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「まったく君は…」
 リカルドが大きく息をついた。

 加賀美はしてやったりと黒い目をきらめかせる。

「ドキドキしただろ?」
 今度は左手をテーブルの下に突っ込み、遠慮なくそこを確かめた。

 半ば勃ちあがったふくらみを愛おしげな手つきで撫でさする。

「ほら、興奮してる」

 これ以上はない魅惑的な笑みを浮かべて、まるで悪びれた様子もない。その唇が、舌がどんなふうに男を煽り立てるのか、一度味わったから知っている。
 
「頼むからこれ以上煽らないでくれ」
 額を押さえてリカルドは呻くように呟いた。

「何言ってるの、お楽しみはこれからだろ」
 リゾットを上品に口に運んで、加賀美はいかにも楽しげに笑う。

「まだ魚も肉もデザートもあるよ」
 食事の間じゅう、こんないたずらを続けるつもりなのか。

 リカルドは嘆息して、天井を見あげた。
 ずいぶんと刺激的なディナーになりそうだ。


 帰りの車で、船を下りるときに貰った包みをリカルドに差し出した。

「はい、これ」
「君のでしょう」

 一瞥したリカルドは受け取らない。

「チップ出したのリカルドだろ」
「掛けたアキトのものだよ」

 換金したチップは200万円近い金額になった。金の押し問答なんてスマートじゃないやり取りはしたくない。

 加賀美はうなずいて「じゃあ、これで今度デートをしよう」とにっこり笑った。

「それは楽しみだ」
 リカルドが鷹揚にうなずくのに、加賀美はいたずらっぽく囁く。

「次はもっと刺激的なことをしようか?」
「君といると落ち着いて食事もできないな」

「楽しんだくせに」
「そうだけどね」

 あの後、メインを食べる間じゅう、加賀美は器用な足でさんざんリカルドを焦らしたのだ。そして最後はテーブルの下に潜りこんで奉仕してくれた。

 リカルドは2度目の唇をじっくりと味わった。

 デザートを呼ぶのが少々遅くなったのはそういうわけだ。

「きれいな顔してこんなに性悪だとは思ってなかった」
 
 小悪魔の次は性悪と来た。

「でもホントは嫌いじゃないでしょ、こういうの」

 楽しげに笑う加賀美のネクタイを引き寄せて、リカルドは熱っぽく口づける。

「ああ。きれいで性悪でフェラが上手いなんて最高だな」
「お褒めに預かり恐悦至極」 

 澄ました顔で加賀美が微笑む。

「またね、リカルド」


 部屋に戻った加賀美はテーブルに金の入った封筒を置き、シャワーを浴びた。

 さあ、この金で何をして遊ぼうか。
 あぶく銭はそれらしくぱーっと使わないと。
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