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世界樹の子 前編
疑問
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男が小柄だからだろうか、手まで隠せる緑色の大きな服を着て黒い帽子を被ったリビの言う「シショー」はラルアに敵意のない笑みを向ける。
「木から生まれし妖精がここにいるとは珍しいね。森の中は飽きたのかい?」
(数人の仲間と旅をしてるんだよ。どこで生まれたかとここで売られていたのは覚えているけれどそれ以外は覚えてない)
「それは可哀相に…おや、話せるのか」
(仲間が言うところの念話、テレパシーというものらしい。これがないと意思疎通ができない)
「ほとんどのアルラウネは表情すら変わらないというのにね。いい木から生まれてきたようだ」
(そうみたいだね。じゃあ僕は散歩も済んだことだしそろそろ帰るよ)
ラルアが後ろを向いて帰ろうとすると何かに顔をぶつけてしりもちをついてしまった。
顔をさすって前を見ても何もなく、進もうとすると何故か前に進めない。
「シショー性格悪いですよ」
「あはは…だってアルラウネと話せることって滅多にないし余に力はない」
シショーと呼ばれる男が何かをしたのを確信したラルアは魔法陣か何かが周りにないか探すと一枚の何か書かれた紙を見つけた。
何が書いてあるのかは読めないが紙から何かが出ているのを感じる。
(魔法陣じゃない…?だとしたらこれは…)
「少なくともこの世界には存在しないものだよ。知っているのは余のみのため仕組みは明かせないがね」
(何が目的だ)
「話がしたいだけだ。仲間がいるといったがどんな仲間がいるんだ?」
(信頼できない相手に仲間の情報吐くほど僕は愚かではないよ)
いつでも攻撃ができるように相手に分からないよう準備をしつつ話をするラルア。
足元から指の太さほどの枝をリビとシショーの近くまで地面這わせる。
一度外れてしまった時のため周りを囲うように更に枝分かれさせ、バレてしまってもいいように範囲を広くする。
「シショー。あの子敵意むき出しですよ」
「分かっている。しかし本当に頭のいいアルラウネだな。どこの木から生まれてきたんだ?」
「そんなこと私が知るわけないです」
(ボソボソと話しているようだけれど聞こえているよ。早く僕を返してくれないかな)
「そんな殺す相手を見るような眼をしないでくれ。結界を解くからせめて何の目的で旅をしているかだけ聞かせてくれ。君の故郷に帰るためか?君の過去を知るためか?」
(魔王を倒すためだよ)
「魔王を?何のためにだ」
(魔王は世界を侵攻しているんだろう?僕はそう聞いた)
ラルアの答えにシショーは吹き出し、口を手で覆った。
(今のどこかに笑うところがあったのかい?)
「いや失礼。君は嘘をつかれているね。現在魔王と人間は平和条約を結んでいて魔王側、人間側どちらにしてもそれを破棄するのに得がないんだよ]
(僕達は魔王の部下と何度も戦ったしそんなこと言われても信じられるわけないだろ)
ラルアは動揺していた。
事実、魔王が侵攻しているということに疑問を持っていた。
今まで行った町や村の人に危機感は全くなく、魔王の部下からの襲撃は郊外でいつも人の目に触れない場所だった。
「信じなくともいいが魔王は本気で侵攻を始めるぞ。魔王の強さを実際に見たわけではないが騎士団がいなければこの世界は魔王のものになっていたほどにあの魔王は強い」
その騎士団は自分達が壊滅させてしまったことを言おうとしたがラルアは心に留めておいた。
しかし魔王の部下であるアメジストと戦いギリギリ勝っていることを思うと魔王がさらに強いのは確か。
「挑めば絶対に負けるんですよ?それでも無意味な戦いをするんですか?」
(僕は…死んでも悲しむ家族はいないから)
敷いていた枝を全て元に戻し宿に向かって帰るラルア。
まだ見えない壁があるか手を前に出しながら歩くともうなくなっていた。
ラルアが見えなくなった時、シショーはため息をつき裾からその紙は手のひらほどの大きさの紙を出した。
「追(ツィ)!」」
息を吹きかけて投げると紙は勢いよく飛んでラルアを追いかけていった。
「これで見つかったらシショー殺されますよ」
「はは、面白いことを言うな。余が死ぬのは病気だけだ」
次の日、一行は上空を飛んでいる一枚の紙に気づくことなくリトスの故郷へと向かっていき、ついに森へと入っていった。
道という道のない森を躊躇することなく先頭を進んでいくリトス。
ラルアは昨日宿に帰りシショー、リビと会ったことと話したことは一切話さず今日になり、このまま疑問を抱いてずっとついていくのか打ち明けたほうがいいのか迷っていた。
「もうすぐ着くと思うんだけど…」
「止まれ!何者だ」
聞いたことのある声の方向へ顔を向けるリトス。
その視線の先にいる人物は目的の人物だった。
「リトス…帰っていたのか」
「えぇ…久しぶり。ストロ」
リトスに告白をしてきて振られた男であり、こんかいリトスが旅に出た原因かもしれない男。
登っていた木から降りてきたストロに案内され村に入る一行に向けられる鋭い視線はリトスにも向けられていた。
「木から生まれし妖精がここにいるとは珍しいね。森の中は飽きたのかい?」
(数人の仲間と旅をしてるんだよ。どこで生まれたかとここで売られていたのは覚えているけれどそれ以外は覚えてない)
「それは可哀相に…おや、話せるのか」
(仲間が言うところの念話、テレパシーというものらしい。これがないと意思疎通ができない)
「ほとんどのアルラウネは表情すら変わらないというのにね。いい木から生まれてきたようだ」
(そうみたいだね。じゃあ僕は散歩も済んだことだしそろそろ帰るよ)
ラルアが後ろを向いて帰ろうとすると何かに顔をぶつけてしりもちをついてしまった。
顔をさすって前を見ても何もなく、進もうとすると何故か前に進めない。
「シショー性格悪いですよ」
「あはは…だってアルラウネと話せることって滅多にないし余に力はない」
シショーと呼ばれる男が何かをしたのを確信したラルアは魔法陣か何かが周りにないか探すと一枚の何か書かれた紙を見つけた。
何が書いてあるのかは読めないが紙から何かが出ているのを感じる。
(魔法陣じゃない…?だとしたらこれは…)
「少なくともこの世界には存在しないものだよ。知っているのは余のみのため仕組みは明かせないがね」
(何が目的だ)
「話がしたいだけだ。仲間がいるといったがどんな仲間がいるんだ?」
(信頼できない相手に仲間の情報吐くほど僕は愚かではないよ)
いつでも攻撃ができるように相手に分からないよう準備をしつつ話をするラルア。
足元から指の太さほどの枝をリビとシショーの近くまで地面這わせる。
一度外れてしまった時のため周りを囲うように更に枝分かれさせ、バレてしまってもいいように範囲を広くする。
「シショー。あの子敵意むき出しですよ」
「分かっている。しかし本当に頭のいいアルラウネだな。どこの木から生まれてきたんだ?」
「そんなこと私が知るわけないです」
(ボソボソと話しているようだけれど聞こえているよ。早く僕を返してくれないかな)
「そんな殺す相手を見るような眼をしないでくれ。結界を解くからせめて何の目的で旅をしているかだけ聞かせてくれ。君の故郷に帰るためか?君の過去を知るためか?」
(魔王を倒すためだよ)
「魔王を?何のためにだ」
(魔王は世界を侵攻しているんだろう?僕はそう聞いた)
ラルアの答えにシショーは吹き出し、口を手で覆った。
(今のどこかに笑うところがあったのかい?)
「いや失礼。君は嘘をつかれているね。現在魔王と人間は平和条約を結んでいて魔王側、人間側どちらにしてもそれを破棄するのに得がないんだよ]
(僕達は魔王の部下と何度も戦ったしそんなこと言われても信じられるわけないだろ)
ラルアは動揺していた。
事実、魔王が侵攻しているということに疑問を持っていた。
今まで行った町や村の人に危機感は全くなく、魔王の部下からの襲撃は郊外でいつも人の目に触れない場所だった。
「信じなくともいいが魔王は本気で侵攻を始めるぞ。魔王の強さを実際に見たわけではないが騎士団がいなければこの世界は魔王のものになっていたほどにあの魔王は強い」
その騎士団は自分達が壊滅させてしまったことを言おうとしたがラルアは心に留めておいた。
しかし魔王の部下であるアメジストと戦いギリギリ勝っていることを思うと魔王がさらに強いのは確か。
「挑めば絶対に負けるんですよ?それでも無意味な戦いをするんですか?」
(僕は…死んでも悲しむ家族はいないから)
敷いていた枝を全て元に戻し宿に向かって帰るラルア。
まだ見えない壁があるか手を前に出しながら歩くともうなくなっていた。
ラルアが見えなくなった時、シショーはため息をつき裾からその紙は手のひらほどの大きさの紙を出した。
「追(ツィ)!」」
息を吹きかけて投げると紙は勢いよく飛んでラルアを追いかけていった。
「これで見つかったらシショー殺されますよ」
「はは、面白いことを言うな。余が死ぬのは病気だけだ」
次の日、一行は上空を飛んでいる一枚の紙に気づくことなくリトスの故郷へと向かっていき、ついに森へと入っていった。
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ラルアは昨日宿に帰りシショー、リビと会ったことと話したことは一切話さず今日になり、このまま疑問を抱いてずっとついていくのか打ち明けたほうがいいのか迷っていた。
「もうすぐ着くと思うんだけど…」
「止まれ!何者だ」
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その視線の先にいる人物は目的の人物だった。
「リトス…帰っていたのか」
「えぇ…久しぶり。ストロ」
リトスに告白をしてきて振られた男であり、こんかいリトスが旅に出た原因かもしれない男。
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