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世界樹の子 前編
問題解決
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リトスの故郷である村に入った一行はリトス以外村長の村に通され、リトスはストロと村の外に出ていた。
ストロは何故自分と二人きりになろうとしたのか理解しておらず、もしかしたら自分のことを好きになったのかとリトスに近づくと刃を向けられ距離を置く。
「どうして今になって帰ってきたんだ?お仲間なんて連れてさ」
「とある人を探しに来たの。私を魔王を倒しに旅に出させたやつを」
リトスがストロに顔を向けるとわずかに顔を強張らせる。
あえて「お前が犯人だろう」とは言わず自白させようとしたがストロは「何を言ってるんだ」と返す。
ストロが顔を逸らしたのをリトスからは見えていなかったが声に動揺があったのは隠しきれておらず、リトスは武器をストロの死もとに投げつけ刃は地面に刺さる。
「うおっ!」
「正直に答えなさい。こっちは魔王の部下に何度か殺されかけてるの」
もう一本の武器を片手に持ち「今度は当てる」と構えるリトス。
するとストロは村の中へと逃げてしまい、咄嗟に投げたリトスの武器はストロのふくらはぎへと刺さった。
「あがぁぁぁ…」
貫通こそしていないものの深く刺さった武器を抜こうと倒れているストロ。
走らなくても追いつけるため地面に刺さった武器を回収してから歩いていく。
その時リトスにあった感情は怒りでも憎しみでもなく殺意。
リトスが問いかけた時自白して謝ってくれたのならここまでしなかっただろう。
だが倒れているのは跪くことも、頭を下げることもせずただ逃げた。
「抜いてあげるよ」
野菜を切るように武器を引き抜くリトス。
「っがぁ!おまえ…こんなことしていいと思ってるのか…」
「いいんじゃない?本当ならあんたが自白して謝って終わりのつもりだったんだけどそうはならなかったでしょ」
杖でもう片方の足を探り、抵抗されると武器が刺さっていたふくらはぎを強く突く。
そしてもう片方の足に今度は投げず自分の手で刺した。
「いっ…あぁぁぁ!」
「痛いでしょ?でも私もっと痛い思いしてるんだよね~体の中から燃えるような痛みとか味わったことないでしょ?」
武器を回転させてから引き抜き武器についた血を払う。
悲鳴を聞いた村人と隆達が集まってきてしまい早々に殺そうとするがラルアが出した枝に腕を止められてしまう。
「離して」
(まだ離せない。リトス、申し訳ないけどついさっきまで君の心を読んでいたからまずはそれを皆に話してくれないか?)
「…そうだね」
リトスは順を追って話していった。
まずはどうして魔王が侵攻したことが嘘だったことに気づいたのか。
どうして隆達に黙っていたのか。
「…マジかよ。リトスお前魔王と繋がってたのか」
「敵ではないと知ったのは割と最近だけどね。それでもまだ皆と旅をしたいから知らないふりをしてたんだけどそうはいかなくなった」
「死の街に近づいたからでござるか?」
「それもある。けど魔王から真相も知らずに死ぬかもしれない戦いに挑んでも嫌だろうって言われたから」
「確かにもやもやしたまま勝っても負けても悔いが残りますからね。ですが魔王が敵ではないと分かっていたのなら魔王もこちらの前に出て説明することができましたな」
「魔王は私たちと戦いたいらしいの。しかも数十年かけて」
ため息交じりに話すリトス。
話は終わったとリトスは這って逃げようとするストロの背中に腰掛ける。
「リトスちゃん、同族殺しは…」
「追放でしょ。もうここに帰るつもりないし皆私がここに帰ってくると思ってなかったから私が帰ってきても何も言わないしお母さんに至ってはここにいない。こうなると村にいる皆が私を追い出そうと嘘をついてたんじゃないかって思えてくる」
「そうだとしたら俺が呼び出されたのが言い訳の一つにしかならなくなるだろ…」
「実際そうなんだ…」
「は?」
「おいストロ!」
「リトス、お前が病気を患ってから狩りに行けなくなったな。それで元々家事もしなかったから村のやつらは疎ましく思ってたんだ」
「リトスちゃん!ストロの言っていることは嘘だ!信じるんじゃない!」
嘘をついているのは村長の方だった。
リトスは村長の叫びを無視してストロの話を聞き続ける。
「それで俺に話が持ち掛けられたんだ…よく狩りに出かけるお前なら村の外の情報を入れても疑われないだろうとな」
「へぇ…誰に言われたの?」
「そこで叫んでいるじいさんだ」
「嘘だ!そいつの言うことは嘘だぞリトスちゃん!」
「黙らせて」
指示を出すとラルアは村長の口に枝を巻き付ける。
「それで、私から逃げた理由は?」
「俺が嘘を言ったことには変わりないだろう…」
本当のことを言えば今度は自分が村を出ていかなければいけなくなってしまう。
エルフは他の種族との交流には消極的でどの村や町にいってもろくな扱いがされないためエルフにとって村の追放は死を意味しているようなものだった。
だからあの場でストロは逃げなければいけなかった。
「…さて。行こっか」
腰を上げて村を出ようとするリトス。
(村長はどうするんだい?)
「吸収しちゃっていいよ」
ラルアが頷くと村長は数秒でミイラ化してしまい、亡骸をその場に捨てた。
「なあリトス。そういえば魔王を倒せる剣はないのか?」
「ごめん。ない」
(本当にあると思ってたんだ)
「止まれ!これだけのことをしておいて生きたまま帰れると思っているのか!」
弓を構えてリトスだけを狙う村人たち。
「てめえらどの口が…」
「どの口が言うておるのかの?」
どこからか声がすると村人たちが構えていた弓は腕ごと吹き飛び、その前に亜空間から魔王が現れた。
「解決ができてよかったのリトス。これで惜しみなく殺しあうことができて妾は嬉しいぞ!」
魔王が腕を振っただけで周りの家が燃え始め、亜空間から取り出した刃の燃えている剣と電流の走った斧を持ち隆の方へと向ける。
「前会った時は名乗っておらなくて悪かったの。妾は魔王ティアマト!アスモディアン最強にしてその王じゃ!」
ストロは何故自分と二人きりになろうとしたのか理解しておらず、もしかしたら自分のことを好きになったのかとリトスに近づくと刃を向けられ距離を置く。
「どうして今になって帰ってきたんだ?お仲間なんて連れてさ」
「とある人を探しに来たの。私を魔王を倒しに旅に出させたやつを」
リトスがストロに顔を向けるとわずかに顔を強張らせる。
あえて「お前が犯人だろう」とは言わず自白させようとしたがストロは「何を言ってるんだ」と返す。
ストロが顔を逸らしたのをリトスからは見えていなかったが声に動揺があったのは隠しきれておらず、リトスは武器をストロの死もとに投げつけ刃は地面に刺さる。
「うおっ!」
「正直に答えなさい。こっちは魔王の部下に何度か殺されかけてるの」
もう一本の武器を片手に持ち「今度は当てる」と構えるリトス。
するとストロは村の中へと逃げてしまい、咄嗟に投げたリトスの武器はストロのふくらはぎへと刺さった。
「あがぁぁぁ…」
貫通こそしていないものの深く刺さった武器を抜こうと倒れているストロ。
走らなくても追いつけるため地面に刺さった武器を回収してから歩いていく。
その時リトスにあった感情は怒りでも憎しみでもなく殺意。
リトスが問いかけた時自白して謝ってくれたのならここまでしなかっただろう。
だが倒れているのは跪くことも、頭を下げることもせずただ逃げた。
「抜いてあげるよ」
野菜を切るように武器を引き抜くリトス。
「っがぁ!おまえ…こんなことしていいと思ってるのか…」
「いいんじゃない?本当ならあんたが自白して謝って終わりのつもりだったんだけどそうはならなかったでしょ」
杖でもう片方の足を探り、抵抗されると武器が刺さっていたふくらはぎを強く突く。
そしてもう片方の足に今度は投げず自分の手で刺した。
「いっ…あぁぁぁ!」
「痛いでしょ?でも私もっと痛い思いしてるんだよね~体の中から燃えるような痛みとか味わったことないでしょ?」
武器を回転させてから引き抜き武器についた血を払う。
悲鳴を聞いた村人と隆達が集まってきてしまい早々に殺そうとするがラルアが出した枝に腕を止められてしまう。
「離して」
(まだ離せない。リトス、申し訳ないけどついさっきまで君の心を読んでいたからまずはそれを皆に話してくれないか?)
「…そうだね」
リトスは順を追って話していった。
まずはどうして魔王が侵攻したことが嘘だったことに気づいたのか。
どうして隆達に黙っていたのか。
「…マジかよ。リトスお前魔王と繋がってたのか」
「敵ではないと知ったのは割と最近だけどね。それでもまだ皆と旅をしたいから知らないふりをしてたんだけどそうはいかなくなった」
「死の街に近づいたからでござるか?」
「それもある。けど魔王から真相も知らずに死ぬかもしれない戦いに挑んでも嫌だろうって言われたから」
「確かにもやもやしたまま勝っても負けても悔いが残りますからね。ですが魔王が敵ではないと分かっていたのなら魔王もこちらの前に出て説明することができましたな」
「魔王は私たちと戦いたいらしいの。しかも数十年かけて」
ため息交じりに話すリトス。
話は終わったとリトスは這って逃げようとするストロの背中に腰掛ける。
「リトスちゃん、同族殺しは…」
「追放でしょ。もうここに帰るつもりないし皆私がここに帰ってくると思ってなかったから私が帰ってきても何も言わないしお母さんに至ってはここにいない。こうなると村にいる皆が私を追い出そうと嘘をついてたんじゃないかって思えてくる」
「そうだとしたら俺が呼び出されたのが言い訳の一つにしかならなくなるだろ…」
「実際そうなんだ…」
「は?」
「おいストロ!」
「リトス、お前が病気を患ってから狩りに行けなくなったな。それで元々家事もしなかったから村のやつらは疎ましく思ってたんだ」
「リトスちゃん!ストロの言っていることは嘘だ!信じるんじゃない!」
嘘をついているのは村長の方だった。
リトスは村長の叫びを無視してストロの話を聞き続ける。
「それで俺に話が持ち掛けられたんだ…よく狩りに出かけるお前なら村の外の情報を入れても疑われないだろうとな」
「へぇ…誰に言われたの?」
「そこで叫んでいるじいさんだ」
「嘘だ!そいつの言うことは嘘だぞリトスちゃん!」
「黙らせて」
指示を出すとラルアは村長の口に枝を巻き付ける。
「それで、私から逃げた理由は?」
「俺が嘘を言ったことには変わりないだろう…」
本当のことを言えば今度は自分が村を出ていかなければいけなくなってしまう。
エルフは他の種族との交流には消極的でどの村や町にいってもろくな扱いがされないためエルフにとって村の追放は死を意味しているようなものだった。
だからあの場でストロは逃げなければいけなかった。
「…さて。行こっか」
腰を上げて村を出ようとするリトス。
(村長はどうするんだい?)
「吸収しちゃっていいよ」
ラルアが頷くと村長は数秒でミイラ化してしまい、亡骸をその場に捨てた。
「なあリトス。そういえば魔王を倒せる剣はないのか?」
「ごめん。ない」
(本当にあると思ってたんだ)
「止まれ!これだけのことをしておいて生きたまま帰れると思っているのか!」
弓を構えてリトスだけを狙う村人たち。
「てめえらどの口が…」
「どの口が言うておるのかの?」
どこからか声がすると村人たちが構えていた弓は腕ごと吹き飛び、その前に亜空間から魔王が現れた。
「解決ができてよかったのリトス。これで惜しみなく殺しあうことができて妾は嬉しいぞ!」
魔王が腕を振っただけで周りの家が燃え始め、亜空間から取り出した刃の燃えている剣と電流の走った斧を持ち隆の方へと向ける。
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