7 / 9
優等生の裏の顔
しおりを挟む
優等生の裏の顔って何だろう。実は授業をサボっているとかタバコを吸うとか。
劣等生の裏の顔なら実は勉強ができるとか。
「もうイヤだよ」
絵に描いたような劣等生の俺はいつも通り屋上への階段を登っていたら屋上の扉は空いていて奥に人影が見えた。
「私、良い子じゃないし、期待には応えられないし。みんなを巻き込んでばっかりだし」
俺はその場に立ち尽くす以外何も出来ない。
「だれ?」
長い髪が風に靡かせ彼女はこちらを振り向く。赤色のリボン、上級生だ。
「どうも初めまして、先輩。俺は一年のユウキです」
「初めまして、私は二年のヨナ。恥ずかしいところ見られちゃったな。ユウキくんはご飯食べに?」
「いえ、サボりです。ご飯忘れてきたんで」
「そ、そうなんだ」
劣等生な俺の唯一の取り柄、真面目すぎることを上級生相手に使うことがあるとは。
「先輩、疲れてるなら話聞きますよ。俺暇なんで」
彼女は目を伏せて迷うような仕草を見せる。
「大丈夫だよ」
「嘘ですね。先輩は無理しすぎだと思いますよ。初対面の人間に心配されるなんて相当なんですから。心配しなくても俺口は硬いし、人の話聞くの好きなんですよ。だからさっさと話してください」
「そこまで言うなら付き合ってもらおうかな。でもちょっとだけ待ってて」
そう告げて彼女は転びそうな勢いで階段を駆け降りていく。
「はぁー。緊張したー」
膝から崩れ落ちるように屋上の床に座り込む。本来、初対面に話す勇気はないし、ましてや上級生なんてありえない。柄じゃない。
トントントンと階段を登る音がし、反射的に扉の影に隠れる。
「あれ?ユウキくん?」
「あ、ここです。先生とかだったら厄介なんで」
「そっか、良かったー。違う屋上来ちゃったかと思った」
「先輩、天然ですか?」
「養殖ではないけど……あ、え、あ、天然じゃないと思うけど」
クルクルと表情が変わる人だなぁ。
「あっ、そうだ。これあげる」
「アンパンですか?」
「私、餡子苦手なんだ」
「ありがとうございます」
彼女と2人床に座りパンを食べながら話す。
「私ね、嫌いなんだ。自分のことが。いつも失敗しちゃうし人とはうまく話せないし。最近みんなといても楽しめなくて…… 」
「自分のこと、好きになれとは言えないですけど、嫌いになっちゃダメですよ」
軽くデコピンをする。
「痛っ。ひどっ」
「ひどくないですよ。先輩が下向きすぎなんです」
キーンコーンカーコーン、予鈴が鳴る。
「帰る?」
「えぇ、帰ります。またいつでも来てくださいよ。ただ周りには内緒でお願いします」
次の日もその次の日も先輩は屋上に来た。少しずつ笑顔が減っていく先輩を見ていると不安で堪らなくなったが俺には話を聞く以外何も出来なかった。
同じような日々が1ヶ月ほど続いた。
俺は先輩にずっと前から考えていた言葉を告げる。人に頼るのが怖いと依存しそうで怖いと言っていた彼女に。
「言っときますけど、自分は自分で救えないんですよ。1番欲しい言葉はいつも誰かがくれる。だけど自分を傷つけたらダメです。俺は先輩をヨナさんを救いたい。だから俺と共にこれからも過ごしてください。大好きなんです」
高いものは無理だったけど子どもらし過ぎない年相応の指輪は買えたはずだ、そう信じ彼女に見せる。
ポタポタと音がし雨が降っているかと思いきや泣いているのは彼女だった。
「先輩?」
「私ダメダメだよ」
「また言いましたよね、ダメじゃないですよ。先輩は素敵な人です。先輩のこと好きな俺のことまで否定するんですか?」
「それは……」
「俺のこと嫌えないなら付き合ってください、本当に本当に大好きなんです。愛しています」
「よろしくお願いします」
頬を真っ赤にそめた先輩に指輪をつける。
これはずっと周りにバツをつけられてきた優しい少年と自分自身にバツをつけ続けていた餡子が大好きな少女の甘くて酸っぱい初恋の話。そして1人の幼い少女に語られる馴れ初めでもある。
劣等生の裏の顔なら実は勉強ができるとか。
「もうイヤだよ」
絵に描いたような劣等生の俺はいつも通り屋上への階段を登っていたら屋上の扉は空いていて奥に人影が見えた。
「私、良い子じゃないし、期待には応えられないし。みんなを巻き込んでばっかりだし」
俺はその場に立ち尽くす以外何も出来ない。
「だれ?」
長い髪が風に靡かせ彼女はこちらを振り向く。赤色のリボン、上級生だ。
「どうも初めまして、先輩。俺は一年のユウキです」
「初めまして、私は二年のヨナ。恥ずかしいところ見られちゃったな。ユウキくんはご飯食べに?」
「いえ、サボりです。ご飯忘れてきたんで」
「そ、そうなんだ」
劣等生な俺の唯一の取り柄、真面目すぎることを上級生相手に使うことがあるとは。
「先輩、疲れてるなら話聞きますよ。俺暇なんで」
彼女は目を伏せて迷うような仕草を見せる。
「大丈夫だよ」
「嘘ですね。先輩は無理しすぎだと思いますよ。初対面の人間に心配されるなんて相当なんですから。心配しなくても俺口は硬いし、人の話聞くの好きなんですよ。だからさっさと話してください」
「そこまで言うなら付き合ってもらおうかな。でもちょっとだけ待ってて」
そう告げて彼女は転びそうな勢いで階段を駆け降りていく。
「はぁー。緊張したー」
膝から崩れ落ちるように屋上の床に座り込む。本来、初対面に話す勇気はないし、ましてや上級生なんてありえない。柄じゃない。
トントントンと階段を登る音がし、反射的に扉の影に隠れる。
「あれ?ユウキくん?」
「あ、ここです。先生とかだったら厄介なんで」
「そっか、良かったー。違う屋上来ちゃったかと思った」
「先輩、天然ですか?」
「養殖ではないけど……あ、え、あ、天然じゃないと思うけど」
クルクルと表情が変わる人だなぁ。
「あっ、そうだ。これあげる」
「アンパンですか?」
「私、餡子苦手なんだ」
「ありがとうございます」
彼女と2人床に座りパンを食べながら話す。
「私ね、嫌いなんだ。自分のことが。いつも失敗しちゃうし人とはうまく話せないし。最近みんなといても楽しめなくて…… 」
「自分のこと、好きになれとは言えないですけど、嫌いになっちゃダメですよ」
軽くデコピンをする。
「痛っ。ひどっ」
「ひどくないですよ。先輩が下向きすぎなんです」
キーンコーンカーコーン、予鈴が鳴る。
「帰る?」
「えぇ、帰ります。またいつでも来てくださいよ。ただ周りには内緒でお願いします」
次の日もその次の日も先輩は屋上に来た。少しずつ笑顔が減っていく先輩を見ていると不安で堪らなくなったが俺には話を聞く以外何も出来なかった。
同じような日々が1ヶ月ほど続いた。
俺は先輩にずっと前から考えていた言葉を告げる。人に頼るのが怖いと依存しそうで怖いと言っていた彼女に。
「言っときますけど、自分は自分で救えないんですよ。1番欲しい言葉はいつも誰かがくれる。だけど自分を傷つけたらダメです。俺は先輩をヨナさんを救いたい。だから俺と共にこれからも過ごしてください。大好きなんです」
高いものは無理だったけど子どもらし過ぎない年相応の指輪は買えたはずだ、そう信じ彼女に見せる。
ポタポタと音がし雨が降っているかと思いきや泣いているのは彼女だった。
「先輩?」
「私ダメダメだよ」
「また言いましたよね、ダメじゃないですよ。先輩は素敵な人です。先輩のこと好きな俺のことまで否定するんですか?」
「それは……」
「俺のこと嫌えないなら付き合ってください、本当に本当に大好きなんです。愛しています」
「よろしくお願いします」
頬を真っ赤にそめた先輩に指輪をつける。
これはずっと周りにバツをつけられてきた優しい少年と自分自身にバツをつけ続けていた餡子が大好きな少女の甘くて酸っぱい初恋の話。そして1人の幼い少女に語られる馴れ初めでもある。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の不倫で離婚することになったから、不倫相手の両親に告発してやった。
ほったげな
恋愛
夫から離婚したいと言われた。その後私は夫と若い伯爵令嬢が不倫していることを知ってしまう。離婚は承諾したけど、許せないので伯爵令嬢の家に不倫の事実を告発してやる……!
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】夫もメイドも嘘ばかり
横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。
サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。
そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。
夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。
何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします
天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。
側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。
それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる