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第6章 古城の真実と怪物たちの真実

エミリー&コールの場合

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 わたくしとコールは遊戯室ゆうぎしつに向かい中へと入ります。
「まあ、なんということでしょう!」
ビリヤード台のカベにはダーツばん
ジュークボックスも置いてありテーブルにはポーカーができるようなトランプなどの道具がそろっています。
まるで本格的ほんかくてきなカジノに来たみたい。
まあ、まだわたくしは未成年みせいねんですが。
「それにしても、お宝なんていったいどこにあるんですか?」
『そうあせる必要はないだろ? イヴァンから聞いた話だがここには主だった男女二人が遊んだ場所って』
「それってきっとお母さまとお父さまに違いないですわ!」
しかしここで二人が遊んでいたなんて想像ができません。
考えただけでもなことだと思うだけ。
コールはトランプのカードを一枚取りわたくしに見せます。
「これは……ダイヤの八?」
『特にこれといった意味はない。ただエミリーのイメージはオレの中ではこれなんだ。まあ、昔話を聞いてくれよ』
「はぁ……昔話ですか」
それよりダイヤの八がわたくしのイメージってなんか納得いきません。
でも黙っておきましょう、せっかくコールがわたくしを思って引いたのだから。
お宝を探しながらコールは語りました。
『俺は故郷ふるさとであるイギリスにある深い森で家族と暮らしていた。話したかもしれないがオレはそいつらから逃げてきた。なぜかって? ある日、教会のガキとシスターが森にやってきたんだ。彼女が言うに自然を体験しなさいと勉強熱心べんきょうねっしんな心優しい性格だった。オレは彼女を見てそんな優しい人狼として生きたいと思った。だがあるとき、そのウワサを聞きつけた仲間がガキたちを狙っていたんだ。オレはなぜか許せなくなって彼らの小さき魂に祈りをささげたのさ。隠れてシスターのマネをしてな。だがオレの行動がバレ、怒り出した馬鹿どもは攻撃してきやがった! 逃げまくって気が付いたら闇の中だ。シスターには悪いことをしたなと思ったんだよ。だってそいつがエミリーに似ていたからな』
言い終えるとわたくしは涙であふれかえっていました。
人狼ウェアウルフとは人間を襲う凶暴きょうぼうな怪物。
しかしコールはシスターの優しさに、ふれてしまい心を入れかえたのでしょう。
「ですが……なぜシスターと子どもたちの姿を見て優しくなりたいと思いましたの? 実際には話してはいないでしょうに」
『オレも……なぜかは分からない。だが唯一言えるのは退屈たいくつだったんだろ。襲うのは狼のサガ。だが人間は違う。ここに来てからもずっと疑問ぎもんに思っていた。お前の母親も優しく父親に接しているのを見たぜ。フシギだよな』
カードを置き、うなり声をあげるコールを見てわたくしは思いました。
きっとそれはあなた自身がつかみ取った奇跡です。
「ふふっ。きっとコールはシスターに恋をしてしまったのかもしれませんね。わたくしも夢はシスターになること。彼女でしたらたとえ幽霊でも会ってみたいですわ。なーんて」
するとコールはわたくしの目の前に飛びかかりました。
「え……? まさか何かの逆鱗げきりんにでも触れましたかっ!?」
『恋か! それは思いつかなかったぜ。でもよ。今はエミリーのことが好きなんだ、たとえ昔のオレが彼女に恋していたとしても今は違う。じっとしてな……』
するとコールはわたくしの顔をぺろりと舌でなめました。
(涙をふいているの? それとも何か嫌味いやみでも……)
(なあ。約束してくれ、オレはエミリーがあの時のシスターに見えてきて仕方ないんだ。だからオレの者になってほしい。オレを理解してくれるのはお前だけだから……)
脳内で声が聴こえてきます。
「……っ! もう、コールったら。やめてください! まだ子どもなのよ!」
『それでもいいんだ! 誰にもエミリーは渡さない。お前の妹と兄貴には悪いが誰よりも愛しているんだよ』
低いドスのきいた声が部屋中に響きわたりました。
するとコールは牙と爪が少しずつ伸びてきて身体も大きくなっていました。
わたくしを抱きしめながら。
初めて出会った時よりもそれは姿へと変貌していました。
すると背後から水色に光輝く物が目に見えました。
「あ! あれはっ……」
『きっと宝だろうな、オレが取るよ』
ダーツ版に刺さっていたなにかをコールが長い爪で器用に取るとわたくしに見せてくれました。
さっきまではなかったのにどうして。
「これは……指輪!?」
『アムレットリング。これが……あいつが隠していた宝か』
そう言ってコールは、わたくしの中指にそれをはめました。
キラキラと輝くシルバーの指輪はまるで宝石のよう。
しかも真ん中には花のマークが。
「まあ、きれいですわ……ありがとうございます」
『愛と友情の証だな』
「冗談がお上手なのですから......まったく」
無事にお宝も見つかり少し安心したわたくしとコール。
するとどこからか悲鳴が聞こえてきました。
「あの声……はっ、もしや小夜さん!?」
『マジかよ! エミリー、しっかり捕まっていろよ!』
わたくしをお姫様抱ひめさまだっこしながら、コールが素早い走りで遊戯室から去りました。
もう、いったいなんなの……!
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