58 / 73
世界樹の子 前編
その強さは何のために
しおりを挟む
町にやってきたヒメに武器を構える者は皆殺され遂に誰も歯向かうことは無くなった。
しかしライナの親友となったヒメの住む場所は無く、ライナの家に居候することとなった。
ライナが両親に相談するも当然反対。
しかしヒメが家に入ってくると掌を反し許可を得ることができた。
それからライナが学校から帰ってくるとどこかで奪ってきたであろう武器をライナに持たせては扱い方を時に厳しく、優しく教えた。
そんなある日、ライナが服を汚して帰ってきた。
食べ物をこぼしたとヒメは思ったが背中にも同じようなシミができており、ライナに聞いても「知らなかった」と言われる。
まさかとは思いライナの両親に尋ねても「あの子は何も言わない。忙しくて聞けない」。
ヒメに「それより今日も武器の扱いを教えて」と袖を引っ張られるとヒメは振りほどいた。
「ねぇ、学校どこ」
「本屋のすぐ近くだけど…」
「なら明日連れてって」
ヒメが受けている授業に興味があるのだろうか。
そんなことをライナは思っていた。
冷たくされた理由も分からず普段より厳しい練習を受けて次の日を迎える。
朝、いつもは昼まで寝ているヒメがライナより早く起きていた。
いつでも準備はできていると腰に刀携えて。
「学校、危険なところじゃないよ?」
「ウチにとってはね」
言っている意味が分からなかった。
何をするつもりなのだろう、そんなことを考えながら学校に向かうライナ。
学校に入るとヒメはライナと別れ、「教員室」と書かれた看板の立てられた部屋に入っていった。
不安になりながらも教室へ入るライナ。
その頃、ヒメは入るなり自分に怯える教員五人に誰が校長なのかと聞く。
すると白髪の老人がゆっくりと手を挙げた。
「ライナって知ってる?」
「はい…大変成績のいい生徒ということで有名…」
「ウチさ、ライナの家に居候させてもらってるんだ。それで昨日ライナが服を汚して帰ってきたんだよ。それも前だけじゃなくて後ろまで」
「そうなのですか…」
他人事のように言う校長に腹が立ち、ヒメは正面から顔を殴る。
呻く校長の胸ぐらを掴み、周りの教員の鼓膜が破れるのではないかというほど「ふざけんな!」と叫んだ。
「てめぇら普段から何見てんだ。文字か?自分の字が間違ってないかだけ確認するためだけに目玉使ってんのか?」
次は自分の番なのかと察したのだろう。
逃げ出す他の教員に「逃げたら殺す!」と一喝するとその場に立ち止まる。
「子供っていうのは下手すれば大人より残酷なんだ。ちょっと悪いことしても『子供のしたことだから』と親に、周りに擁護されるから、周りが便乗しやすいからいじめは簡単にできる」
「そ…それが分かっているのならば止めようがないではありませんか」
「ちっ…ここでもこんなもんなのか」
校長の体を床に置いて安心した校長の顔を踏み潰すとヒメは教員室から出て行った。
それからライナのいる教室を探しにそれらしき扉を一つ一つ開けていき、部屋の隅の席に座って本を読んでいるライナを見つけた。
先生が来たのかと顔を上げるライナに絵がをを見せるヒメ。
他の生徒が「新入生?」「あの子…」と様々な反応を見せる中、ヒメは「うるさい!」と自分より大きい教卓を蹴り飛ばした。
「私の親友であるライナがいじめられている。今なら片目潰すだけで許すからそいつは前に出ろ。誰も出ない場合は片端から両目を潰す」
鞘から抜いた刀を床に刺し、誰かが前に出てくるのを待つ。
するとここの生徒がいかに腐っているかがよく分かった。
押し付け合いを始める者から「自分は悪くない」とヒメに訴えだす者、ライナへ「私たちは友達だよね」と言いだす者。
ライナを除く二十人以上いる生徒が「自分が危険な目にあっている」と気づいて罪を押し付けあっている。
ヒメには正直誰が前に出てくるかなど期待はしていなかった。
主犯は誰なのか、実行犯が誰なのか、共謀はあったのか、それすらどうでもよかった。
ヒメは最初から親共々殺す気でいたのだ。
ヒメが床から刀を引き抜くと教室内は悲鳴で満ち溢れ、逃げようとする生徒は容赦なく切り殺していく。
「一つ一人も残さずに~二つ決して躊躇なく~三つ全てはこの身のために~」
子守唄でも歌うかのように教室を赤く染め上げるヒメ。
ライナにとって何より怖かったのが誰が誰なのか分かるよう殺した者の顔を傷一つつけていないことだった。
悲鳴はなくなり歌声が残った教室。
刀を振って血を落とし、鞘に戻したヒメは扉を開けてライナへ「こっちにこい」と手招きをする。
散らばっている同級生「だったもの」を見て吐いてしまうライナに近づいて背中をさすると背負って教室を出た。
ライナに水を飲ませて家に帰し、さっきまでいた教室に向かって歩く教員を呼び止めた。
「ライナの担任?」
「そうですけど…」
「生徒全員の親のいる場所に案内して」
「しかし授業があるので…」
「ライナ以外全員殺した。面倒だけど一つずつ持って行って親に見せれば嫌でも反応するでしょ」
教員は口を覆った。
だが疑うことは無かった。
校長を殴り蹴りしたのだ、よく見れば返り血も見えるので嘘を言っていない。
扉の下から漏れ出した血を見て既に吐きそうになっていたがヒメが扉を開けると自分が教えていた生徒たちが血に染まっていたのだ。
ほとんどの生徒は上半身が切られ、中には斬首刑のように首だけ残っている生徒もいる。
「おえぇ!」
「汚いな。それでも生徒にはかけないんだからそこは褒めるべきなのかな」
「強さはこんな風に使うものではない…守るために使うのではないのですか!」
「ライナを守るために使った。えーっと最初はこれでいいか」
雑に置いてあった首の髪を持ち上げる。
「子供をこれ扱い…子供は残酷になれると言っていましたがあなたが一番残酷ですよ」
「いじめが起きていたにも関わらず見向きもしなかったやつがそんな台詞吐くな。処分もするんだし早く連れてって」
教員は苦虫をかみ潰したような表情をしてヒメを案内するのだった。
全ては自分が殺されたくないがために。
しかしライナの親友となったヒメの住む場所は無く、ライナの家に居候することとなった。
ライナが両親に相談するも当然反対。
しかしヒメが家に入ってくると掌を反し許可を得ることができた。
それからライナが学校から帰ってくるとどこかで奪ってきたであろう武器をライナに持たせては扱い方を時に厳しく、優しく教えた。
そんなある日、ライナが服を汚して帰ってきた。
食べ物をこぼしたとヒメは思ったが背中にも同じようなシミができており、ライナに聞いても「知らなかった」と言われる。
まさかとは思いライナの両親に尋ねても「あの子は何も言わない。忙しくて聞けない」。
ヒメに「それより今日も武器の扱いを教えて」と袖を引っ張られるとヒメは振りほどいた。
「ねぇ、学校どこ」
「本屋のすぐ近くだけど…」
「なら明日連れてって」
ヒメが受けている授業に興味があるのだろうか。
そんなことをライナは思っていた。
冷たくされた理由も分からず普段より厳しい練習を受けて次の日を迎える。
朝、いつもは昼まで寝ているヒメがライナより早く起きていた。
いつでも準備はできていると腰に刀携えて。
「学校、危険なところじゃないよ?」
「ウチにとってはね」
言っている意味が分からなかった。
何をするつもりなのだろう、そんなことを考えながら学校に向かうライナ。
学校に入るとヒメはライナと別れ、「教員室」と書かれた看板の立てられた部屋に入っていった。
不安になりながらも教室へ入るライナ。
その頃、ヒメは入るなり自分に怯える教員五人に誰が校長なのかと聞く。
すると白髪の老人がゆっくりと手を挙げた。
「ライナって知ってる?」
「はい…大変成績のいい生徒ということで有名…」
「ウチさ、ライナの家に居候させてもらってるんだ。それで昨日ライナが服を汚して帰ってきたんだよ。それも前だけじゃなくて後ろまで」
「そうなのですか…」
他人事のように言う校長に腹が立ち、ヒメは正面から顔を殴る。
呻く校長の胸ぐらを掴み、周りの教員の鼓膜が破れるのではないかというほど「ふざけんな!」と叫んだ。
「てめぇら普段から何見てんだ。文字か?自分の字が間違ってないかだけ確認するためだけに目玉使ってんのか?」
次は自分の番なのかと察したのだろう。
逃げ出す他の教員に「逃げたら殺す!」と一喝するとその場に立ち止まる。
「子供っていうのは下手すれば大人より残酷なんだ。ちょっと悪いことしても『子供のしたことだから』と親に、周りに擁護されるから、周りが便乗しやすいからいじめは簡単にできる」
「そ…それが分かっているのならば止めようがないではありませんか」
「ちっ…ここでもこんなもんなのか」
校長の体を床に置いて安心した校長の顔を踏み潰すとヒメは教員室から出て行った。
それからライナのいる教室を探しにそれらしき扉を一つ一つ開けていき、部屋の隅の席に座って本を読んでいるライナを見つけた。
先生が来たのかと顔を上げるライナに絵がをを見せるヒメ。
他の生徒が「新入生?」「あの子…」と様々な反応を見せる中、ヒメは「うるさい!」と自分より大きい教卓を蹴り飛ばした。
「私の親友であるライナがいじめられている。今なら片目潰すだけで許すからそいつは前に出ろ。誰も出ない場合は片端から両目を潰す」
鞘から抜いた刀を床に刺し、誰かが前に出てくるのを待つ。
するとここの生徒がいかに腐っているかがよく分かった。
押し付け合いを始める者から「自分は悪くない」とヒメに訴えだす者、ライナへ「私たちは友達だよね」と言いだす者。
ライナを除く二十人以上いる生徒が「自分が危険な目にあっている」と気づいて罪を押し付けあっている。
ヒメには正直誰が前に出てくるかなど期待はしていなかった。
主犯は誰なのか、実行犯が誰なのか、共謀はあったのか、それすらどうでもよかった。
ヒメは最初から親共々殺す気でいたのだ。
ヒメが床から刀を引き抜くと教室内は悲鳴で満ち溢れ、逃げようとする生徒は容赦なく切り殺していく。
「一つ一人も残さずに~二つ決して躊躇なく~三つ全てはこの身のために~」
子守唄でも歌うかのように教室を赤く染め上げるヒメ。
ライナにとって何より怖かったのが誰が誰なのか分かるよう殺した者の顔を傷一つつけていないことだった。
悲鳴はなくなり歌声が残った教室。
刀を振って血を落とし、鞘に戻したヒメは扉を開けてライナへ「こっちにこい」と手招きをする。
散らばっている同級生「だったもの」を見て吐いてしまうライナに近づいて背中をさすると背負って教室を出た。
ライナに水を飲ませて家に帰し、さっきまでいた教室に向かって歩く教員を呼び止めた。
「ライナの担任?」
「そうですけど…」
「生徒全員の親のいる場所に案内して」
「しかし授業があるので…」
「ライナ以外全員殺した。面倒だけど一つずつ持って行って親に見せれば嫌でも反応するでしょ」
教員は口を覆った。
だが疑うことは無かった。
校長を殴り蹴りしたのだ、よく見れば返り血も見えるので嘘を言っていない。
扉の下から漏れ出した血を見て既に吐きそうになっていたがヒメが扉を開けると自分が教えていた生徒たちが血に染まっていたのだ。
ほとんどの生徒は上半身が切られ、中には斬首刑のように首だけ残っている生徒もいる。
「おえぇ!」
「汚いな。それでも生徒にはかけないんだからそこは褒めるべきなのかな」
「強さはこんな風に使うものではない…守るために使うのではないのですか!」
「ライナを守るために使った。えーっと最初はこれでいいか」
雑に置いてあった首の髪を持ち上げる。
「子供をこれ扱い…子供は残酷になれると言っていましたがあなたが一番残酷ですよ」
「いじめが起きていたにも関わらず見向きもしなかったやつがそんな台詞吐くな。処分もするんだし早く連れてって」
教員は苦虫をかみ潰したような表情をしてヒメを案内するのだった。
全ては自分が殺されたくないがために。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる