6人目の魔女

Yakijyake

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第九話 思わぬ来訪者

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まだまだ梅雨の季節だが、今日は久々に晴れた。といっても束の間の晴れ、という感じだが。まだ木々は濡れているが、葉っぱに乗った滴は光に反射して輝いて見える。雨上がりの森の景色も、匂いも、空気も私の好物だ。せっかく晴れたので、久しぶりに家を出て散歩に出かけた。母も誘ったが、あまり気乗りしなかったらしく、結局ついてこなかった。玄関を出て、大きく深呼吸をする。遠くから鳥の囀る声がする。しばらく歩いていたら、何やら木の下に黒くて大きな物体が置いてある。少し近づいてみる。
そこには一人の男が蹲って何やらぶつぶつ言っている。ただ、声をかける勇気はなかったので少し離れたところから男を観察してみる。しばらくみていても男は蹲ったまま。やがて遠くの方で雷がなる。
「また雨が降るわね…」
そう思った私は意を決して男に近づく。
「あの…大丈夫ですか?」
そう言いかけようとした瞬間、男は大きな声で叫んだ。
「や、やめてくれ!ぼ、僕を食べてもお、美味しくないぞ!」
私は驚いた。蹲っていたのは若い青年だった。身に纏っている軍服はきっと王国軍のものだろう。しかし、顔は青白くなっていて、視線が定まってない。何か変なキノコでも食ったのだろうか。私は空を見上げる。時期にまた雨が降る。このまま放っておくのは…流石に酷だろう。
「大丈夫、私はあなたを食べたりしません。それより、時期に雨が降ります。体を冷やすのはよくないでしょうから、いったん家に来ませんか?」
青年は反抗すると思った。だって、私を人食いか何か勘違いしたのだから。しかし、予想に反して彼はすんなりついて来た。
家につきドアを開けると母が目を丸くして
「あら?どちら様?」
当然の反応である。
そういえば、私はこの人から名前を聞いてない。多分軍の人間だろうけど…
「道端で蹲っていて、雨も降りそうだったので一度連れて帰ってきました」
そして母に小声で
「多分、毒キノコ食べたんだと思います。ほら、顔も青いし、幻覚を見ていたっぽいので…」
「えぇ、私もそう思うわ。あっ、でも解毒剤なら多分すぐ作れるわ」
そう言ってポットにな何個かものを入れて作り出した。時間にしておよそ10分。できた薬を彼にあげると少し落ち着いたようだ。
「助けてもらって、すまない」
あまりにも申し訳なさそうな顔をするのでなんだかこちらが申し訳なくなってしまう。
「ところで、あなたは?」
「私はテイン王国軍所属のベール准尉です」
母はなぜか一瞬を顔を顰めた。
「なるほどね…軍の方ですか。ずっと立たせるのもアレなので、そこに座ってください」
「いやいや、私は結構です」
彼は謙遜する。しかし、私も
「せっかくなのでゆっくりしてください」
というと彼は
「な、ならばお言葉に甘えて…」
と椅子に腰掛けてくれた。
母が私に
「珈…いえ、紅茶を作ってもらえませんか」
と言われたので私は
「もちろんです、お母様」
と言って私は人数分の紅茶を作ろうとキッチンに向かった。紅茶なんて久しぶりだ。しかし、生憎茶葉を切らしていた。茶葉ならきっと外の倉庫にあるだろう。
「お母様。倉庫から茶葉をとてきますね」
「あぁ、いってらっしゃい」
私は外に出る。外はかなり強く雨が降っている。私は傘をさして家の裏にある物置倉庫に向かった。倉庫自体はかなり古い小さな木のの小屋。進む度に床板がミシミシと軋む。中の蝋燭に火を灯す。あまり整理もしてないので、なかなか目当てのものが見つからない。かなり散らかっていて、正直先に進むのも一苦労だ。足の踏み場を探す。頑張って奥まで進んで、ようやく茶葉が入った小包を発見した。が、自分の身長だと微妙に届かない。私は精一杯背伸びをして取ろうとする。届いた瞬間バランスを崩してしまい、他のものもバラバラと落ちてきた。幸い怪我はしなかったが、ここの整理をしなくてはと思った。
私は立ち上がろうと腰を上げる。すると頭の上にあった何かが落ちてきた。
一枚の紙切れ。写真だ。
見た感じまあまあ古い。不鮮明だが三人…いや四人写っている。左に私の母。その隣の人達は…誰だろうか。私には分からなかった。そしてこの二人はひとりの赤子を抱いている。みな笑顔で撮れていていい写真だなと思った。もちろん赤子の顔はよく見えないが。
ハッ。いけない。早く戻って紅茶を作らねば。私は茶葉が入った小包と写真を持って倉庫を後にした。写真のことはベール少尉が帰った後にでも聞けばいい。とにかく今は早く戻ろう。私は小走りで家に向かった。
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