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第3章 怪物たちの目覚め

大我の場合

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 気がつくと俺は、目を覚ましていた。
いつもならすぐに眠れるというのに今回ばかりはそうもいかなかった。

今は何時だろう、時計を見ると時刻は午前二時半をしめしている。
丑三つ時うしみつどきで人ならざる者たちのゴールデンタイム。
眠れないのもなんなので、俺は黒い手袋を身に着けてから部屋を出た。
廊下はシンと静まりかえり、冷たい風がピューピュー吹いていた。
ん?なぜ俺はこの手袋をしているのかって? 
それはな、これを身に着けておくとなぜか安心できるからだ。

昔から俺は、妹たちとは違って
あやねは交渉ネゴシエーター、エミリーは霊視インスピレーション、憂炎は視られる力もあり声も聞こえる。
親父が教えてくれた、皇家すめらぎけは特別な力を受け継いでいると。
明治時代から外国の親戚しんせきとのえんがあり《《俺はエクソシストの末裔まつえいだと言われた》》。


「だから親父は俺たちに任せたんだろうな」
独り言をしているうちに俺はいつの間にか倉庫そうこに来ていた。
なんだかテンションが高ぶってきて、思わず口ずさんでいた。
「試しに 開けてみると するか。おいおい 誰もいないぜ 残念だよ もう少し この俺を楽しませてくれ」

『ねえ お兄さん、僕と 遊ぼう? ひとりぼっちは イヤだ』
すると可愛らしい声が聞こえてきて俺は振り向く。

「もしかしてお前、か?」
『え……? 怖がらないの?』
残念そうにうつむく少年を見る。
だって泣いていないじゃないか、演技えんぎにしてはまだまだだ。
「そんなことでは俺は怖がったりはしない、甘いな」
『そっか……僕は暁明(シャオメイ)。お兄さんは?』
大我タイガだ。お前こそ、こんなところで何をしている」
『僕はね。ずっとここで独りだった。だから話をしてくれる人間に会えて嬉しい』
暁明は俺の顔を見て急に襲い掛かってきた。
「ガキが……なんのつもりかは知らないがあまり調子に乗らないほうがいいぞ」
俺は、ひょいとウサギのようにかわす。
おどしてみたが、暁明はビクともしない。
彼の周りでゆらゆらと青白い人魂ひとだまが現れる。
だが、俺はに気がついた。

こいつには、ついていない……。
そうだ、リミッターがないと暴れだす。
『ねえ、大我。ちょっとでいいから僕のお願い聞いてくれない?』
「フン、その手には乗らないぞ」
俺は暁明を無視して辺りを見渡す。
(どこかにリミッターはないものか……)
影を踏まなければいいのだ、テリトリーに入ればになっちまうから。
(あっ! 見つけたぜ)
いかにも棺らしき箱の上にそれがあった。
急いで俺はそこまで走り御札を取る。
『家族になって……僕のお兄さんにしてあげるよ……』
「それはごめんだぜ!」
吸血でもしようとしてきたが、その隙にこいつの額に御札を張りつける。
暁明が泣き出して俺を睨みつける。
『ひどい!……あと少しだったのに』
「馬鹿だな。そんなことしなくても……まずはだろ?」
『トモダチ……?』
たとえ俺を今ここでキョンシーにしたところで何も利益りえきがない。
勿論、愛する姉妹を見捨てるわけにもいかない。
それに御札を張り付けた瞬間からもう俺は暁明を使役することができる。
だから俺は決めたのだ、今からこいつを使役しえきしてやる。
エクソシストの末裔らしく、可愛がってやろうじゃないか。
「それだったら兄貴になってもいい。、な?」
『……!? 本当に? それなら言うことを聞くよ』
暁明は涙をぬぐい、俺に抱きつく。
こんな、ガキみたいなキョンシーを使役するなんてちょっと俺の趣味には合わないが。
まあよしとしようではないか。
「だがひとつだけ条件がある。。できるか?」
『もちろん! 大我の妹ちゃんたちとも仲良くなりたいなあ』
「本当に大丈夫なのかよ……」
逆に心配になると欠伸が出てきて俺は眠くなった。
やっとだ……このときを待っていた。
『でも 僕は 大我を 『お兄ちゃん』だと 思っているよ それだけは ゆずれない』
「そうか ならば示して見せろ お前の願い 純粋な心で 俺を振り向かせろ」
俺たちは疲れてしまい、さっさと部屋へもどる。
暁明が俺を諦める様子は全くない、興味対象ターゲットから離れることもなく。
俺は妹たちに、バレた時のことを考えながら就寝しゅうしんした。
部屋に入るまで暁明はニコニコしながら俺を見ていた……。
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