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三章
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しおりを挟む「これを見つけたのは俺だ」
「へー、だから俺のモノだとでも?」
「そうだ」
「子供か」
どうでもいいから離してください。
頭上で交わされる口喧嘩に、しおしおと小声でアダムが制止する。
ピタリと口を閉ざした二人は、真っ赤な顔をしているアダムを見下ろした。
「とりあえず部屋を変えるぞ」
「そうですね。……何見てるんですか、あなた達は仕事をしてください」
ノエがこちらを盗み見ていた部下たちに注意をする。むしろ仕事を邪魔したのはこちらなのでは?
なんてこと言えるわけもなく、とにかくこれでイサクから離れられると安堵したのも束の間。
腰から離れた腕が、今度はしっかりとアダムの手を握りしめて、再び顔が真っ赤に染まる。
「あ、あの……っ」
「なんだ?」
「……手、が」
「……」
伺うように見上げて訴えるが、イサクは不遜にそっぽを向いてしまった。じわじわと伝わるイサクの体温が、アダムのものと溶け合う。
あの時もこうしてずっとイサクが抱きしめてくれていた。
番を持つオメガにとって、他の誰かとの性行為は酷い倦怠感や吐き気を催す。だが、あの時のように緊迫した状況では、応急処置として番じゃないアルファがオメガを抱くことはままあることだった。
けれど、イサクはアダムを抱かなかった。
何時間もかけて丁寧にキスと愛撫だけで、アダムのヒートを鎮めてくれた。イサクの負担を考えれば、さっさと中に出してしまう方が早かったのに。
「……」
ズキズキと胸のどこかが痛む。
悲しいような、苦しいような、よく分からない小さな痛み。心を乱す何かが、繋がれた手から流れ込んでくるようで、手のひらの温度がやけに熱く感じた。
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