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第二十四話 そうだ、私が君の運命の相手だ
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「アーレント様が、私の運命の相手?」
驚くのも仕方がないわ。
なにせアーレント様はこの国の王太子。
コーヒーのシミで黒髪になったアーレント様の新聞の上にティアラがそっと手を置いた。
「これは・・・・・・」
アーレント様の鼻から下を覆うティアラの手が震えている。
ティアラにしか分からない過去の何かがそうさせたんだろうと思う。
「この方だわ。間違いない、この方が私の探していた人よ。あの時のライト様は、本当はアーレント様だったのね」
潤む瞳を両手を当てて涙が出ないように何とか抑えているティアラを後ろから何かがフワッと包み込んだ。
「うん そうだよ。やっと気付いた?」
ティアラの後ろに居たのは、金の柔らかい髪をティアラの後ろ頭に擦り寄せているアーレント様だった。
本当にこの方は神出鬼没ね。
こんな食堂にサッと現れるなんて。
慌てて二人を隠そうと立ち上がるとアーレント様が「大丈夫。そのままで」と手で私を征した。
「約束を果たしに来た。ティアラ、君を迎えに来たよ」
その言葉を聞いてティアラその姿が見えなくても、それが誰だか分かった様で目を閉じて首を縦に振った。
ティアラが振り返ると、そこには金色の髪に青い目のアーレント様がいて二人は暫くの間見つめ合っている。
「この傷を、覚えてる?」
アーレント様は自らの首元を寛げて右肩をティアラに見せる。
そこには縦に長い傷跡が残されていた。
ティアラはその傷をなぞるように優しく触れる。
「私と一緒になってくれないか?」
アーレント様がティアラに優しく囁く。
ティアラは無言で目を閉じたあとゆっくりと口を開いた。
「お断りします」
「・・・・・・え?」
アーレント様は断られるとは思っていなかったらしく相当ショックを受けていた。
「ちょっとティアラ!何で断るのよっ。運命の人が見つかったっていうのに」
「運命だったら、一緒になるのは今じゃなくてもいいはず。私今は恋よりも友情が大事なのっ。アーレント様が運命の人なら、私のことを待てますよね?」
ティアラはそう言って私とオルガの手を取った。
「プッ。やーい、アーレント。振られてやんの」
オルガは今の状況が面白くて仕方がない様で大笑いをしている。
「オルガ、発明品がなければお前は今頃あの世行きだ」
アーレントはわなわな震えながらオルガに言った。
私達が話していると、一人の生徒が近づいてきた。
「お、王太子殿下。今回の電撃訪問は歓迎舞踏会のダンスのお相手を探しに来ていると聞きましたが、もしやデフェル子爵令嬢と踊られるのでしょうか?」
「ん?さて、どうだろうね。ねえ、デフェル子爵令嬢様」
少し自虐的にフッと笑いながらアーレント様が言う。
「もしもそういう運命なら踊るのでは?」
ティアラが意味深にそう言うとアーレント様はパァッと顔を輝かせて言った。
「そうだ、私が君の運命の相手だ。だから必ず君は私と踊ることになるだろう」
どこからそんな自信が湧いてくるのかしらアーレント様って。
金髪青目のアーレント様と赤毛碧眼のティアラは二人並ぶと何だかお似合いだった。
驚くのも仕方がないわ。
なにせアーレント様はこの国の王太子。
コーヒーのシミで黒髪になったアーレント様の新聞の上にティアラがそっと手を置いた。
「これは・・・・・・」
アーレント様の鼻から下を覆うティアラの手が震えている。
ティアラにしか分からない過去の何かがそうさせたんだろうと思う。
「この方だわ。間違いない、この方が私の探していた人よ。あの時のライト様は、本当はアーレント様だったのね」
潤む瞳を両手を当てて涙が出ないように何とか抑えているティアラを後ろから何かがフワッと包み込んだ。
「うん そうだよ。やっと気付いた?」
ティアラの後ろに居たのは、金の柔らかい髪をティアラの後ろ頭に擦り寄せているアーレント様だった。
本当にこの方は神出鬼没ね。
こんな食堂にサッと現れるなんて。
慌てて二人を隠そうと立ち上がるとアーレント様が「大丈夫。そのままで」と手で私を征した。
「約束を果たしに来た。ティアラ、君を迎えに来たよ」
その言葉を聞いてティアラその姿が見えなくても、それが誰だか分かった様で目を閉じて首を縦に振った。
ティアラが振り返ると、そこには金色の髪に青い目のアーレント様がいて二人は暫くの間見つめ合っている。
「この傷を、覚えてる?」
アーレント様は自らの首元を寛げて右肩をティアラに見せる。
そこには縦に長い傷跡が残されていた。
ティアラはその傷をなぞるように優しく触れる。
「私と一緒になってくれないか?」
アーレント様がティアラに優しく囁く。
ティアラは無言で目を閉じたあとゆっくりと口を開いた。
「お断りします」
「・・・・・・え?」
アーレント様は断られるとは思っていなかったらしく相当ショックを受けていた。
「ちょっとティアラ!何で断るのよっ。運命の人が見つかったっていうのに」
「運命だったら、一緒になるのは今じゃなくてもいいはず。私今は恋よりも友情が大事なのっ。アーレント様が運命の人なら、私のことを待てますよね?」
ティアラはそう言って私とオルガの手を取った。
「プッ。やーい、アーレント。振られてやんの」
オルガは今の状況が面白くて仕方がない様で大笑いをしている。
「オルガ、発明品がなければお前は今頃あの世行きだ」
アーレントはわなわな震えながらオルガに言った。
私達が話していると、一人の生徒が近づいてきた。
「お、王太子殿下。今回の電撃訪問は歓迎舞踏会のダンスのお相手を探しに来ていると聞きましたが、もしやデフェル子爵令嬢と踊られるのでしょうか?」
「ん?さて、どうだろうね。ねえ、デフェル子爵令嬢様」
少し自虐的にフッと笑いながらアーレント様が言う。
「もしもそういう運命なら踊るのでは?」
ティアラが意味深にそう言うとアーレント様はパァッと顔を輝かせて言った。
「そうだ、私が君の運命の相手だ。だから必ず君は私と踊ることになるだろう」
どこからそんな自信が湧いてくるのかしらアーレント様って。
金髪青目のアーレント様と赤毛碧眼のティアラは二人並ぶと何だかお似合いだった。
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