座敷わらしのプテロ

ゆまは なお

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「敏明、頼むからもう少し生気を分けてくれ」
 そう言って泣きそうな顔をする。
「え、でも、キスは嫌だ」
 怯む俺に男はすっと寄って来た。
 今、浮いた? 歩かずに移動したよな? マジで座敷わらし? 思いこみじゃなくて?
 パニックになる俺に男はさらに迫ってくる。

「涙でもいい」
「そ、そんな急に泣けないって」
「じゃあ精液でもいい」
「はああ?」
「敏明の体液が欲しいんだ」
「お前、祖母ちゃんにそんなことしてたの?」
「そんなわけないだろう。人の生気を食べていると言っただろう」
「だ、だったら俺がいればいいんじゃないか?」
「半年も飢えてて、もう限界なんだ」
 そう言いながら俺の首筋を撫でる。
 その手はひんやりしていて、本当に消えそうな感じだ。

 端正な顔が近づいてくる。半分やけになって俺は目を閉じた。座敷わらしか半信半疑だけど俺のせいなら仕方ないのか?
 ああもう、訳がわからん。
 触れた唇は冷たかった。舌で唇をなぞられてぞくりと背筋が震えた。
 嫌悪が恐怖か判断できない。遠慮なく口の中を舐められる。頬の内側や上顎、歯並びを確かめるように舌を回され、くすぐったくて身をよじった。

 いつの間にか男の腕は俺を抱きしめていて、体がひんやりと冷えていた。
 舌を絡め取られて、溢れそうになる唾液をすすられる。それが目的とはいえ、こんな深いキスは久しぶりでもぞもぞする。
 ずいぶん長い間、熱心に舐められて舌を吸われて息が上がる。
 なんだか気持ちがいい。

「も、いいだろ」
 身を引いたが男は俺の後頭部に手を添えて、まだと言うとまた唇を押しつけた。半年分だもんな。
 男のキスは巧みで頭がぼうっとする。
 いつの間に体が熱くなっていて、頬がほてっていた。
 やけに気持ちがいい。体を撫でる男の手は温かくなっている。
 ゆっくり床に押し倒された。

「敏明、やっぱり精液をもらっていいか?」
「は? ダメに決まってるだろ!」
「でもこれ、どうするんだ?」
 男がそこを撫でて初めて、勃起しているのに気がついた。

「え、なんでそんな」
 驚く俺に男は平然と言う。
「座敷わらしの体液は催淫効果があるらしい」
「いやいやいや、先に言えよ!」
「俺もいま初めて実感した」
「初めてだったって?」
「ああ。で、これを脱がせていいか?」
 ジーンズの前立てを開かれて俺は焦る。
「ダメだって!」
「こんなにおいしそうなのに、もらえないのか?」
 しゅんと悲しげにされると何だか罪悪感がわく。
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