1 / 46
第1章-1 祐樹の帰省
しおりを挟む
香港から帰国してしばらく経って、祐樹はみやげを持って実家を訪れた。
時間が空いたのは孝弘の出発まではなるべく彼と一緒にいたかったから、孝弘を見送ったあとにしようと帰省を後回しにしたせいだ。
孝弘が北京に発ったのは2日前。
まださびしく思うほど時間が過ぎたわけでもないのに、やはり気持ちがさびしくて、金曜の夜に実家に来た。
さみしがりの子供か、とじぶんでも思うが、孝弘が日本にいたあいだ週末はほぼべったり一緒に過ごしていたのだ。
あの北京出張の前にはひとりで過ごしていたはずなのに、どう過ごしていたのかさっぱり思い出せない。
かといって、今夜はだれかと飲みに行く気にもなれないし、お気に入りのバーに顔を出すのも煩わしくて、みやげを口実に実家に来たのだ。
ようするに、ひとりの週末がいやだったというわけだ。
あれこれあった北京出張のあとに1度顔を見せてから、ほぼ1か月ぶりの帰省だ。
「遅くなったけど香港みやげ。よかったら使って」
居間になっている和室で、母親に長男家族分もまとめてみやげのつまった袋をわたす。その袋の大きさに母親が目を丸くした。
「え、なんなの、こんなにたくさん。めずらしいわね、どうしたの?」
驚いた声でそういわれて、出張土産といえば帰りの空港で買った酒かマカダミアナッツチョコだったことを思い出す。
それすらも買ってこないというか、ほんの数日なら出張に行くことすら知らせないこともしばしばだった。そんな祐樹が大量のみやげの袋を持ってきたのだから、驚かれるのも無理はなかった。
「えー、いや。…仕事じゃない海外って初めてだったから、なんとなく?」
あわててごまかして「喉かわいたな」とキッチンに逃げこんだ。冷蔵庫からほうじ茶を出してごくごく飲む。慣れないことはするもんじゃないなとため息をついた。
時間が空いたのは孝弘の出発まではなるべく彼と一緒にいたかったから、孝弘を見送ったあとにしようと帰省を後回しにしたせいだ。
孝弘が北京に発ったのは2日前。
まださびしく思うほど時間が過ぎたわけでもないのに、やはり気持ちがさびしくて、金曜の夜に実家に来た。
さみしがりの子供か、とじぶんでも思うが、孝弘が日本にいたあいだ週末はほぼべったり一緒に過ごしていたのだ。
あの北京出張の前にはひとりで過ごしていたはずなのに、どう過ごしていたのかさっぱり思い出せない。
かといって、今夜はだれかと飲みに行く気にもなれないし、お気に入りのバーに顔を出すのも煩わしくて、みやげを口実に実家に来たのだ。
ようするに、ひとりの週末がいやだったというわけだ。
あれこれあった北京出張のあとに1度顔を見せてから、ほぼ1か月ぶりの帰省だ。
「遅くなったけど香港みやげ。よかったら使って」
居間になっている和室で、母親に長男家族分もまとめてみやげのつまった袋をわたす。その袋の大きさに母親が目を丸くした。
「え、なんなの、こんなにたくさん。めずらしいわね、どうしたの?」
驚いた声でそういわれて、出張土産といえば帰りの空港で買った酒かマカダミアナッツチョコだったことを思い出す。
それすらも買ってこないというか、ほんの数日なら出張に行くことすら知らせないこともしばしばだった。そんな祐樹が大量のみやげの袋を持ってきたのだから、驚かれるのも無理はなかった。
「えー、いや。…仕事じゃない海外って初めてだったから、なんとなく?」
あわててごまかして「喉かわいたな」とキッチンに逃げこんだ。冷蔵庫からほうじ茶を出してごくごく飲む。慣れないことはするもんじゃないなとため息をついた。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
あの日、北京の街角で4 大連デイズ
ゆまは なお
BL
『あの日、北京の街角で』続編。
先に『あの日、北京の街角で』をご覧くださいm(__)m
https://www.alphapolis.co.jp/novel/28475021/523219176
大連で始まる孝弘と祐樹の駐在員生活。
2人のラブラブな日常をお楽しみください。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
幼馴染は僕を選ばない。
佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。
僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。
僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。
好きだった。
好きだった。
好きだった。
離れることで断ち切った縁。
気付いた時に断ち切られていた縁。
辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる