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優等生の裏の顔

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優等生の裏の顔って何だろう。実は授業をサボっているとかタバコを吸うとか。
劣等生の裏の顔なら実は勉強ができるとか。

「もうイヤだよ」
絵に描いたような劣等生の俺はいつも通り屋上への階段を登っていたら屋上の扉は空いていて奥に人影が見えた。

「私、良い子じゃないし、期待には応えられないし。みんなを巻き込んでばっかりだし」

俺はその場に立ち尽くす以外何も出来ない。

「だれ?」
長い髪が風に靡かせ彼女はこちらを振り向く。赤色のリボン、上級生だ。

「どうも初めまして、先輩。俺は一年のユウキです」
「初めまして、私は二年のヨナ。恥ずかしいところ見られちゃったな。ユウキくんはご飯食べに?」
「いえ、サボりです。ご飯忘れてきたんで」
「そ、そうなんだ」
劣等生な俺の唯一の取り柄、真面目すぎることを上級生相手に使うことがあるとは。

「先輩、疲れてるなら話聞きますよ。俺暇なんで」
彼女は目を伏せて迷うような仕草を見せる。
「大丈夫だよ」
「嘘ですね。先輩は無理しすぎだと思いますよ。初対面の人間に心配されるなんて相当なんですから。心配しなくても俺口は硬いし、人の話聞くの好きなんですよ。だからさっさと話してください」
「そこまで言うなら付き合ってもらおうかな。でもちょっとだけ待ってて」

そう告げて彼女は転びそうな勢いで階段を駆け降りていく。

「はぁー。緊張したー」
膝から崩れ落ちるように屋上の床に座り込む。本来、初対面に話す勇気はないし、ましてや上級生なんてありえない。柄じゃない。

トントントンと階段を登る音がし、反射的に扉の影に隠れる。

「あれ?ユウキくん?」
「あ、ここです。先生とかだったら厄介なんで」
「そっか、良かったー。違う屋上来ちゃったかと思った」
「先輩、天然ですか?」
「養殖ではないけど……あ、え、あ、天然じゃないと思うけど」

クルクルと表情が変わる人だなぁ。

「あっ、そうだ。これあげる」
「アンパンですか?」
「私、餡子苦手なんだ」
「ありがとうございます」

彼女と2人床に座りパンを食べながら話す。

「私ね、嫌いなんだ。自分のことが。いつも失敗しちゃうし人とはうまく話せないし。最近みんなといても楽しめなくて…… 」
「自分のこと、好きになれとは言えないですけど、嫌いになっちゃダメですよ」
軽くデコピンをする。
「痛っ。ひどっ」
「ひどくないですよ。先輩が下向きすぎなんです」

キーンコーンカーコーン、予鈴が鳴る。

「帰る?」
「えぇ、帰ります。またいつでも来てくださいよ。ただ周りには内緒でお願いします」


次の日もその次の日も先輩は屋上に来た。少しずつ笑顔が減っていく先輩を見ていると不安で堪らなくなったが俺には話を聞く以外何も出来なかった。


同じような日々が1ヶ月ほど続いた。
俺は先輩にずっと前から考えていた言葉を告げる。人に頼るのが怖いと依存しそうで怖いと言っていた彼女に。
「言っときますけど、自分は自分で救えないんですよ。1番欲しい言葉はいつも誰かがくれる。だけど自分を傷つけたらダメです。俺は先輩をヨナさんを救いたい。だから俺と共にこれからも過ごしてください。大好きなんです」

高いものは無理だったけど子どもらし過ぎない年相応の指輪は買えたはずだ、そう信じ彼女に見せる。

ポタポタと音がし雨が降っているかと思いきや泣いているのは彼女だった。
「先輩?」
「私ダメダメだよ」
「また言いましたよね、ダメじゃないですよ。先輩は素敵な人です。先輩のこと好きな俺のことまで否定するんですか?」
「それは……」
「俺のこと嫌えないなら付き合ってください、本当に本当に大好きなんです。愛しています」
「よろしくお願いします」

頬を真っ赤にそめた先輩に指輪をつける。

これはずっと周りにバツをつけられてきた優しい少年と自分自身にバツをつけ続けていた餡子が大好きな少女の甘くて酸っぱい初恋の話。そして1人の幼い少女に語られる馴れ初めでもある。
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