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第3章
3-5 連絡
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「可能性があるなら、応援したいと思ってるだけなんだけどな。
依音って、自分からはあまり動かないから後押ししたいんだよ。
前からそうだけど、依音って自分に対する好意に鈍感すぎ。自分の気持ちにも鈍感だし」
「……っ」
図星を次から次へとぶすぶす突かれまくり、ぐうの音もでない。
こんな風に佳奈美のお節介と好奇心マックスのスイッチが入ってしまうと、口で勝てる気がしなくて戦意喪失する。
「……い、いや、だからってさあ……」
「消極的な言い訳はいいから。とりあえず、今度の週末ね。
秋元さんと出掛ける約束してみてよ」
「で、でも秋元さんにだって都合ってものが……」
「そんなの聞いてみないとわからないじゃない。
そうね、まずはそこから。週末の予定を聞いてみて」
「……」
「さっきのご飯の誘いだって、別に嫌な顔してなかったんだから」
(……それは佳奈美が誘ったからでしょうよ……)
こんな雰囲気の中では口には出せない反論を心の中で呟いて、気持ちを落ち着ける。
「連絡先を教え合った仲なら、予定聞くくらいどうってことないでしょ。
むしろ前振りとしてやっとくべき」
「それに、高畠さんとの都合がついたら、夕方から私たちと合流してご飯って流れもできるから。
はい、依音の今週の課題。秋山さんと連絡取って約束を取り付けること。以上」
きっぱりと言い切って、佳奈美はすっきりとした顔で紅茶の入った紙コップに口を付ける。
「ああ、言っとくけど」
「……まだあるの?」
「連絡とるのは早いうちにね。
秋元さんに他の約束が被らないとも限らないんだから」
「……はいはい、仕事終わってから……」
「てことで、スマホ出して」
「は?」
「ほら、まだ昼休み時間あるから、今のうちに送っといたら」
「い、いやいや、さすがに展開が早すぎるでしょ」
「何言ってんの、そうやって後回しにするから”忘れてた”ってことになるんじゃないの。
早めに送っといたら、相手にとっても考える時間できるから親切なんだよ」
「……はあ」
正論を繰り出され抵抗する気力もなくした私は、素直にスマホを取り出す。
「文面も私が考えたほうがいい?」
「……いえ、大丈夫です、センセイ」
佳奈美に見張られながら、渋々秋元さんの連絡先を呼び出す。
―――『今週末の予定は決まっていますか?』
思いついた文面を打ち込み、迷いの残る指先でえいっと送信した。
「……送りました、センセイ」
「よろしい」
「はぁ……」
佳奈美の怒涛の説得からわずか数分しか経っていないのに、
まるで一仕事終えたかのような疲労感に襲われる。
(佳奈美の勢いに押されたとはいえ、慣れないことしたもんだな)
「……昼休みなのに、めっちゃ疲れたんだけど。
これから午後の仕事が待ってると思うと、もうちょっと休ませて欲しいよ」
つい零すと、佳奈美もわざとらしく大きなため息をつく。
「それはこっちの台詞。なかなか動かないあんたを動かす方の身にもなってよね」
「……別に頼んでませんけど」
「何か言いましたか?」
「いえ、何でもないですセンセイ」
握っていたスマホで休みの残り時間を確認し、テーブルに開放する。
(コーヒー、おかわりしてデスクに持ち込もうかな)
脱力した身体を椅子に預け、コーヒーメーカーの方へ視線を向けたと同時に、
私のスマホがブルリと震えた。
(!!)
依音って、自分からはあまり動かないから後押ししたいんだよ。
前からそうだけど、依音って自分に対する好意に鈍感すぎ。自分の気持ちにも鈍感だし」
「……っ」
図星を次から次へとぶすぶす突かれまくり、ぐうの音もでない。
こんな風に佳奈美のお節介と好奇心マックスのスイッチが入ってしまうと、口で勝てる気がしなくて戦意喪失する。
「……い、いや、だからってさあ……」
「消極的な言い訳はいいから。とりあえず、今度の週末ね。
秋元さんと出掛ける約束してみてよ」
「で、でも秋元さんにだって都合ってものが……」
「そんなの聞いてみないとわからないじゃない。
そうね、まずはそこから。週末の予定を聞いてみて」
「……」
「さっきのご飯の誘いだって、別に嫌な顔してなかったんだから」
(……それは佳奈美が誘ったからでしょうよ……)
こんな雰囲気の中では口には出せない反論を心の中で呟いて、気持ちを落ち着ける。
「連絡先を教え合った仲なら、予定聞くくらいどうってことないでしょ。
むしろ前振りとしてやっとくべき」
「それに、高畠さんとの都合がついたら、夕方から私たちと合流してご飯って流れもできるから。
はい、依音の今週の課題。秋山さんと連絡取って約束を取り付けること。以上」
きっぱりと言い切って、佳奈美はすっきりとした顔で紅茶の入った紙コップに口を付ける。
「ああ、言っとくけど」
「……まだあるの?」
「連絡とるのは早いうちにね。
秋元さんに他の約束が被らないとも限らないんだから」
「……はいはい、仕事終わってから……」
「てことで、スマホ出して」
「は?」
「ほら、まだ昼休み時間あるから、今のうちに送っといたら」
「い、いやいや、さすがに展開が早すぎるでしょ」
「何言ってんの、そうやって後回しにするから”忘れてた”ってことになるんじゃないの。
早めに送っといたら、相手にとっても考える時間できるから親切なんだよ」
「……はあ」
正論を繰り出され抵抗する気力もなくした私は、素直にスマホを取り出す。
「文面も私が考えたほうがいい?」
「……いえ、大丈夫です、センセイ」
佳奈美に見張られながら、渋々秋元さんの連絡先を呼び出す。
―――『今週末の予定は決まっていますか?』
思いついた文面を打ち込み、迷いの残る指先でえいっと送信した。
「……送りました、センセイ」
「よろしい」
「はぁ……」
佳奈美の怒涛の説得からわずか数分しか経っていないのに、
まるで一仕事終えたかのような疲労感に襲われる。
(佳奈美の勢いに押されたとはいえ、慣れないことしたもんだな)
「……昼休みなのに、めっちゃ疲れたんだけど。
これから午後の仕事が待ってると思うと、もうちょっと休ませて欲しいよ」
つい零すと、佳奈美もわざとらしく大きなため息をつく。
「それはこっちの台詞。なかなか動かないあんたを動かす方の身にもなってよね」
「……別に頼んでませんけど」
「何か言いましたか?」
「いえ、何でもないですセンセイ」
握っていたスマホで休みの残り時間を確認し、テーブルに開放する。
(コーヒー、おかわりしてデスクに持ち込もうかな)
脱力した身体を椅子に預け、コーヒーメーカーの方へ視線を向けたと同時に、
私のスマホがブルリと震えた。
(!!)
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