14 / 61
第九話 思わぬ来訪者
しおりを挟む
まだまだ梅雨の季節だが、今日は久々に晴れた。といっても束の間の晴れ、という感じだが。まだ木々は濡れているが、葉っぱに乗った滴は光に反射して輝いて見える。雨上がりの森の景色も、匂いも、空気も私の好物だ。せっかく晴れたので、久しぶりに家を出て散歩に出かけた。母も誘ったが、あまり気乗りしなかったらしく、結局ついてこなかった。玄関を出て、大きく深呼吸をする。遠くから鳥の囀る声がする。しばらく歩いていたら、何やら木の下に黒くて大きな物体が置いてある。少し近づいてみる。
そこには一人の男が蹲って何やらぶつぶつ言っている。ただ、声をかける勇気はなかったので少し離れたところから男を観察してみる。しばらくみていても男は蹲ったまま。やがて遠くの方で雷がなる。
「また雨が降るわね…」
そう思った私は意を決して男に近づく。
「あの…大丈夫ですか?」
そう言いかけようとした瞬間、男は大きな声で叫んだ。
「や、やめてくれ!ぼ、僕を食べてもお、美味しくないぞ!」
私は驚いた。蹲っていたのは若い青年だった。身に纏っている軍服はきっと王国軍のものだろう。しかし、顔は青白くなっていて、視線が定まってない。何か変なキノコでも食ったのだろうか。私は空を見上げる。時期にまた雨が降る。このまま放っておくのは…流石に酷だろう。
「大丈夫、私はあなたを食べたりしません。それより、時期に雨が降ります。体を冷やすのはよくないでしょうから、いったん家に来ませんか?」
青年は反抗すると思った。だって、私を人食いか何か勘違いしたのだから。しかし、予想に反して彼はすんなりついて来た。
家につきドアを開けると母が目を丸くして
「あら?どちら様?」
当然の反応である。
そういえば、私はこの人から名前を聞いてない。多分軍の人間だろうけど…
「道端で蹲っていて、雨も降りそうだったので一度連れて帰ってきました」
そして母に小声で
「多分、毒キノコ食べたんだと思います。ほら、顔も青いし、幻覚を見ていたっぽいので…」
「えぇ、私もそう思うわ。あっ、でも解毒剤なら多分すぐ作れるわ」
そう言ってポットにな何個かものを入れて作り出した。時間にしておよそ10分。できた薬を彼にあげると少し落ち着いたようだ。
「助けてもらって、すまない」
あまりにも申し訳なさそうな顔をするのでなんだかこちらが申し訳なくなってしまう。
「ところで、あなたは?」
「私はテイン王国軍所属のベール准尉です」
母はなぜか一瞬を顔を顰めた。
「なるほどね…軍の方ですか。ずっと立たせるのもアレなので、そこに座ってください」
「いやいや、私は結構です」
彼は謙遜する。しかし、私も
「せっかくなのでゆっくりしてください」
というと彼は
「な、ならばお言葉に甘えて…」
と椅子に腰掛けてくれた。
母が私に
「珈…いえ、紅茶を作ってもらえませんか」
と言われたので私は
「もちろんです、お母様」
と言って私は人数分の紅茶を作ろうとキッチンに向かった。紅茶なんて久しぶりだ。しかし、生憎茶葉を切らしていた。茶葉ならきっと外の倉庫にあるだろう。
「お母様。倉庫から茶葉をとてきますね」
「あぁ、いってらっしゃい」
私は外に出る。外はかなり強く雨が降っている。私は傘をさして家の裏にある物置倉庫に向かった。倉庫自体はかなり古い小さな木のの小屋。進む度に床板がミシミシと軋む。中の蝋燭に火を灯す。あまり整理もしてないので、なかなか目当てのものが見つからない。かなり散らかっていて、正直先に進むのも一苦労だ。足の踏み場を探す。頑張って奥まで進んで、ようやく茶葉が入った小包を発見した。が、自分の身長だと微妙に届かない。私は精一杯背伸びをして取ろうとする。届いた瞬間バランスを崩してしまい、他のものもバラバラと落ちてきた。幸い怪我はしなかったが、ここの整理をしなくてはと思った。
私は立ち上がろうと腰を上げる。すると頭の上にあった何かが落ちてきた。
一枚の紙切れ。写真だ。
見た感じまあまあ古い。不鮮明だが三人…いや四人写っている。左に私の母。その隣の人達は…誰だろうか。私には分からなかった。そしてこの二人はひとりの赤子を抱いている。みな笑顔で撮れていていい写真だなと思った。もちろん赤子の顔はよく見えないが。
ハッ。いけない。早く戻って紅茶を作らねば。私は茶葉が入った小包と写真を持って倉庫を後にした。写真のことはベール少尉が帰った後にでも聞けばいい。とにかく今は早く戻ろう。私は小走りで家に向かった。
そこには一人の男が蹲って何やらぶつぶつ言っている。ただ、声をかける勇気はなかったので少し離れたところから男を観察してみる。しばらくみていても男は蹲ったまま。やがて遠くの方で雷がなる。
「また雨が降るわね…」
そう思った私は意を決して男に近づく。
「あの…大丈夫ですか?」
そう言いかけようとした瞬間、男は大きな声で叫んだ。
「や、やめてくれ!ぼ、僕を食べてもお、美味しくないぞ!」
私は驚いた。蹲っていたのは若い青年だった。身に纏っている軍服はきっと王国軍のものだろう。しかし、顔は青白くなっていて、視線が定まってない。何か変なキノコでも食ったのだろうか。私は空を見上げる。時期にまた雨が降る。このまま放っておくのは…流石に酷だろう。
「大丈夫、私はあなたを食べたりしません。それより、時期に雨が降ります。体を冷やすのはよくないでしょうから、いったん家に来ませんか?」
青年は反抗すると思った。だって、私を人食いか何か勘違いしたのだから。しかし、予想に反して彼はすんなりついて来た。
家につきドアを開けると母が目を丸くして
「あら?どちら様?」
当然の反応である。
そういえば、私はこの人から名前を聞いてない。多分軍の人間だろうけど…
「道端で蹲っていて、雨も降りそうだったので一度連れて帰ってきました」
そして母に小声で
「多分、毒キノコ食べたんだと思います。ほら、顔も青いし、幻覚を見ていたっぽいので…」
「えぇ、私もそう思うわ。あっ、でも解毒剤なら多分すぐ作れるわ」
そう言ってポットにな何個かものを入れて作り出した。時間にしておよそ10分。できた薬を彼にあげると少し落ち着いたようだ。
「助けてもらって、すまない」
あまりにも申し訳なさそうな顔をするのでなんだかこちらが申し訳なくなってしまう。
「ところで、あなたは?」
「私はテイン王国軍所属のベール准尉です」
母はなぜか一瞬を顔を顰めた。
「なるほどね…軍の方ですか。ずっと立たせるのもアレなので、そこに座ってください」
「いやいや、私は結構です」
彼は謙遜する。しかし、私も
「せっかくなのでゆっくりしてください」
というと彼は
「な、ならばお言葉に甘えて…」
と椅子に腰掛けてくれた。
母が私に
「珈…いえ、紅茶を作ってもらえませんか」
と言われたので私は
「もちろんです、お母様」
と言って私は人数分の紅茶を作ろうとキッチンに向かった。紅茶なんて久しぶりだ。しかし、生憎茶葉を切らしていた。茶葉ならきっと外の倉庫にあるだろう。
「お母様。倉庫から茶葉をとてきますね」
「あぁ、いってらっしゃい」
私は外に出る。外はかなり強く雨が降っている。私は傘をさして家の裏にある物置倉庫に向かった。倉庫自体はかなり古い小さな木のの小屋。進む度に床板がミシミシと軋む。中の蝋燭に火を灯す。あまり整理もしてないので、なかなか目当てのものが見つからない。かなり散らかっていて、正直先に進むのも一苦労だ。足の踏み場を探す。頑張って奥まで進んで、ようやく茶葉が入った小包を発見した。が、自分の身長だと微妙に届かない。私は精一杯背伸びをして取ろうとする。届いた瞬間バランスを崩してしまい、他のものもバラバラと落ちてきた。幸い怪我はしなかったが、ここの整理をしなくてはと思った。
私は立ち上がろうと腰を上げる。すると頭の上にあった何かが落ちてきた。
一枚の紙切れ。写真だ。
見た感じまあまあ古い。不鮮明だが三人…いや四人写っている。左に私の母。その隣の人達は…誰だろうか。私には分からなかった。そしてこの二人はひとりの赤子を抱いている。みな笑顔で撮れていていい写真だなと思った。もちろん赤子の顔はよく見えないが。
ハッ。いけない。早く戻って紅茶を作らねば。私は茶葉が入った小包と写真を持って倉庫を後にした。写真のことはベール少尉が帰った後にでも聞けばいい。とにかく今は早く戻ろう。私は小走りで家に向かった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる