、中世風の様相だった。
つーかネコミミ! ネコミミ美少女おるやんけ!!
うおおあっちはエルフか! うひょー!
見慣れない光景に言葉を失な……興奮していると、隣から呟くような声がした。

「ここが、異世界……」

義妹の早希もこの光景に圧倒されたようで、その表情は驚きに満ちていた。
その隣には異世界転移の直前にさんざん喚き立てていた女神エアがいて、俯いて肩を震わせていた。
もしかして泣いているのか……?

「……っ……っ……」

「お、おい、エア、大丈夫か……?」

誘ったのは俺だし、さすがに悪いかなと思ってフォローをしようと声をかけると、
エアは唐突にバッ! と顔を上げた。

「うおっ! なんだよびっくりするじゃねえか」

「ふふふふふふふふふふふふ」

「うわ、怖っ……」

「やってやるわよ……ええ、やってやろうじゃない……あたしは女神エア、あたしにできないことなんてないわ、魔王なんて……そう、魔王なんて簡単にやっつけることができるわ。すぐにでも魔王を倒して神の間に戻ってあのクソ女をおしおきしてやるんだから……ふふ、ふふふふふふふふ……」

部下? に女神の立場を奪われたエアはぶつぶつと恨み言を言っていたが、見た感じどうやら大丈夫のようだった。
つーか心配して損したわ。心配した分の気力返せや。

「で、エアさん、これからどうすればいいんですか?」

「ふふふふふふ……? え?」

唐突に早希に話しかけられたエアは、なんて? とばかりに聞き返した。

「だから、異世界に来たんですからまずは何をすればいいんですか? って……」

エアは目をぱちくりさせながら、

「知らないわよ?」

そう言った。
え? お前この世界担当の女神じゃないの?

「ええ!? ちょ、本当にどうすればいいんですか!?」

「だから知らないわよ……あたし、この世界のことなんてなーんにも知らないわ。……え、なんだか本当にヤバい気がしてきたんだけど。ねえ、どうしよう!? なにも知らない状態で放り出されるって、ヤバいんじゃないの!?」

「……」

これはひどい。エアは急に危機感を覚えてわめき始め、早希はエアに話しかけた格好のまま固まり絶望の表情を浮かべていた。
女神をスカウトすれば異世界生活も楽になるんじゃない? と考えていた俺の目論みは完全に外れた訳だ。

「お前それでどうやって魔王を倒せっつうんだよ……」

仕方ない。ここはニート時代|(高校に上がってからほぼニート)にネトゲで得た知識をフル活用する時が来たか。
俺は未だ喚き立てているエアとどこを見ているかわからない早希に向き直り、

「くくく、ふたりとも慌てるでない……」

「うわ……兄さんがまた中二病を発症してます……」

「だめよ、サキ。こういう手合いはかまったらめんどくさいの。無視しましょ」

おいおいおいおい!!
何か言おうとした俺のことを早希は冷たい目と言葉で攻撃し、
うわぁ……って顔をしたエアは触れてはいけないものと接するような態度をとった。
ふたりは顔をよせて囁き合い、まるで不審者を見た主婦達のような……

「待てや! ちょっと世界観にあてられただけだろうが! あ、ごめんなさい、そんな目で見ないですいませんマジで落ち込むから」

「はあ……で、なんですか? 何を言おうとしたんですか?」

「つまらない事を言ったらはったおすからね」

「やめてくれよ……ん、ンンッ!」

こいつら、なんか俺の扱いひどくない?
俺は咳払いをすると、改めて話し始めた。

「俺の経験上、こういう世界ではだいたい最初はどうすべきか決まってるんだよ」

「経験?」

「経験?」

「うるせえ黙って聞けや! ……まずは冒険者ギルドみたいな所に行って、職業適正検査してから冒険者登録をするんだけど……ギルドの場所がわかんねえな。……おーい! そこのお姉さーん!」

俺は周りを見回すと、近くを歩いていたおばさんに声をかけた。

「あらやだ、お姉さんなんて。こんなおばちゃんに嬉しい事言ってくれるじゃない! 何かご用?」

「すみません僕たち旅をしている者でして、この街に来たばかりなんですが、ギルドみたいな所ってどこにあるかわかりませんか?」

「ギルド? あらあら、貴方達冒険者志望なの? それなら、あっちに歩くと大きな酒場があるわ。そこでギルドも運営してるから、登録をすると良いわよ!」

おばさんはギルドの場所を説明してくれた後、「じゃあ私は用事があるからこれで。がんばってね」と言い残し商店街らしき方向へ歩いて行った。

「ありがとうございました! よっしゃお前達、行こうぜ!」

俺はなにやら感心した様子のふたりに声をかけ、ギルドへ向かって歩き出した。

「ねえサキ、ソウタってもしかして結構頼りになるの? ただのクソニートじゃないの?」

「いえ、そんなわけはないのですが……なんだか兄さんじゃないみたいです。いつもは守ってあげなきゃ、って感じなのに、さっきはちょっとかっこいいとか思っちゃいました」

「お前ら俺を誰だと思っていやがる。異世界モノの小説は何本も読破しておるわ! なんなら異世界モノのゲームも何本もクリアしてたりするぞ。ほら、俺をもっと称えよ!」

俺は自慢げに武勇伝? を語り、俺に羨望の眼差しを向けるふたりに対して尊大な態度をとった。
お前ら俺に対する態度が悪いんだよ。あらためろ。

「やっぱりソウタはソウタだったわ」

「ですね……まあ、兄さんらしいですが」

それを見たふたりはさっきまでの羨望の眼差しをジト目に変え、俺をほったらかしにしてギルドへ歩き出した。
……あれー?
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