上 下
52 / 73
世界樹の子 前編

問題解決

しおりを挟む
リトスの故郷である村に入った一行はリトス以外村長の村に通され、リトスはストロと村の外に出ていた。
ストロは何故自分と二人きりになろうとしたのか理解しておらず、もしかしたら自分のことを好きになったのかとリトスに近づくと刃を向けられ距離を置く。

「どうして今になって帰ってきたんだ?お仲間なんて連れてさ」

「とある人を探しに来たの。私を魔王を倒しに旅に出させたやつを」

リトスがストロに顔を向けるとわずかに顔を強張らせる。
あえて「お前が犯人だろう」とは言わず自白させようとしたがストロは「何を言ってるんだ」と返す。
ストロが顔を逸らしたのをリトスからは見えていなかったが声に動揺があったのは隠しきれておらず、リトスは武器をストロの死もとに投げつけ刃は地面に刺さる。

「うおっ!」

「正直に答えなさい。こっちは魔王の部下に何度か殺されかけてるの」

もう一本の武器を片手に持ち「今度は当てる」と構えるリトス。
するとストロは村の中へと逃げてしまい、咄嗟に投げたリトスの武器はストロのふくらはぎへと刺さった。

「あがぁぁぁ…」

貫通こそしていないものの深く刺さった武器を抜こうと倒れているストロ。
走らなくても追いつけるため地面に刺さった武器を回収してから歩いていく。
その時リトスにあった感情は怒りでも憎しみでもなく殺意。
リトスが問いかけた時自白して謝ってくれたのならここまでしなかっただろう。
だが倒れているのは跪くことも、頭を下げることもせずただ逃げた。

「抜いてあげるよ」

野菜を切るように武器を引き抜くリトス。

「っがぁ!おまえ…こんなことしていいと思ってるのか…」

「いいんじゃない?本当ならあんたが自白して謝って終わりのつもりだったんだけどそうはならなかったでしょ」

杖でもう片方の足を探り、抵抗されると武器が刺さっていたふくらはぎを強く突く。
そしてもう片方の足に今度は投げず自分の手で刺した。

「いっ…あぁぁぁ!」

「痛いでしょ?でも私もっと痛い思いしてるんだよね~体の中から燃えるような痛みとか味わったことないでしょ?」

武器を回転させてから引き抜き武器についた血を払う。
悲鳴を聞いた村人と隆達が集まってきてしまい早々に殺そうとするがラルアが出した枝に腕を止められてしまう。

「離して」

(まだ離せない。リトス、申し訳ないけどついさっきまで君の心を読んでいたからまずはそれを皆に話してくれないか?)

「…そうだね」

リトスは順を追って話していった。
まずはどうして魔王が侵攻したことが嘘だったことに気づいたのか。
どうして隆達に黙っていたのか。

「…マジかよ。リトスお前魔王と繋がってたのか」

「敵ではないと知ったのは割と最近だけどね。それでもまだ皆と旅をしたいから知らないふりをしてたんだけどそうはいかなくなった」

「死の街に近づいたからでござるか?」

「それもある。けど魔王から真相も知らずに死ぬかもしれない戦いに挑んでも嫌だろうって言われたから」

「確かにもやもやしたまま勝っても負けても悔いが残りますからね。ですが魔王が敵ではないと分かっていたのなら魔王もこちらの前に出て説明することができましたな」

「魔王は私たちと戦いたいらしいの。しかも数十年かけて」

ため息交じりに話すリトス。
話は終わったとリトスは這って逃げようとするストロの背中に腰掛ける。

「リトスちゃん、同族殺しは…」

「追放でしょ。もうここに帰るつもりないし皆私がここに帰ってくると思ってなかったから私が帰ってきても何も言わないしお母さんに至ってはここにいない。こうなると村にいる皆が私を追い出そうと嘘をついてたんじゃないかって思えてくる」

「そうだとしたら俺が呼び出されたのが言い訳の一つにしかならなくなるだろ…」

「実際そうなんだ…」

「は?」

「おいストロ!」

「リトス、お前が病気を患ってから狩りに行けなくなったな。それで元々家事もしなかったから村のやつらは疎ましく思ってたんだ」

「リトスちゃん!ストロの言っていることは嘘だ!信じるんじゃない!」

嘘をついているのは村長の方だった。
リトスは村長の叫びを無視してストロの話を聞き続ける。

「それで俺に話が持ち掛けられたんだ…よく狩りに出かけるお前なら村の外の情報を入れても疑われないだろうとな」

「へぇ…誰に言われたの?」

「そこで叫んでいるじいさんだ」

「嘘だ!そいつの言うことは嘘だぞリトスちゃん!」

「黙らせて」

指示を出すとラルアは村長の口に枝を巻き付ける。

「それで、私から逃げた理由は?」

「俺が嘘を言ったことには変わりないだろう…」

本当のことを言えば今度は自分が村を出ていかなければいけなくなってしまう。
エルフは他の種族との交流には消極的でどの村や町にいってもろくな扱いがされないためエルフにとって村の追放は死を意味しているようなものだった。
だからあの場でストロは逃げなければいけなかった。

「…さて。行こっか」

腰を上げて村を出ようとするリトス。

(村長はどうするんだい?)

「吸収しちゃっていいよ」

ラルアが頷くと村長は数秒でミイラ化してしまい、亡骸をその場に捨てた。

「なあリトス。そういえば魔王を倒せる剣はないのか?」

「ごめん。ない」

(本当にあると思ってたんだ)

「止まれ!これだけのことをしておいて生きたまま帰れると思っているのか!」

弓を構えてリトスだけを狙う村人たち。

「てめえらどの口が…」

「どの口が言うておるのかの?」

どこからか声がすると村人たちが構えていた弓は腕ごと吹き飛び、その前に亜空間から魔王が現れた。

「解決ができてよかったのリトス。これで惜しみなく殺しあうことができて妾は嬉しいぞ!」

魔王が腕を振っただけで周りの家が燃え始め、亜空間から取り出した刃の燃えている剣と電流の走った斧を持ち隆の方へと向ける。

「前会った時は名乗っておらなくて悪かったの。妾は魔王ティアマト!アスモディアン最強にしてその王じゃ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた

リオール
恋愛
だから? それは最強の言葉 ~~~~~~~~~ ※全6話。短いです ※ダークです!ダークな終わりしてます! 筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。 スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。 ※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...