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第一部 子育て同棲編

ゴミ、反抗をおぼえる。

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「あっ!」

 春太とテディが同時に叫ぶ。
 銀色の包み紙から出てきたのは、赤青黒それぞれの戦闘服を身につけた三人のヒーロー。
 紛れもない、シークレットのひとつだ。

「テディっ! ついにシークレットをひいたね!」
「~っ」

 春太が喜びの声を上げて、小さな体を抱きしめる。テディは感激のあまり声も出せずに震えていた。ぷるぷる、ぷるぷる、と腕の中で。

「た、宝物にしますっ」

 鼻息荒く頷いている。

「カバンにつける?」
「はいっ。お守りにします」

 テディはキラキラな瞳で喜んで、ぎゅうっと春太に抱きついた。
 テディは少食だ。だからお菓子の殆どは春太が食べていた。最近では、もうパッケージを見たくないと思っていたのだが、ついに努力が報われた気分だ。
 しかし、そんな喜びも夜になると薄れる。

「あっ、んぅ~ッ!」

 きゅうっとつま先が丸まる。強すぎる快感が過ぎ去るのを、息を詰めて待った。
 初めての夜に比べれば少しは慣れてきただろう。
 だがそれでも、あまりの気持ちよさに依存してしまいそうで怯えが生じる。

「……あの」

 いつもなら声をかけてこない春太を、訝しげにルークが振り返った。
 無言で続きを促される。春太は気だるい体を起こすと、ルークを見た。

「ここでこういうのするの辞めたいんだけど」

 春太は乱れた金髪を整えながら伝えた。

「なぜ?」
「リビングだといつテディが来るかわからないし」
「別に困ることなどないが」
「……」

 やっぱりなあ、と思った。家政婦をして三ヶ月が経つが、ルークがテディの様子を聞いてきたことは一度もない。
 それはテディもだ。

「俺はやだ。……子供に見せるとか絶対にいやだ」
「それだけか?」

 ルークの言葉に顔を上げる。

「他に理由は無いのか」

 ドキリとした。すぐに霧散した理由が、再び浮き上がってくる。
 リビングは、家族の象徴だ。
 皆が集まって、他愛のない話をする、神聖な場所。だから、そんな場所で浅ましい悦楽にふけるのが嫌だった。
 春太が口を閉ざしてしまうと、ルークが衣服を正して立ち上がる。
 結局聞いてもらえないのかと思ったとき、冷たい声が降ってきた。

「金曜の夜。私の寝室にこい」
「へっ」

 春太は間抜けな声をあげて、ルークの背中を見送った。
 それから血の提供はルークの寝室で行われた。ベッドに寝転ぶ春太を、ルークの綺麗な手と唇が高めていく。
 声を押し殺さずにすんだことで、前よりも敏感になった。それは、はからずともルークを喜ばせた。
「お前の血はうまい」
 獣のような目をしてルークは血を啜る。
 月光が彼にはよく似合っていた。




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