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第二章〜セカンドフィル〜
閑話「ユリアの過去と共同生活」
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これは、ドワーフが訪ねてくる少し前のお話。
「お疲れユリア、もうお風呂入ったんだ」
「えぇ、先にお風呂貰ったわ。ショウゴも入っちゃったら?」
ユリア、ティナ、カイと同居を始めて、既に一週間が経っていた。俺は、ユリアにアクアリンデルの店の一切を任せていた。そのおかげで、俺は一日中地下に篭り、酒と向き合うことが出来ていた。
今も、今日の酒造りはお終いにして、上に上がって来たところだった。すっかり日は暮れていて、おそらく夜の十時をまわったところだろう。この時間には、ティナはもう寝ている。彼女は朝の3時には起きて汗を流すためだ。
ユリアは、リビングで椅子に座って寛いでいた。彼女は湯上がり直後のようで、バスローブを着ていて、髪も濡れていた。テーブルの上には、グラスと酒瓶に氷が入ったアイスペールがあった。俺も、彼女の正面に座った。
「いや、今日はもう疲れたから、このまま寝ようと思ってるよ。お風呂は好きだけど、苦手なんだ」
「だめよ、せっかくいいお風呂に毎日入れるのに、入らないなんてもったいないじゃない。それに汗臭い男は、モテないわよ」
「わかったよ、少ししたら入るよ」
ユリアは、この家に来た時。この家を天国と称してくれた。それはそうだろう。娼館の設備はお世辞にも良いとは言えないなもので、お風呂なんてものには一度も入ったことが無いらしい。高級娼婦といえど、店側が風呂なんてものを用意するはずも無い。
だから、彼女はお風呂を何よりも気に入ってくれたようだった。神様に、感謝しなきゃだな。
「ショウゴも飲む?」
「シナモンウイスキーか、貰おうかな。ユリア、シナモン好きだよね」
「ふふっ、だってすごく香りもいいし、甘く感じるの。氷は?」
「入れて」
ユリアは、何も言わずともいつも俺のために、お酒を作ってくれる。それは嬉しそうに。
「はい、どうぞ」
「ありがとう、乾杯」
「かんぱーい、今日も一日お仕事お疲れ様、ショウゴ」
「ユリアこそ、いつもありがとう」
ユリアと俺は、一緒にお酒を呷った。
「くぅ~~、仕事終わりは最高だね」
「ほんとよね~~」
二人は、このやりとりに違和感と可笑しさを感じた。そして、目が合うと噴き出さずにはいられなかった。
「ぷっ」
「「あはははっ」」
先に吹き出したのは俺で、釣られてユリアも笑い出してしまった。彼女とは、花街で色恋を楽しんでいた関係で、こんな親密無関係に成れるとは思わなかったし、彼女が自分を慕ってくれるなんて夢のまた夢だと思っていた。
それに、相手は一回り以上の歳下で、そうとは思えないほど大人びた彼女に、本気にならない為に名前すら聞かなかったのに。気づけば、彼女は俺のために危険な橋を渡っていてくれたんだ。
「やっぱりなんか、まだ慣れないな。あのユリアとこうやって、過ごす日が来るなんて」
「ふふっ、ほんとよね。私も、私の人生でこんなに充実していて、穏やかな時間が訪れるなんて、思ってもいなかったわ。……ショウゴ、本当にありがとうね」
「ん? どうしたの急に」
彼女の雰囲気が変わった。彼女は、グラスを手に持ったまま、少し虚な表情を浮かべながら、話し始めた。
「だって、私ってねもう昔の話だけど。子供の頃に、親に金貨一枚で売り飛ばされたの……。あぁだめね、私ったらこんな話したら、お酒が不味くなっちゃう、忘れて」
「ううん、ユリアさえ良ければ聞かせて欲しい。知りたいんだ、これからの俺とユリアのためにも」
彼女は、俺のそんな態度に少し驚いたようだったが、少し嬉しそうに喋り始めた。それでも、彼女のグラスを握る手には力が入った。
「なら、長くなるけど許してね。面白くも無い話だけど。私が七歳の時に、両親に口減らしで奴隷として売り飛ばされて、その日から、人生変わったわ。毎日、掃除、料理、家畜の世話、畑仕事。仕事が出来ようが、毎日のように殴られて、寝る時間もなかった。
何度も死のうと思ったんだけど、死のうとする度に両親の顔を思い出したのよ。変な話よね、自分たちが助かるために、私を地獄に突き落とした張本人なのに。いつしか、私の心には憎悪しか残ってなくて、とにかく見返してやるんだって思ったわ。
そんな時、私はまた売られた。十二の時に、アクアリンデルに来て娼婦になったわ。初めの頃なんて最悪で、処女として変態の相手をさせられたわ。その時になって、今までは本当の地獄じゃなかった事を、思い知ったの。本気で死のうとした、縄を買ってきて、娼館の一室で首を吊ってね。
もし、次があるなら絶対に首なんか吊らないわ。死んだ方がマシっていうくらい苦しかった。首を吊っている時に、一人の女が部屋に入って来てね。驚きもせず、じーっと私が苦しんでるのを見てるのよ。なんて怖い女なんだ、と思ったわ。あぁ、死ぬんだって思った時、シャンデリアごと私は床に落ちたの。
それで、その女が床に転がった私にこう言うのよ『あんたは、神様にも見放されたの。これからは生きるしか無いわよ』って。それが、私の敬愛なる姐さんとの出会い。
その日から、高級娼婦の姐さんの見習いとして、必死に娼婦として生きたわ。そんな姐さんも、去年梅毒で死んじまったけど、私はそのおかげで高級娼婦に上り詰めた。それまでは、男に媚びていたけど、大抵の男は袖にすることが出来るようになった。
だけど、私の心は空っぽだった。どんなに良いもの飲んで、食べて、男を袖にしても全ては偽物。でもそんなの、全部今更だったのよね。
そんな時よ、ショウゴと出会ったのは。たまたま、男が懇願する顔を見たくて、一階に降りた時に、たまたま目に入ったのがショウゴ。最初の印象はなんてパッとしない男だろうって思ったわ」
ユリアはしみじみと思い出すように言ってくれた。あまりに重い話だったが彼女が少しだけ明るい表情になったので笑ってみせた。
「あははは、パッとしなくてすみません」
「ふふふっ、そんな男が、女も買わずに帰ろうとするから、少し揶揄ってやろうと思ったのが、私の娼婦としての運の尽きだった。ショウゴみたいな男は、一度だって出会ったことがなかったわ。征服欲はある癖に、初対面のそれも娼婦の私を、自分の宝物みたいに大事に扱って、常に私の顔色ばっかり伺う変な男。なのに、初めて客と心を通わせてしまった気がした。
あの日から、私は、いいえ私の人生は変わってしまった。もう変わる事はないと思っていた、糞みたいな私の人生が、貴方のおかげで薔薇色に色づき始めたの……。だから、ショウゴ。貴方のそばから、離れられない私を嫌いにならないで……」
彼女は、お酒に酔ったせいか、感情が昂ったせいなのか、白い肌を赤くしながら、涙をポロポロと流していた。彼女は、俺が彼女の過去に出会った人々のように、いつの日か、捨てるとでも思っているのだろうか。
「ユリア……」
俺が悪い、彼女の事を知りたいっていう好奇心で、凄惨な過去を暴いてしまった。それなりの覚悟をして聞いたつもりでも、前世でぬくぬくと育った俺には、想像しきれない部分だった。
俺は、彼女の所まで行き、泣いている彼女を後ろから抱きしめた。
「嫌いになんて、ならないさ。俺は幸せな男だ。こんな素敵な女性に想われるなんて、他の男に知られたら殺されちゃうよ。……もう大丈夫だよ、ユリアが俺にしてくれた事は一生忘れないし、一生かけて恩返ししていくよ。だから、もう泣かないで」
「うん、うん、ありがとうショウゴ。私をあのドブの底から救ってくれて」
ユリアは、ひとしきり泣いたあと俺の腕の中で、眠ってしまった。よほど、疲れていたのだろう。朝はティナとの剣術の訓練、そこから山道を揺られて、店を仕切って、また山道に揺られて帰ってくる。
我ながら、ブラック会社を作ってしまった。最初は、俺も一緒に行こうと言っていたし、ユリアたちだけでも、アクアリンデルに常宿を借りるべきだと話したが、体力がつけば問題無しの一点張りだった。
カイにもその時言われたっけ、『姐さんは怖いんですよ。旦那が、姐さんを抱かなくなったから、どうやって旦那の気持ちを繋ぎ止めれば良いか、わからないんです。姉さんはそれしか、知らないから。だから、せめて旦那のそばにいたいんですよ』その時は、何を馬鹿な事を、と思ったけど、彼女の過去を知った今、馬鹿にできる考えではなくなった。
俺は彼女を抱き抱えて、彼女の部屋のベッドに寝かせた。彼女が俺のそばにいてくれる限り、俺は彼女の支えとなろう。これだけ、苦労して来たんだ。少しぐらい、ユリアがこの家で良い思いをしたって、バチは当たらないはずだ。
ね、神様。
「おやすみ、ユリア」
彼女の流した涙の跡を拭いながら、おでこにキスをして、俺は部屋を後にした。
俺は、テーブルのグラスたちを片付け、風呂に入って眠りについた。もう深夜を、まわった頃だった。
俺が翌日目を覚ましたのは、ティナに鼻っ面を摘まれてのことだった。
「んぁあ~~」
「何が、んああだ! 朝食の時間だ! 起きろ」
(ふん! 寝言でも。あの女の名前を口にするとは! この浮気者め)
目を開けると、ティナが俺の横でどこかの親父のように寝そべりながら、俺のことを見ていた。少し不機嫌そうなのが、怖かった。
「ユリアとカイは?」
「とっくにダイニングで、お前を待っている」
まじか、やベやべ。珍しく、こんな時間まで寝坊しちゃった。俺は大急ぎで、上着とズボンを履いて身支度を整えた。
キッチン前の食卓には、カイとユリアが楽しそうに喋っていた。
「あ、旦那! おはようっす、寝坊なんて珍しいですね」
「おはよう、カイ。ちょっと、酒を飲みすぎたみたいだ」
「酒豪の旦那が飲み過ぎっすか? 少し、その言い訳には無理がありますよ。それに、今日は、姐さんと旦那が少し余所余所しい気がするんすけど、何かあったんじゃいんですか?」
カイは、ニヤつきながら俺とユリアを見やった。俺とユリアは、図星を突かれて目が泳ぎ、少し挙動不審になった。酒の席のこととはいえ、なんとなく気まずかった。
その時だった、ティナが朝食のベーコンにフォークを突き刺したのは。その瞬間、はっと空気が変わった。
「カイ、お前は中々面白い事を言う才能があるな。朝の訓練が、足りなかったのなら追加で、昼もいっておくか?」
「し、師匠。自分は、何も言ってないっす。十分、疲れてます」
「そうか、なら黙って飯を食え。お前の体は、まだまだ線が細すぎる、まるでショウゴみたいだ」
カイは、大人しくなって朝食を食べ始めた。
「ユリアも、おはよう」
「おはよう、ショウゴ」
今日の朝食当番は、ティナだ。ティナは単純な料理しか作れないけど、結構美味しかった。なんていうか、塩と胡椒の使い方が豪快で、お父さんの料理みたいだった。
「やっぱり、目玉焼きとベーコンを焼かせたら、ティナは天才だね。パンは、ユリアが焼いてくれたの?」
「えぇ、娼館での楽しみなんて食事ぐらいだったから、忙しくない時は自分で焼いてたわ。麦をこねてるときは、何も考えなくて良かったし、ストレスも発散できたのよね」
「ふふふっ、そっか。なんかいいね、みんなが補って生活するって……」
「旦那! 俺もこんな幸せな生活、初めてっす!」
カイの一言に、みんなが笑いながら同意していた。真夏もピークを過ぎ、山奥の我が家には涼しい風が吹き始めていて、外から差し込む陽光が俺達を照らしてくれる。
そんな心地よさを感じていたら、ふと思ってしまった。
「今日は、仕事を休みにしよう! そうしよう!」
「「え」」
みんなが少し驚いたようだった。
「ユリアもカイも今日は、家でゆっくりしていいよ。そうだ、なんなら川に釣りに行こうか! みんなでバスケット持って、こんなに天気がいいんだ。俺も、地下に篭りたくなくなっちゃった」
「でも、急にお店を休みにしたら、街のみんなが驚いちゃうんじゃない?」
「大丈夫! 一日ぐらい、ニートのナッツの親父に頼めばいいさ。俺のおかげで、たくさん稼いでるんだ。一日ぐらい、店番やってくれるさ。俺が後で、伝言の魔導書で伝えておくから大丈夫。それに働きすぎだよ、これからは七日に一度休みを作ります。これを定休日とします」
思えば、異世界に来てからと言うもの、目まぐるしく働き過ぎていた気がする。この世界に馴染む為に、休むなんて言うことを考えず、ひたすらに走ってきた。
そして気づけば、掛け替えのない家族ような人たちに恵まれて、今になって幸せに気付くなんて鈍いなぁ。
こうして、この日はみんなで、近くの渓流で魚釣に出た。釣竿は、以前街で買っておいた物を使った。前世で、海釣りはした事はあるものの、渓流釣りは初めてで、岩裏にいる虫が最高に気持ち悪かったりした。
意外と、ユリアが一番魚を釣っていて、彼女の顔は明るく生き生きとしていた。それに、ティナとユリアの関係はライバルではあるものの、一向に釣れないティナに釣りのコツを教えている様子は、なんとも言えない友情の温かさを感じた。
カイに至っては、適当な木の棒で槍を造り素潜りし始めた。カイは左腕がないとは思えない器用さで、魚を突きまくった。
そしてベッラは、泳げないみたいで、熊みたいに上流で飛んでくる魚を口でキャッチしていた。恐ろしいぐらいの数の魚を丸呑みにしていた。
夜は、みんなで火を囲いながら魚を焼いた。魚を前にすると、日本人の血が騒ぎ、日本酒が欲しくなる。しかし、米のない現状は、ウオッカで我慢するしかなかった。
俺は、横たわったベッラのお腹を背にして、火の前に座っていた。
そして目の前に居るカイとユリアは、本当に姉弟のように仲が良い、そんな仲睦まじい二人を見ていると、ティナが話しかけてきた。
「どうした、何か寂しそうな顔をしているぞ」
「ん、いや。家族っていいなぁってさ」
「……そうだな。私も、久しぶりに家族を思い出してしまったよ」
「……そっか」
「あぁ」
俺とティナは、この時間を噛み締めるように火を見つめた。必ず守ろう、この人達を、力及ばず何かが起きたとしても、全身全霊で助けに行こう。
その為にも、今は目の前にある酒造りに全力を注ごう。侯爵の後ろ盾を、盤石な物にして、半端者が手出しできないように。それに、お金をもっと稼いで身を守る術を用意しよう。でも一番大事なのは、蒸留酒を世界に広めることだ。
酒蔵の数だけ、ウイスキーが増えれば、俺が造れるウイスキーの幅はグッと広がる。俺だけじゃ、最高のウイスキーは造れない。それは色んな技術的な意味があるけど、一番は生産者同士色んな話をしてみたいからだ。
「ショウゴ、心配するな」
「え?」
物思いに耽っていたら、ティナに現実世界に引き戻された。
「お前はすぐに顔に出る。そんなんだから、シールズに良いように弄ばれるんだ」
「ははは、面目次第もございません」
「私が必ず守ってやる。お前の大切なものは、全てだ。任せろ」
ティナの顔は、本当に頼もしく見えた。暗がりの中で、揺らめく炎に映し出された彼女の戦士の顔、これほど頼もしい顔を俺は他に知らない。
なら、ティナのことは俺が守ろう。彼女が俺の剣として、困苦に塗れ、砕けそうになる前に。
「うん、そうだったね。なら、ティナは俺が守るよ! 絶対に」
「なっ! ば、馬鹿を言うな! そんな細い腕でどうやって守ると言うんだ、全くお前と言うやつは」
薄暗がりの中ティナの肌が赤くなっているかは確認出来なかった。それでも俺に顔を見せない様にしているのは照れている証拠だと思った。
俺はその隙に後ろから彼女のお腹あたりに手を回して抱き締めた。
「うーん? ティナを抱きしめて、肉の壁になるとか?」
「そ、それはお前の欲望であろう!! あ、やめ、ひゃ// くっつくなぁーー!!」
時間が止まればいい、そう思うほどティナは可愛かった。
「お疲れユリア、もうお風呂入ったんだ」
「えぇ、先にお風呂貰ったわ。ショウゴも入っちゃったら?」
ユリア、ティナ、カイと同居を始めて、既に一週間が経っていた。俺は、ユリアにアクアリンデルの店の一切を任せていた。そのおかげで、俺は一日中地下に篭り、酒と向き合うことが出来ていた。
今も、今日の酒造りはお終いにして、上に上がって来たところだった。すっかり日は暮れていて、おそらく夜の十時をまわったところだろう。この時間には、ティナはもう寝ている。彼女は朝の3時には起きて汗を流すためだ。
ユリアは、リビングで椅子に座って寛いでいた。彼女は湯上がり直後のようで、バスローブを着ていて、髪も濡れていた。テーブルの上には、グラスと酒瓶に氷が入ったアイスペールがあった。俺も、彼女の正面に座った。
「いや、今日はもう疲れたから、このまま寝ようと思ってるよ。お風呂は好きだけど、苦手なんだ」
「だめよ、せっかくいいお風呂に毎日入れるのに、入らないなんてもったいないじゃない。それに汗臭い男は、モテないわよ」
「わかったよ、少ししたら入るよ」
ユリアは、この家に来た時。この家を天国と称してくれた。それはそうだろう。娼館の設備はお世辞にも良いとは言えないなもので、お風呂なんてものには一度も入ったことが無いらしい。高級娼婦といえど、店側が風呂なんてものを用意するはずも無い。
だから、彼女はお風呂を何よりも気に入ってくれたようだった。神様に、感謝しなきゃだな。
「ショウゴも飲む?」
「シナモンウイスキーか、貰おうかな。ユリア、シナモン好きだよね」
「ふふっ、だってすごく香りもいいし、甘く感じるの。氷は?」
「入れて」
ユリアは、何も言わずともいつも俺のために、お酒を作ってくれる。それは嬉しそうに。
「はい、どうぞ」
「ありがとう、乾杯」
「かんぱーい、今日も一日お仕事お疲れ様、ショウゴ」
「ユリアこそ、いつもありがとう」
ユリアと俺は、一緒にお酒を呷った。
「くぅ~~、仕事終わりは最高だね」
「ほんとよね~~」
二人は、このやりとりに違和感と可笑しさを感じた。そして、目が合うと噴き出さずにはいられなかった。
「ぷっ」
「「あはははっ」」
先に吹き出したのは俺で、釣られてユリアも笑い出してしまった。彼女とは、花街で色恋を楽しんでいた関係で、こんな親密無関係に成れるとは思わなかったし、彼女が自分を慕ってくれるなんて夢のまた夢だと思っていた。
それに、相手は一回り以上の歳下で、そうとは思えないほど大人びた彼女に、本気にならない為に名前すら聞かなかったのに。気づけば、彼女は俺のために危険な橋を渡っていてくれたんだ。
「やっぱりなんか、まだ慣れないな。あのユリアとこうやって、過ごす日が来るなんて」
「ふふっ、ほんとよね。私も、私の人生でこんなに充実していて、穏やかな時間が訪れるなんて、思ってもいなかったわ。……ショウゴ、本当にありがとうね」
「ん? どうしたの急に」
彼女の雰囲気が変わった。彼女は、グラスを手に持ったまま、少し虚な表情を浮かべながら、話し始めた。
「だって、私ってねもう昔の話だけど。子供の頃に、親に金貨一枚で売り飛ばされたの……。あぁだめね、私ったらこんな話したら、お酒が不味くなっちゃう、忘れて」
「ううん、ユリアさえ良ければ聞かせて欲しい。知りたいんだ、これからの俺とユリアのためにも」
彼女は、俺のそんな態度に少し驚いたようだったが、少し嬉しそうに喋り始めた。それでも、彼女のグラスを握る手には力が入った。
「なら、長くなるけど許してね。面白くも無い話だけど。私が七歳の時に、両親に口減らしで奴隷として売り飛ばされて、その日から、人生変わったわ。毎日、掃除、料理、家畜の世話、畑仕事。仕事が出来ようが、毎日のように殴られて、寝る時間もなかった。
何度も死のうと思ったんだけど、死のうとする度に両親の顔を思い出したのよ。変な話よね、自分たちが助かるために、私を地獄に突き落とした張本人なのに。いつしか、私の心には憎悪しか残ってなくて、とにかく見返してやるんだって思ったわ。
そんな時、私はまた売られた。十二の時に、アクアリンデルに来て娼婦になったわ。初めの頃なんて最悪で、処女として変態の相手をさせられたわ。その時になって、今までは本当の地獄じゃなかった事を、思い知ったの。本気で死のうとした、縄を買ってきて、娼館の一室で首を吊ってね。
もし、次があるなら絶対に首なんか吊らないわ。死んだ方がマシっていうくらい苦しかった。首を吊っている時に、一人の女が部屋に入って来てね。驚きもせず、じーっと私が苦しんでるのを見てるのよ。なんて怖い女なんだ、と思ったわ。あぁ、死ぬんだって思った時、シャンデリアごと私は床に落ちたの。
それで、その女が床に転がった私にこう言うのよ『あんたは、神様にも見放されたの。これからは生きるしか無いわよ』って。それが、私の敬愛なる姐さんとの出会い。
その日から、高級娼婦の姐さんの見習いとして、必死に娼婦として生きたわ。そんな姐さんも、去年梅毒で死んじまったけど、私はそのおかげで高級娼婦に上り詰めた。それまでは、男に媚びていたけど、大抵の男は袖にすることが出来るようになった。
だけど、私の心は空っぽだった。どんなに良いもの飲んで、食べて、男を袖にしても全ては偽物。でもそんなの、全部今更だったのよね。
そんな時よ、ショウゴと出会ったのは。たまたま、男が懇願する顔を見たくて、一階に降りた時に、たまたま目に入ったのがショウゴ。最初の印象はなんてパッとしない男だろうって思ったわ」
ユリアはしみじみと思い出すように言ってくれた。あまりに重い話だったが彼女が少しだけ明るい表情になったので笑ってみせた。
「あははは、パッとしなくてすみません」
「ふふふっ、そんな男が、女も買わずに帰ろうとするから、少し揶揄ってやろうと思ったのが、私の娼婦としての運の尽きだった。ショウゴみたいな男は、一度だって出会ったことがなかったわ。征服欲はある癖に、初対面のそれも娼婦の私を、自分の宝物みたいに大事に扱って、常に私の顔色ばっかり伺う変な男。なのに、初めて客と心を通わせてしまった気がした。
あの日から、私は、いいえ私の人生は変わってしまった。もう変わる事はないと思っていた、糞みたいな私の人生が、貴方のおかげで薔薇色に色づき始めたの……。だから、ショウゴ。貴方のそばから、離れられない私を嫌いにならないで……」
彼女は、お酒に酔ったせいか、感情が昂ったせいなのか、白い肌を赤くしながら、涙をポロポロと流していた。彼女は、俺が彼女の過去に出会った人々のように、いつの日か、捨てるとでも思っているのだろうか。
「ユリア……」
俺が悪い、彼女の事を知りたいっていう好奇心で、凄惨な過去を暴いてしまった。それなりの覚悟をして聞いたつもりでも、前世でぬくぬくと育った俺には、想像しきれない部分だった。
俺は、彼女の所まで行き、泣いている彼女を後ろから抱きしめた。
「嫌いになんて、ならないさ。俺は幸せな男だ。こんな素敵な女性に想われるなんて、他の男に知られたら殺されちゃうよ。……もう大丈夫だよ、ユリアが俺にしてくれた事は一生忘れないし、一生かけて恩返ししていくよ。だから、もう泣かないで」
「うん、うん、ありがとうショウゴ。私をあのドブの底から救ってくれて」
ユリアは、ひとしきり泣いたあと俺の腕の中で、眠ってしまった。よほど、疲れていたのだろう。朝はティナとの剣術の訓練、そこから山道を揺られて、店を仕切って、また山道に揺られて帰ってくる。
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ね、神様。
「おやすみ、ユリア」
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俺は、テーブルのグラスたちを片付け、風呂に入って眠りについた。もう深夜を、まわった頃だった。
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「んぁあ~~」
「何が、んああだ! 朝食の時間だ! 起きろ」
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「ユリアとカイは?」
「とっくにダイニングで、お前を待っている」
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「おはよう、カイ。ちょっと、酒を飲みすぎたみたいだ」
「酒豪の旦那が飲み過ぎっすか? 少し、その言い訳には無理がありますよ。それに、今日は、姐さんと旦那が少し余所余所しい気がするんすけど、何かあったんじゃいんですか?」
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その時だった、ティナが朝食のベーコンにフォークを突き刺したのは。その瞬間、はっと空気が変わった。
「カイ、お前は中々面白い事を言う才能があるな。朝の訓練が、足りなかったのなら追加で、昼もいっておくか?」
「し、師匠。自分は、何も言ってないっす。十分、疲れてます」
「そうか、なら黙って飯を食え。お前の体は、まだまだ線が細すぎる、まるでショウゴみたいだ」
カイは、大人しくなって朝食を食べ始めた。
「ユリアも、おはよう」
「おはよう、ショウゴ」
今日の朝食当番は、ティナだ。ティナは単純な料理しか作れないけど、結構美味しかった。なんていうか、塩と胡椒の使い方が豪快で、お父さんの料理みたいだった。
「やっぱり、目玉焼きとベーコンを焼かせたら、ティナは天才だね。パンは、ユリアが焼いてくれたの?」
「えぇ、娼館での楽しみなんて食事ぐらいだったから、忙しくない時は自分で焼いてたわ。麦をこねてるときは、何も考えなくて良かったし、ストレスも発散できたのよね」
「ふふふっ、そっか。なんかいいね、みんなが補って生活するって……」
「旦那! 俺もこんな幸せな生活、初めてっす!」
カイの一言に、みんなが笑いながら同意していた。真夏もピークを過ぎ、山奥の我が家には涼しい風が吹き始めていて、外から差し込む陽光が俺達を照らしてくれる。
そんな心地よさを感じていたら、ふと思ってしまった。
「今日は、仕事を休みにしよう! そうしよう!」
「「え」」
みんなが少し驚いたようだった。
「ユリアもカイも今日は、家でゆっくりしていいよ。そうだ、なんなら川に釣りに行こうか! みんなでバスケット持って、こんなに天気がいいんだ。俺も、地下に篭りたくなくなっちゃった」
「でも、急にお店を休みにしたら、街のみんなが驚いちゃうんじゃない?」
「大丈夫! 一日ぐらい、ニートのナッツの親父に頼めばいいさ。俺のおかげで、たくさん稼いでるんだ。一日ぐらい、店番やってくれるさ。俺が後で、伝言の魔導書で伝えておくから大丈夫。それに働きすぎだよ、これからは七日に一度休みを作ります。これを定休日とします」
思えば、異世界に来てからと言うもの、目まぐるしく働き過ぎていた気がする。この世界に馴染む為に、休むなんて言うことを考えず、ひたすらに走ってきた。
そして気づけば、掛け替えのない家族ような人たちに恵まれて、今になって幸せに気付くなんて鈍いなぁ。
こうして、この日はみんなで、近くの渓流で魚釣に出た。釣竿は、以前街で買っておいた物を使った。前世で、海釣りはした事はあるものの、渓流釣りは初めてで、岩裏にいる虫が最高に気持ち悪かったりした。
意外と、ユリアが一番魚を釣っていて、彼女の顔は明るく生き生きとしていた。それに、ティナとユリアの関係はライバルではあるものの、一向に釣れないティナに釣りのコツを教えている様子は、なんとも言えない友情の温かさを感じた。
カイに至っては、適当な木の棒で槍を造り素潜りし始めた。カイは左腕がないとは思えない器用さで、魚を突きまくった。
そしてベッラは、泳げないみたいで、熊みたいに上流で飛んでくる魚を口でキャッチしていた。恐ろしいぐらいの数の魚を丸呑みにしていた。
夜は、みんなで火を囲いながら魚を焼いた。魚を前にすると、日本人の血が騒ぎ、日本酒が欲しくなる。しかし、米のない現状は、ウオッカで我慢するしかなかった。
俺は、横たわったベッラのお腹を背にして、火の前に座っていた。
そして目の前に居るカイとユリアは、本当に姉弟のように仲が良い、そんな仲睦まじい二人を見ていると、ティナが話しかけてきた。
「どうした、何か寂しそうな顔をしているぞ」
「ん、いや。家族っていいなぁってさ」
「……そうだな。私も、久しぶりに家族を思い出してしまったよ」
「……そっか」
「あぁ」
俺とティナは、この時間を噛み締めるように火を見つめた。必ず守ろう、この人達を、力及ばず何かが起きたとしても、全身全霊で助けに行こう。
その為にも、今は目の前にある酒造りに全力を注ごう。侯爵の後ろ盾を、盤石な物にして、半端者が手出しできないように。それに、お金をもっと稼いで身を守る術を用意しよう。でも一番大事なのは、蒸留酒を世界に広めることだ。
酒蔵の数だけ、ウイスキーが増えれば、俺が造れるウイスキーの幅はグッと広がる。俺だけじゃ、最高のウイスキーは造れない。それは色んな技術的な意味があるけど、一番は生産者同士色んな話をしてみたいからだ。
「ショウゴ、心配するな」
「え?」
物思いに耽っていたら、ティナに現実世界に引き戻された。
「お前はすぐに顔に出る。そんなんだから、シールズに良いように弄ばれるんだ」
「ははは、面目次第もございません」
「私が必ず守ってやる。お前の大切なものは、全てだ。任せろ」
ティナの顔は、本当に頼もしく見えた。暗がりの中で、揺らめく炎に映し出された彼女の戦士の顔、これほど頼もしい顔を俺は他に知らない。
なら、ティナのことは俺が守ろう。彼女が俺の剣として、困苦に塗れ、砕けそうになる前に。
「うん、そうだったね。なら、ティナは俺が守るよ! 絶対に」
「なっ! ば、馬鹿を言うな! そんな細い腕でどうやって守ると言うんだ、全くお前と言うやつは」
薄暗がりの中ティナの肌が赤くなっているかは確認出来なかった。それでも俺に顔を見せない様にしているのは照れている証拠だと思った。
俺はその隙に後ろから彼女のお腹あたりに手を回して抱き締めた。
「うーん? ティナを抱きしめて、肉の壁になるとか?」
「そ、それはお前の欲望であろう!! あ、やめ、ひゃ// くっつくなぁーー!!」
時間が止まればいい、そう思うほどティナは可愛かった。
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