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トロルの森
寝るにはまだ早い
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宿屋への行き方に困っていたリトス達はラルアに交信を送ってもらい、通りすがりの村人に宿屋まで乗せてもらうことにした。
隆が宿屋に向かってから戻ってこないが、そろそろ着いている頃だろうとも思っていたが、着いた宿屋には隆の姿は見当たらなかった。
一方、隆は気絶したまま謎の少女に担がれ、村まで戻ってきていた。
「さて、どこに捨て…降ろせばいいかのう」
少女は建物の屋根からリトス達を探し、宿屋の入口に立っているリトス達を発見した。
すると少女は遠くにいたリトスの足元を目掛けて「よっ」という掛け声と共に担いでいた隆の片足を持って雑に投げた。
投げられた隆は回転を加えながらリトスの足元へ向かって飛んでいき、リトス達の目の前で頭が地面に刺さって到着した。
「よし」と言った少女の手には隆の足が握られ、捨てようか迷っているうちに灰となって消えた。
「情報を掴ませないためかのう…まぁよい、さっさと帰っておやつでも食べるとしようかのう」
突如目の前に現れた頭が地面に刺さり、片足がちぎれている何か。
リトス達はその何かが何故回転をかけて降ってきたのかは分からなかったが、それが隆だということは理解できた。
「色々驚いてるけどとりあえず引き抜こうか」
(僕も手伝うよ)
「拙者も手伝うでござるよ」
「いっせーの」という合図で一斉に引き抜く三人。
すると頭は地面に埋まったまま、体だけが抜けた。
「ギャアアァァァ!?グロいでござる!グロテスクでござる!」
(勢いをつけすぎちゃったね)
「そうだね。ところでこの場合って頭から体が再生するのかな?それとも体から頭が再生するのかな?」
「おぬしら冷静すぎではござらんか!?」
「だって慣れてるし」
(死んでないなら驚く必要ないね。あ、体が灰になって消えていくよ)
「この二人怖すぎるでござる…」
体の再生が終わると三人で土を掘り始め、青白くなった顔を見つけるとりトスは一気に土から引き抜いた。
引き抜くとすぐに隆の意識は回復し、口に入っていた土を水で吐き出した。
「うぇっ…ひでぇ目にあった…」
「何があったのでござるか?拙者が宿屋に向かった時にどこにもいなかったから心配してたでござるよ」
「ああ、実はな…」
隆は狭い路地に入って女性に誘惑されてついて行き、「死の街」へと行ったこと、その後アスモディアンに囲まれて食べられそうになって意識が途切れたことを話した。
「自業自得の一言に尽きるけど…さっきまで意識がなかったってことはどうやってここに来たということは分からないんだよね。死の街に行ったことも不思議だし…もしかして私達の他にも魔王を倒そうとしてる人がいるのかな」
(そうだとしたらかなり強い人だね。空間移動が可能でアスモディアンを次々と倒してしまう…)
「でも拙者達の前に現れずに隆殿をここに投げたのでござるよ?それに隆殿を拙者達の所に投げたということは少なくとも拙者達を知っている人でないと無理でござろう?」
「そうだね…うーん、そんな人知り合いにいたかな…」
いくら考えても思いつかず、「謎の人」が助けてくれたことにしてリトス以外腹が減った一行は宿屋内の食堂へと入っていった。
食堂内はどれもトロルのサイズだが木の椅子、木のテーブル、木の床とあらゆるものが木で作られ、食堂内は様々な料理の匂いが漂っていた。
「まだ夕刻だからでござろうか、拙者達以外の人はいないようでござるな。しかしこれでは座るところも無いでござるしー」
「ヒューマンのお客さーん!こちらへどうぞー!」
どこからともなく聞こえてくる声。
声は遠く、かろうじて聞こえてくる声に一行は戸惑う。
「こちらですー!こちらですよー!」
リトスが耳を澄まし、声が聞こえる方に近づいていくと食堂の隅にヒューマンサイズの食堂があり、入口前にはエプロンを着た狐の獣人が立っていた。
「いらっしゃいませー!ヒューマンサイズのお客さんが来るのは久しぶりなのでついつい大きな声で叫んでしまいましたよー!」
「そりゃトロルの村だから私達みたいな人が来るのは珍しいかもね。経営はできてるの?」
「ええ、普段は私一人でトロルの人達に料理を提供してますから。どうぞ中へ入ってください」
引き戸を開けると先程までいた食堂とは違って全てがヒューマンサイズになっており、隆達は感覚が麻痺して小さくすら見えた。
壁一面に飾られた木札には様々な料理が書いてあり、暴れ豚の煮物やビッグシザーの刺身など美味しそうなものから鉄鉱石のダイヤモンド添え、などリトス達が食べられないものまで揃っていた。
「トロルの村にはヒューマンの方やアスモディアンの方が来られるので種族にあった食べ物を用意しておかないと困ってしまいますからね。それでは皆さん、何を食べますか?」
こうしてリトスは木の実団子を、隆は暴れ豚ステーキ定食を、ラルアはサファイアパフェを、ライナはポイズンドリアを食べていった。
食堂を後にした一行は寝るにはまだ少し早く、隆を一人用の部屋に見送ってから数人用の指定された部屋に入って雑談を始めた。
リトスの目の病気の話やライナが王から報酬を後払いにされている話など盛り上がり、話題はラルアの出生になった。
「そういえばラルアはどこの森で生まれたの?チアミンの奴隷屋で売られてたからその近くで生まれてると思うんだけど」
(僕の生まれたところは確か…名前なんてなかった場所だよ。あの街には彷徨っていたら着いた場所で、言葉も通じないまま売りに出されてたからね)
「そうでござるか…地図を見ても分からないでござるか?」
(多分わからないと思う。街までいった道はうろ覚えだから)
「まぁ一応見てみるでござるよ」
リトスのリュックから地図を取り出して広げるライナ。
ラルアがチアミンへの道思い出しながらチアミンの街から辿っていくとアスモディアンの領地へと入っていく。
危険と言われる死の街から更に上へ辿り、そこには一つの樹が描かれている場所があった。
(多分だけど、僕はここで生まれたんじゃないかな)
その樹はアスモディアン領地に大きくそびえ、この世界の魔力の根源とも言える大樹である世界樹だった。
隆が宿屋に向かってから戻ってこないが、そろそろ着いている頃だろうとも思っていたが、着いた宿屋には隆の姿は見当たらなかった。
一方、隆は気絶したまま謎の少女に担がれ、村まで戻ってきていた。
「さて、どこに捨て…降ろせばいいかのう」
少女は建物の屋根からリトス達を探し、宿屋の入口に立っているリトス達を発見した。
すると少女は遠くにいたリトスの足元を目掛けて「よっ」という掛け声と共に担いでいた隆の片足を持って雑に投げた。
投げられた隆は回転を加えながらリトスの足元へ向かって飛んでいき、リトス達の目の前で頭が地面に刺さって到着した。
「よし」と言った少女の手には隆の足が握られ、捨てようか迷っているうちに灰となって消えた。
「情報を掴ませないためかのう…まぁよい、さっさと帰っておやつでも食べるとしようかのう」
突如目の前に現れた頭が地面に刺さり、片足がちぎれている何か。
リトス達はその何かが何故回転をかけて降ってきたのかは分からなかったが、それが隆だということは理解できた。
「色々驚いてるけどとりあえず引き抜こうか」
(僕も手伝うよ)
「拙者も手伝うでござるよ」
「いっせーの」という合図で一斉に引き抜く三人。
すると頭は地面に埋まったまま、体だけが抜けた。
「ギャアアァァァ!?グロいでござる!グロテスクでござる!」
(勢いをつけすぎちゃったね)
「そうだね。ところでこの場合って頭から体が再生するのかな?それとも体から頭が再生するのかな?」
「おぬしら冷静すぎではござらんか!?」
「だって慣れてるし」
(死んでないなら驚く必要ないね。あ、体が灰になって消えていくよ)
「この二人怖すぎるでござる…」
体の再生が終わると三人で土を掘り始め、青白くなった顔を見つけるとりトスは一気に土から引き抜いた。
引き抜くとすぐに隆の意識は回復し、口に入っていた土を水で吐き出した。
「うぇっ…ひでぇ目にあった…」
「何があったのでござるか?拙者が宿屋に向かった時にどこにもいなかったから心配してたでござるよ」
「ああ、実はな…」
隆は狭い路地に入って女性に誘惑されてついて行き、「死の街」へと行ったこと、その後アスモディアンに囲まれて食べられそうになって意識が途切れたことを話した。
「自業自得の一言に尽きるけど…さっきまで意識がなかったってことはどうやってここに来たということは分からないんだよね。死の街に行ったことも不思議だし…もしかして私達の他にも魔王を倒そうとしてる人がいるのかな」
(そうだとしたらかなり強い人だね。空間移動が可能でアスモディアンを次々と倒してしまう…)
「でも拙者達の前に現れずに隆殿をここに投げたのでござるよ?それに隆殿を拙者達の所に投げたということは少なくとも拙者達を知っている人でないと無理でござろう?」
「そうだね…うーん、そんな人知り合いにいたかな…」
いくら考えても思いつかず、「謎の人」が助けてくれたことにしてリトス以外腹が減った一行は宿屋内の食堂へと入っていった。
食堂内はどれもトロルのサイズだが木の椅子、木のテーブル、木の床とあらゆるものが木で作られ、食堂内は様々な料理の匂いが漂っていた。
「まだ夕刻だからでござろうか、拙者達以外の人はいないようでござるな。しかしこれでは座るところも無いでござるしー」
「ヒューマンのお客さーん!こちらへどうぞー!」
どこからともなく聞こえてくる声。
声は遠く、かろうじて聞こえてくる声に一行は戸惑う。
「こちらですー!こちらですよー!」
リトスが耳を澄まし、声が聞こえる方に近づいていくと食堂の隅にヒューマンサイズの食堂があり、入口前にはエプロンを着た狐の獣人が立っていた。
「いらっしゃいませー!ヒューマンサイズのお客さんが来るのは久しぶりなのでついつい大きな声で叫んでしまいましたよー!」
「そりゃトロルの村だから私達みたいな人が来るのは珍しいかもね。経営はできてるの?」
「ええ、普段は私一人でトロルの人達に料理を提供してますから。どうぞ中へ入ってください」
引き戸を開けると先程までいた食堂とは違って全てがヒューマンサイズになっており、隆達は感覚が麻痺して小さくすら見えた。
壁一面に飾られた木札には様々な料理が書いてあり、暴れ豚の煮物やビッグシザーの刺身など美味しそうなものから鉄鉱石のダイヤモンド添え、などリトス達が食べられないものまで揃っていた。
「トロルの村にはヒューマンの方やアスモディアンの方が来られるので種族にあった食べ物を用意しておかないと困ってしまいますからね。それでは皆さん、何を食べますか?」
こうしてリトスは木の実団子を、隆は暴れ豚ステーキ定食を、ラルアはサファイアパフェを、ライナはポイズンドリアを食べていった。
食堂を後にした一行は寝るにはまだ少し早く、隆を一人用の部屋に見送ってから数人用の指定された部屋に入って雑談を始めた。
リトスの目の病気の話やライナが王から報酬を後払いにされている話など盛り上がり、話題はラルアの出生になった。
「そういえばラルアはどこの森で生まれたの?チアミンの奴隷屋で売られてたからその近くで生まれてると思うんだけど」
(僕の生まれたところは確か…名前なんてなかった場所だよ。あの街には彷徨っていたら着いた場所で、言葉も通じないまま売りに出されてたからね)
「そうでござるか…地図を見ても分からないでござるか?」
(多分わからないと思う。街までいった道はうろ覚えだから)
「まぁ一応見てみるでござるよ」
リトスのリュックから地図を取り出して広げるライナ。
ラルアがチアミンへの道思い出しながらチアミンの街から辿っていくとアスモディアンの領地へと入っていく。
危険と言われる死の街から更に上へ辿り、そこには一つの樹が描かれている場所があった。
(多分だけど、僕はここで生まれたんじゃないかな)
その樹はアスモディアン領地に大きくそびえ、この世界の魔力の根源とも言える大樹である世界樹だった。
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