63 / 124
第2章の2 新天地
第54話 ベルナの裏情報
しおりを挟む
フィアスは、俺に興味があるのか、マサンの背後を、さかんに覗き込むようにしていた。
「君の後ろにいる可愛い子ちゃんは誰だい? もしかすると、妹なのか?」
「違う。 私は、正統派美人だけど、この娘は、可愛い子ちゃんタイプだろ。 似て非なるものさ」
マサンは、分かったような分からないような事を言った。
「ねえ、隠れている君! 思い切って聞くけど、恋人はいるのか?」
フィアスは目を輝かせ、俺の方を覗いた。
「あんた、相変わらず美人に目がないね。 色狂いなのは、この国の宰相と同じだぞ。 ハーア、気持ち悪い!」
マサンは、目を細めて、凄く嫌そうな顔をした。
「酷えな …。 あんな変態野郎と一緒にすんじゃねえ! 俺は、違う!」
フィアスも、露骨に嫌そうな顔をした。
「そこまで言うって事は、シモンの情報があるのか?」
「ああ、もちろんだ。 情報が欲しいのか? 我が組織、プレセアに入ったら教えるぜ。 幹部待遇にするが、どうだ!」
「今回は入っても良いが …。 但し、条件がある。 関わるのは、ベルナ王国に関する諜報活動のみだ。 また、私の意思で、組織をいつでも抜けられる事。 それと、この娘、イーシャも入れる事。 私の下で働かせるからな」
マサンが言うと、フィアスは俺をまた覗き込んだ。
「ダンジョンの街で、ベルナ王国の兵と戦ったと聞いたが …。 それで、何か思う所があるんだろ。 それと、その可愛い子ちゃんだが、イーシャって言うのか。 君は、かなり高魔力のようだな …」
フィアスは、わざと聞こえるように話した後、すこし考え込んだ。
「分かった、その条件をのむ」
そう言うと、フィアスは俺に近づき肩を叩いた。
しかし、彼はイケメンで無いせいか、心が弾まない。
我ながら、ワガママな乙女心だと思った。
こうして、俺とマサンは、私設スパイ組織プレセアに入った。
その後、公園の片隅で、裏情報を聞かせてもらった。
今、ベルナ王国に潜入しているプレセアのスパイは200名近くいるが、王国内にも支援者や協力者がいるとの事。
特に、シモンに追い落とされた、前宰相カマンベール公爵の恨みは凄まじく、その反動から、多くの資金や情報の提供を受けていた。
その上で、カマンベール公爵から、宰相への復活を依頼されているとの事。
興味深かったのは、シモンとガーラが決して円満な関係では無いという事であった。
ガーラは、魔力で自分より劣るシモンを陰でバカにしており、彼に反感を抱く将校を手懐け、場合によっては、権力の中枢に取って変わろうとしていた。
また、何か弱みを握られているのか、シモンはガーラに対してだけは、頭が上がらない様子だという。
ガーラのライバルはビクトリアであり、シモンは、魔力の力関係で見ると、意外に小者ではないかという事であった。
しかし、侮れない点が一つあった。
フィアスは、シモンに関する信じられない事を語り出した。
「シモンには、女性の心を操れる能力があるようだ。 これは、状況証拠を積み重ねた結果の結論だ」
「あいつは、イケメンだから女性にモテるだろ。 それで操っているように見えるのでは? 最も、私は、奴を気持ち悪いと思うがな」
マサンは、吐き捨てるように言い放った。
「いや、違うんだ。 シモンの女性関係は、年齢も様々で相手が多すぎるんだよ。 それに、敵対する相手を追い落とす時に、必ず、そのパートナーの女性を利用する。 女性達は、心を奪われると、かつてのパートナーを嘘のように切り捨て、シモンに味方をするようになる。 軍の参謀になる時に、ライバルとなる将軍の婦人や恋人が、シモンに靡いたのは有名な話だ。 奴は秘密裏に行っているつもりでも、嫉妬する男は気がつくものさ。 だから、シモンを恨む男は多い」
「本当の話なのか!」
マサンは、驚いたような顔をした。
「ああ、事実だ。 極めつけは、宰相になる時だ。 カマンベール宰相が失脚した時、荘園の裏帳簿が出てきたが、婦人が持ち出したようだ」
「証拠は、あるのか?」
「使用人とかの証言を組み立てると、婦人に行き着いた。 ただ、確たる証拠は無い」
「その婦人は、どうなった?」
「わざと泳がせているが、未だにシモンと会っている。 我々の動きを探っているのだろう」
「公爵は、婦人を離縁しないのか?」
「カマンベール公爵は、婦人を愛している。 彼女からの愛情は無くなったが、離縁はしないと言ってる。 最も、こちらも偽情報を与えて利用してるがな! でも、婦人は48歳だぞ。 26歳のシモンと、考えられるか?」
フィアスは面白そうに、豪快に笑った。
「心を縛る魔法は、いにしえの魔王にしか使えないわ。 それに、心を縛られたのは、皆、女性なのよね」
マサンは、少し考え込んでから口を開いた。
「シモンは、男だから …。 つまり、異性に効かせる魔法 …。 もしかして、古代魔道具の『感情の鎖』を使ったのか?」
マサンは、信じられないといった顔をして喋った。
「実は、俺も『感情の鎖』を疑ってる。 いや、それで間違いないだろう」
フィアスは、マサンの目を見て頷いた。
「ちょっと待って! 『感情の鎖』って言ったけど …。 昔、ガーラが、シモンは『感情の鎖』を使えると言ってたわ。 『感情の鎖』ってなに?」
2人の会話を聞いて、俺は、魔法の門の中で、初めてガーラと会った時の事を思い出していた。
「イーシャ。 君は、ガーラと面識があるのか?」
フィアスは、驚いたような顔をして俺を見た。
マサンは手の平を向け、慌てた様子で俺の口を制した。
「君の後ろにいる可愛い子ちゃんは誰だい? もしかすると、妹なのか?」
「違う。 私は、正統派美人だけど、この娘は、可愛い子ちゃんタイプだろ。 似て非なるものさ」
マサンは、分かったような分からないような事を言った。
「ねえ、隠れている君! 思い切って聞くけど、恋人はいるのか?」
フィアスは目を輝かせ、俺の方を覗いた。
「あんた、相変わらず美人に目がないね。 色狂いなのは、この国の宰相と同じだぞ。 ハーア、気持ち悪い!」
マサンは、目を細めて、凄く嫌そうな顔をした。
「酷えな …。 あんな変態野郎と一緒にすんじゃねえ! 俺は、違う!」
フィアスも、露骨に嫌そうな顔をした。
「そこまで言うって事は、シモンの情報があるのか?」
「ああ、もちろんだ。 情報が欲しいのか? 我が組織、プレセアに入ったら教えるぜ。 幹部待遇にするが、どうだ!」
「今回は入っても良いが …。 但し、条件がある。 関わるのは、ベルナ王国に関する諜報活動のみだ。 また、私の意思で、組織をいつでも抜けられる事。 それと、この娘、イーシャも入れる事。 私の下で働かせるからな」
マサンが言うと、フィアスは俺をまた覗き込んだ。
「ダンジョンの街で、ベルナ王国の兵と戦ったと聞いたが …。 それで、何か思う所があるんだろ。 それと、その可愛い子ちゃんだが、イーシャって言うのか。 君は、かなり高魔力のようだな …」
フィアスは、わざと聞こえるように話した後、すこし考え込んだ。
「分かった、その条件をのむ」
そう言うと、フィアスは俺に近づき肩を叩いた。
しかし、彼はイケメンで無いせいか、心が弾まない。
我ながら、ワガママな乙女心だと思った。
こうして、俺とマサンは、私設スパイ組織プレセアに入った。
その後、公園の片隅で、裏情報を聞かせてもらった。
今、ベルナ王国に潜入しているプレセアのスパイは200名近くいるが、王国内にも支援者や協力者がいるとの事。
特に、シモンに追い落とされた、前宰相カマンベール公爵の恨みは凄まじく、その反動から、多くの資金や情報の提供を受けていた。
その上で、カマンベール公爵から、宰相への復活を依頼されているとの事。
興味深かったのは、シモンとガーラが決して円満な関係では無いという事であった。
ガーラは、魔力で自分より劣るシモンを陰でバカにしており、彼に反感を抱く将校を手懐け、場合によっては、権力の中枢に取って変わろうとしていた。
また、何か弱みを握られているのか、シモンはガーラに対してだけは、頭が上がらない様子だという。
ガーラのライバルはビクトリアであり、シモンは、魔力の力関係で見ると、意外に小者ではないかという事であった。
しかし、侮れない点が一つあった。
フィアスは、シモンに関する信じられない事を語り出した。
「シモンには、女性の心を操れる能力があるようだ。 これは、状況証拠を積み重ねた結果の結論だ」
「あいつは、イケメンだから女性にモテるだろ。 それで操っているように見えるのでは? 最も、私は、奴を気持ち悪いと思うがな」
マサンは、吐き捨てるように言い放った。
「いや、違うんだ。 シモンの女性関係は、年齢も様々で相手が多すぎるんだよ。 それに、敵対する相手を追い落とす時に、必ず、そのパートナーの女性を利用する。 女性達は、心を奪われると、かつてのパートナーを嘘のように切り捨て、シモンに味方をするようになる。 軍の参謀になる時に、ライバルとなる将軍の婦人や恋人が、シモンに靡いたのは有名な話だ。 奴は秘密裏に行っているつもりでも、嫉妬する男は気がつくものさ。 だから、シモンを恨む男は多い」
「本当の話なのか!」
マサンは、驚いたような顔をした。
「ああ、事実だ。 極めつけは、宰相になる時だ。 カマンベール宰相が失脚した時、荘園の裏帳簿が出てきたが、婦人が持ち出したようだ」
「証拠は、あるのか?」
「使用人とかの証言を組み立てると、婦人に行き着いた。 ただ、確たる証拠は無い」
「その婦人は、どうなった?」
「わざと泳がせているが、未だにシモンと会っている。 我々の動きを探っているのだろう」
「公爵は、婦人を離縁しないのか?」
「カマンベール公爵は、婦人を愛している。 彼女からの愛情は無くなったが、離縁はしないと言ってる。 最も、こちらも偽情報を与えて利用してるがな! でも、婦人は48歳だぞ。 26歳のシモンと、考えられるか?」
フィアスは面白そうに、豪快に笑った。
「心を縛る魔法は、いにしえの魔王にしか使えないわ。 それに、心を縛られたのは、皆、女性なのよね」
マサンは、少し考え込んでから口を開いた。
「シモンは、男だから …。 つまり、異性に効かせる魔法 …。 もしかして、古代魔道具の『感情の鎖』を使ったのか?」
マサンは、信じられないといった顔をして喋った。
「実は、俺も『感情の鎖』を疑ってる。 いや、それで間違いないだろう」
フィアスは、マサンの目を見て頷いた。
「ちょっと待って! 『感情の鎖』って言ったけど …。 昔、ガーラが、シモンは『感情の鎖』を使えると言ってたわ。 『感情の鎖』ってなに?」
2人の会話を聞いて、俺は、魔法の門の中で、初めてガーラと会った時の事を思い出していた。
「イーシャ。 君は、ガーラと面識があるのか?」
フィアスは、驚いたような顔をして俺を見た。
マサンは手の平を向け、慌てた様子で俺の口を制した。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。
ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。
妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜
橋本 悠
ファンタジー
両親の死、いじめ、NTRなどありとあらゆる`最悪`を経験し、終いにはパーティーメンバーに刺殺された俺は、異世界転生に成功した……と思いきや。
もしかして……また俺かよ!!
人生の最悪を賭けた二周目の俺が始まる……ってもうあんな最悪見たくない!!!
さいっっっっこうの人生送ってやるよ!!
──────
こちらの作品はカクヨム様でも連載させていただいております。
先取り更新はカクヨム様でございます。是非こちらもよろしくお願いします!
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
寝取られて裏切った恋人への復讐
音の中
恋愛
【あらすじ】
彼との出会いは中学2年生のクラス替え。
席が隣同士だったのがきっかけでお話をするようになったんだよね。
彼とはドラマ鑑賞という共通の趣味があった。
いつも前日に見たドラマの感想を話していたのが懐かしいな。
それから徐々に仲良くなって付き合えた時は本当に嬉しかったよ。
この幸せはずっと続く。
その時はそう信じて疑わなかったな、あの日までは。
【注意】
・人を不快にさせる小説だと思います。
・けど小説を書いてると、意外と不快にならないかも?という感覚になり麻痺してしまいます。
・素読みしてみたら作者のくせに思った以上にダメージくらいました。(公開して3日目の感想)
・私がこの小説を読んでたら多分作者に怒りを覚えます。
・ラブコメパートが半分を占めます。
・エロい表現もあります。
・ざまぁはありますが、殺したり、人格を壊して精神病棟行きなどの過激なものではありません。
・された側視点ではハッピーエンドになります。
・復讐が駆け足だと感じちゃうかも……
・この小説はこの間初めて読んでみたNTR漫画にムカついたので書きました。
・プロットもほぼない状態で、怒りに任せて殴り書きした感じです。
・だからおかしいところが散見するかも……。
・とりあえず私はもうNTR漫画とか読むことはないでしょう……。
【更新について】
・1日2回投稿します
・初回を除き、『7時』『17時』に公開します
※この小説は書き終えているのでエタることはありません。
※逆に言うと、コメントで要望があっても答えられない可能性がとても高いです。
最愛の幼馴染みと親友に裏切られた俺を救ってくれたのはもう一人の幼馴染みだった
音の中
恋愛
山岸優李には、2人の幼馴染みと1人の親友がいる。
そして幼馴染みの内1人は、俺の大切で最愛の彼女だ。
4人で俺の部屋で遊んでいたときに、俺と彼女ではないもう一人の幼馴染み、美山 奏は限定ロールケーキを買いに出掛けた。ところが俺の凡ミスで急遽家に戻ると、俺の部屋から大きな音がしたので慌てて部屋に入った。するといつもと様子の違う2人が「虫が〜〜」などと言っている。能天気な俺は何も気付かなかったが、奏は敏感に違和感を感じ取っていた。
これは、俺のことを裏切った幼馴染みと親友、そして俺のことを救ってくれたもう一人の幼馴染みの物語だ。
--
【登場人物】
山岸 優李:裏切られた主人公
美山 奏:救った幼馴染み
坂下 羽月:裏切った幼馴染みで彼女。
北島 光輝:裏切った親友
--
この物語は『NTR』と『復讐』をテーマにしています。
ですが、過激なことはしない予定なので、あまりスカッとする復讐劇にはならないかも知れません。あと、復讐はかなり後半になると思います。
人によっては不満に思うこともあるかもです。
そう感じさせてしまったら申し訳ありません。
また、ストーリー自体はテンプレだと思います。
--
筆者はNTRが好きではなく、純愛が好きです。
なので純愛要素も盛り込んでいきたいと考えています。
小説自体描いたのはこちらが初めてなので、読みにくい箇所が散見するかも知れません。
生暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
ちなみにNTR的な胸糞な展開は第1章で終わる予定。
彼女の浮気相手からNTRビデオレターが送られてきたから全力で反撃しますが、今さら許してくれと言われてももう遅い
うぱー
恋愛
彼女の浮気相手からハメ撮りを送られてきたことにより、浮気されていた事実を知る。
浮気相手はサークルの女性にモテまくりの先輩だった。
裏切られていた悲しみと憎しみを糧に社会的制裁を徹底的に加えて復讐することを誓う。
■一行あらすじ
浮気相手と彼女を地獄に落とすために頑張る話です(●´艸`)ィヒヒ
浮気したけど『ざまぁ』されなかった女の慟哭
Raccoon
恋愛
ある日夫——正樹が死んでしまった。
失意の中私——亜衣が見つけたのは一冊の黒い日記帳。
そこに書かれてあったのは私の罪。もう許されることのない罪。消えることのない罪。
この日記を最後まで読んだ時、私はどうなっているのだろうか。
浮気した妻が死んだ夫の10年分の日記読むお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる