紡ぐ者

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【第21章 紡ぐ者】

第2節 事前準備

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 美桜はイギリスの街並みを見渡す。
「私、海外に行くのって初めてなの。」
「へぇへぇ、だからなんだ?」
美桜は青の首を押さえる。
「離せー!」
「しばらくこのままね。」
青は美桜の腕から抜け出そうと暴れまわる。しばらく歩いていると、イギリス支部の建物が見えてくる。
「あれね。」
美桜は扉を開けて建物に入る。中では団員たちが慌ただしくしていた。
「どういう状況?」
「ちょっと避けてーっ!」
美桜の後ろから誰かが荷物を運びながら突っ込んでくる。美桜は吹き飛ばされて地面に転がる。
「痛てて、大丈夫ですか?」
誰かが美桜に手を差し伸べる。
「痛った……」
美桜は手を掴んで立ち上がる。
「ぶつかって早々悪いけど、あなたは神宮寺 美桜さんですよね?」
「知ってるの?」
「当然ですよ。階級の高い魔道士は有名ですから。」
少女は転がった荷物を集める。
「私はサーミル・スルクーグ。名前だけでも憶えてもらえれば結構です。」
「サーミルってあんたのことね。ガーネットが天才だって称賛してたわ。」
「いえいえ、私の実力はあの人の足元にも及びませんよ。」
サーミルは謙遜しながら荷物を整理する。
「そういえば、みんな荷物を運んでるみたいだけど。何かあるの?」
「はい。実は近日、フランス支部との合同訓練が開催されるんです。」
「フランス支部……」
美桜はその言葉を聞いて話題に飛びつく。
「それって私も参加できる?」
「名簿に空きがあれば可能だと。あそこの人に聞いてみて。」
サーミルはホールのカウンターにいる女性のほうに視線を向ける。
「わかった、ありがと。」
美桜はカウンターに向かい女性に話しかける。
「合同訓練への参加ですね。少々お待ち下さい。」
女性は奥から名簿用紙を持ってくる。
「ちょうど1名空いておりました。参加を希望するのであれば、こちらにお名前と階級、所属している支部をご記入下さい。」
美桜は名簿に記入しながら女性の姿を見る。
(この服装……本部の人間ね。いつもは従者みたいなことをしてるけど、本当はかなりの実力を持ってる魔道士かもしれない。)
美桜は名簿を書き終える。
「お間違いはないでしょうか?」
「ないわ。」
「かしこまりました。では、登録はこちらで済ませておきます。本日のお昼頃に詳細な資料がお渡しします。」
女性はカウンターの奥へと消えていった。
「神宮寺 美桜様でよろしいでしょうか?」
隣から1人の女性が話しかけてくる。イギリス支部の者のようだ。
「そうだけど?」
「お待ちしておりました。こちらにおいで下さい。」
美桜は女性について行く。移動中、美桜は女性に質問をする。
「他の人を手伝わなくていいの?」
「従者にも役割というもがあります。私は主に、お客様への接待を中心に動いています。」
腰にナイフのようなものがあるのが美桜には気になって仕方がない。
「ナイフが気になるのですか?」
「え?」
「これは護身用のものです。イギリス支部の従者は、これの所持が義務付けられています。」
「なんのために?」
「あなたは焔の日という事件をご存知でしょうか?」
美桜は少し記憶を探るが、さっぱり分からない。
「およそ11年前に、ここロンドンで起きた大規模な火災です。1日中、炎が街を包み込んだことからそう呼ばれています。」
女性は手すりに付着していたホコリを布巾で拭き取る。
「その火災は1人の半獣によって引き起こされたものでした。魔道士たちは、全員、戦場へと赴きました。私たち従者も一般市民の救助のため、戦場へと足を踏み出しました。」
美桜は黙って話を聞く。
「しかし、事はそう上手くはいきませんでした。救助自体は簡単に終わったのですが、問題はその後です。従者と一般市民は魔獣による襲撃を受けてしまうんです。従者は所詮従者。魔獣に対抗する術など心得ていません。それにより、被害はより大きくなりました。幸い、死傷者は出ていませんが多くの者たちが怪我を負う事態となりました。」
「そんなことが……」
「その事件を境に、従者にも魔獣への対抗策の会得が義務付けられました。まぁ、実力は一般市民より少し強い程度ですが。……一部を除いて。」
「元凶はどうなったの?」
「すでに討伐されました。確か、2年前ですね。その戦いには、あなたのお兄さんも参加されていたはずです。」
(2年前………私が寝込んでた時か。その戦いでアリスは……)
美桜は視線を少し下に移す。
「到着しました。」
女性はドアを開けて美桜を部屋の中に入れる。
「あなたなら、来ると思ってたわ。」
部屋の中にはソファに座るガーネットの姿があった。
「なんであんたがここにいるの?」
「話はあなたのご先祖様から聞いてるよ。紡ぎ人になるんでしょ?」
「いつ来たの?」
「あなたが本部で治療に専念しているときね。そのときはあくまで、可能性だったけど。」
美桜は反対のソファに座る。
「あなたには魔法の改良について教えるよう言われてるわ。」
「魔法の改良?」
「2年前、私がラスベガスで使ってたでしょ?」
「あのめちゃくちゃ速い貫通魔法?」
「そう。」
ガーネットはコーヒーを飲む。
「今すぐにでも教えたいけど……知っての通り、合同訓練の準備で忙しいの。そのときに教えるわ。」
「その言い方、私が参加することを知っているみたいね。」
「名簿は私のもとに届くからね。」
ガーネットは立ち上がると机の上を片付け始める。
「私は準備があるから。そうねぇ……サーミルにあなたのガイドになってもらうわ。」
「忙しいのに大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫、私と変わるだけだから。」
ガーネットはそう言って部屋を出る。しばらくしたら、サーミルが部屋に入ってくる。
「案内してとは言われたけど……どこに行きたい?」
「いや私何も知らないから。オススメの場所でいいよ。」
「オススメねぇ……その前に……」
サーミルは美桜に1枚の紙を渡す。
「合同訓練の日程表だ。明後日から3日は滞在することなっている。着替えはある?」
「5日分あるから大丈夫だよ。」
「ならよかった。とりあえず、昼食をとりに行こう。」
サーミルは美桜の手を引っ張って建物の外へと向かう。廊下に出ると、美桜をここまで案内した従者が立っていた。
「お出かけですか?私もお供してよろしいでしょうか?」
「どういう風の吹き回しだ?」
「お客様の手を煩わせるわけにはいきません。会計等は私に任せる、というのはいかがてしょうか?」
「任せてもいいの?」
「はい。それが従者の仕事ですので。」
「すまないな、忙しい状況なのに。」
「いえ、私は大変を暇をしております。」
「そこは正直に言わなくてもいいだろ。」
美桜はサーミルの隣を歩く。
「そういえば、まだ自己紹介をしていませんでしたね。」
従者は美桜の前に立って笑顔で話し始める。
「私はアメジスト・カーカルド。気軽にアメジストとお呼び下さい。」
アメジストはすぐに2人の後ろにまわる。
「何を食べたいとかあるか?」
「そうねぇ……あんたの行きつけの店とか。」
「わかった。着いてきてくれ。」
美桜はサーミル、アメジストと共に建物を出る。外は清々しいほどに晴天だ。
「日傘は必要ですか?」
「必要ない。」
「かしこまりました。」
アメジストは日傘を畳んで懐にしまう。
「少し歩くことになるけど、いいか?」
「大丈夫よ。歩くのには慣れてる。」
美桜はサーミルの横について歩く。
「私の知っている限りでは、神宮寺家は名門だったはずだ。従者とかはつけないのか?」
「いると助かるけど、頼りっきりになりそうで怖いの。一応メイドが1人いるけど。」
「あまり頼らないのか?」
「食事を作るのを手伝ってもらうくらいかな。他の家事は日替わりで行ってるから。」
「料理が作れるのか。すごいな。」
「そうかな?」
「あぁそうさ。私なんか、料理は基本人に頼りっぱなしだ。」
「確かに、サーミル様は家事全般があまり得意ではないですからね。」
「そんなことは言わなくていいから!」
サーミルはアメジストの口を塞ぐ。
「失礼しました。とんだ失言でしたね。」
美桜はアメジストの方を見る。
「アメジストって指輪をしてるよね。既婚者?」
「その通りです。この指輪は、夫からプロポーズを受けた時にいただいたものです。そんなに珍しいですか?」
「魔道士で結婚してる人はかなり少ないからね。でも、なんで少ないんだろう?」
「おそらく、職業柄によるものだ。魔道士は常に死と隣り合わせ。早死する人が多いからだろう。家族にショックを与えないために結婚しないんじゃないのか?」
「理にかなってる、のかな?」
「話しは変わるけど、サーミルの階級って、確か上級だよね?その割には、魔力が少ないように見えるけど。」
「やっぱり、あなたもそういう反応をするのか。」
「もしかして、まずいこと言った?」
「いや、怒ってはいない。私が人より魔力が少ないのは確かだからな。」
サーミルは自分の髪をいじる。
「私から話しましょうか?」
「そうしてくれ。」
「わかりました。」
アメジストは2人を近くにあったベンチに座らせる。
「率直に言うと、サーミル様は元々魔力を持っていなかったのです。」
「どういうこと?」
「人間は産まれた時に魔力を持っている場合があります。それらの人々は、魔道士になる素質を秘めています。しかし、大半の人々が魔力を持っていません。それらの人々は素質がないのかと言われると、少し違います。」
「ちょっと待って。魔力がないと魔道士にはなれないんじゃないの?」
「いいえ、魔力がなくとも魔道士にはなれます。しかし、魔力を持たないというのは非常に大きな足かせとなります。周りより成長が遅く、戦場で大きく活躍することは極めて難しいでしょう。当然、階級を上げることも難しいです。」
美桜はサーミルのほうに視線を移す。
「なんでパフェ食べてるの?」
「ん?あぁ、暇だったから。」
「話を続けてよろしいですか?」
美桜はアメジストのほうに視線を戻す。
「魔力を持たない人たちは、周りよりも一層努力をしなければいけません。私はサーミル様を下級の頃から存じておりますが、1日たりとも鍛錬を惜しんでおりませんでした。今のサーミル様がいるのは、昔からの努力が積み重なった結果と言えるでしょう。ガーネット様が天才と言うのも頷けます。」
「天才は天才でも、努力の天才ね。」
サーミルはアメジストの話など聞きもせず、黙々とパフェを食べている。
「食べ過ぎては折角の昼食が入りませんよ。」
「大丈夫、甘いものは別腹だ。」
(えっ、そうなの?)
美桜は自分のお腹に手を当てる。
(生活の違い?それとも年齢?てか私……今何歳だ?)
「唐突だけど、サーミルって何歳?」
「本当に唐突だな。23だ。」
(私より年下だ~。)
「美桜さんは何歳なんだ?」
「……26。」
「そうなのか?てっきり私と同じくらいかと思っていた。」
「2人共お若いですね。私は30を超えています。」
「「いやそうは見えない!」」
2人は同時にアメジストにツッコミを入れる。
「人間、外見だけでは年齢はわかりませんからね。」
すると、どこからかキュルルルル、といった音が聞こえる。
「なんの音だ?」
「美桜様、我慢しなくていいんですよ。」
「いや私じゃないから!うん、絶対違う!」
美桜は頬を赤くしながら首を横に振る。
「すまない。自分のことだけを考えていた。パフェを2つ買えばよかったな。」
「たがら私じゃないから!」
3人は昼食をとりに飲食店を探して歩き始める。



「ふぅ……お腹いっぱい。」
「締めのプリンはどうだった?」
「美味しかった。甘いものって本当に別腹なんだ。」
「ふふっ、そうですね。」
アメジストが空を見上げる。
「少し、雲が出てきましたね。雨が降るかもしれません。傘の準備をしておきます。」
アメジストは懐から傘を取り出して組み立てる。
「本当に用意周到だな。」
「当然です。お客様のお召し物を汚すわけにはいきません。」
「私への気遣いはないのか……」
「そんなことはありません。2本ありますので。」
アメジストはもう1本、傘を取り出す。
(何本持ってるの?)
3人が歩いていると、小雨が降り出す。アメジストはすぐに組み立てた傘を開く。
「傘は自分で持つ。美桜さんのほうを頼む。」
「かしこまりました。」
サーミルはアメジストから傘を受け取る。
「しかしこの天気、強くなりそうだな。本部に戻ったほうがいいかもしれない。」
3人は本部に向かって道を進む。


 本部についた頃には、雨は強くなっていた。
「うーん、思ったより降ったな。」
「こちらのタオルで髪をお拭き下さい。」
アメジストは2人にタオルを渡す。
(わあ~、ふかふかだぁ~。)
美桜はタオルに顔を埋める。
「いい匂い……」
美桜はタオルの匂いを嗅ぐ。アメジストは2人を部屋へと連れて行く。
「アフタヌーンティーの準備をいたします。少々お待ち下さい。」
アメジストはそう言い残して部屋を出る。
「ここのアフタヌーンティーは最高なの。スイーツも美味しいしね。」
「そうなんだ。ちなみにスイーツは何があるの?」
「プリンにケーキ、パフェなどなど。色んな種類があるから飽きないの。」
「あは……あはは……」
美桜はスイーツを想像してよだれを垂らす。
「お待たせしました。」
アメジストがスイーツを運んでくる。机に1つずつ乗せていく。
「紅茶は冷めないうちにお飲み下さい。」
「どうも。せっかくだ、アメジストも一緒にどうだ?」
「では、お言葉に甘えて。」
アメジストはサーミルの隣に座る。
「何かお話をしませんか?ただ飲食をするだけでは退屈でしょう。」
「確かにそうだな。美桜さん、何か話題はあるか?」
「そうねぇ……アメジストの旦那さんについて、色々聞きたいかな。」
「夫について、ですか。承知しました。」
アメジストは紅茶を一杯飲むと、話を始める。
「私の夫はカタレット・ナーブという者です。彼はあなたたちと同じ魔道士です。彼はよく、面白い冗談を言うのですよ。非常に朗らかな性格で、先頭に立つことを誰よりも好んでいます。」
「アメジストから見た、彼の実力の評価は?」
「そうですね。魔道士としての実力は非常に高いと言えるでしょう。それに、決断力も中々のものです。しかし、彼は自分の身を顧みない行動をすることがあるのです。それが彼の悪いところでしょうか。」
「なるほど……正義感が強いのだな。」
「そう捉えてもらって問題ありません。」
サーミルはロールケーキをフォークで器用に切る。その後、ロールケーキを口へと運ぶ。
「彼とは、合同訓練のときに合うことになるでしょう。」
「どうして?」
「彼は、フランス支部に所属しているのです。」
美桜はケーキを食べながら話を聞いている。
「失礼ですが、あなた様方には夫、もしくは彼氏と呼べる男性はいらっしゃるのでしょうか?」
美桜とサーミルは食べるのをやめる。
「私はいない。断言できる。それに、アメジストも昔から私のことを見てきたんだから知っているはずだ。」
「そうですね。おっしゃるとおりです。」
「私は……」
美桜は指を合わせながら視線を逸らす。
「いない……かな。」
「そうですか。わかりました。」
美桜はアメジストの笑みに少し寒気を感じた。



「ここがあなた様のお部屋です。ご自由に使用してもらって構いません。」
アメジストは美桜を部屋へと案内する。美桜は部屋に入って早々、ベッドに飛び込む。
「なぜ急に合同訓練とやらに参加することにした?」
青が美桜に問いかける。
「フランス支部との合同訓練だからね。このチャンスを逃すわけにはいかないわ。」
「フランス支部は何か違うのか?」
「フランス支部は他の支部と比べて人数が少ないの。その代わり、団員の殆どが高い実力を持っているわ。昇級試験の合格者数も常にトップよ。」
「確かに、強いやつと戦うのは、強くなるためには必要なことだ。」
青はスッキリした顔で中に戻る。
(合同訓練……私の実力は、どこまで通じるんだろう。)
美桜は天井の照明に手を伸ばす。




「………下さい。」
美桜は寝返りをうつ。
「起きて下さい。」
美桜はアメジストの声で目を覚ます。
「うぅん?もう朝?昨日いっぱい遊んだから疲れてるの。」
「なら私がマッサージをして差し上げましょう。」
アメジストは美桜を起こす、服を着替えさせる。美桜が支度をしている間、アメジストは美桜の体をマッサージしていた。


「おはよう、昨日はちゃんと眠れたか?」
「うん……一応。」
「大丈夫か?今日が合同訓練だっていうのに。」
美桜はサーミルの隣に座って朝食を食べ始める。アメジストは美桜の後ろで佇んでいる。
「隣いいかしら?」
ガーネットがサーミルに話しかける。
「もちろんです。」
サーミルは驚いたような表情を見せる。
「まさか、あなたと朝食を共にするとは……人生何があるか分からないな。」
「そんなに謙遜する必要はないわ。食事の時くらいはリラックスしましょ。アメジストも、そんなところに立ってないで一緒にいただきましょ。」
「お気遣いありがとうごさいます。ですが、私は従者としての仕事がありますので、この辺りで離れさせていただきます。」
「そう……」
ガーネットは離れるアメジストを目で追う。
「そういえば、合同訓練って一体何をするの?」
「たぶん、出発するときに発表されるはずだ。」
朝食を食べていると、ルアーザが全員の前に立って1枚の紙を取り出す。辺りが一気に静かになる。
「本日から始まる合同訓練の内容を発表する。」
美桜は何故か緊張した。
「知っての通り、合同訓練は3日間行う。
1日目は身体能力の向上のための基礎訓練。
2日目は魔力の補強のための特殊訓練。
3日目は互いに競い合う実践訓練。
以上の訓練を行う。参加者は午前10時までにロビーへ集合すること。以上だ。」
ルアーザは紙をしまってその場を離れる。
「実践訓練か。フランス支部の魔道士とあたることになるだろうな。」
「フランス支部はエリート揃いだからね。気を引き締めないと。」
「ガーネットさんなら問題ないと思います。」
「そんなことはないと思うよ。」
美桜は席を外して廊下に出る。
「わかっているな?3日目のときは我らを使えよ。」
「やっぱり暴れたいんだ。ずっと籠もってばかりだから?」
「ふんっ。」
青は美桜の中に戻る。
(はぁ……龍神の扱いには困ったものね。赤は大人しくしてくれてるけど、たぶん動き回りたいんだろうなぁ。)



「遅刻した人は……いないね。じゃあ、行くよ。」
団員たちはガーネットのあとに続いて本部へと向かう。
「フランス支部って、本部からも行けるの?」
「去年の時点で、全ての支部と繋げることができたらしい。」
 団員たちは本部に着いたらゲートを目指して進む。ゲートの前につくと、ガーネットは足を止める。
「この先はフランス支部よ。少し時間を取るから、お手洗い等を済ませておいて。」
「行かなくていいか?」
「大丈夫よ。」
サーミルは懐から手袋を取り出して身につける。
「急に身に着けて、どうしたの?」
「雰囲気かな?なんかこう、ピシッとした感じがしないか?」
2人が雑談をしていると、とうやら全員の団員が用を済ませたらしい。ガーネットはゲートに向かって進む。団員たちはガーネットの後ろをついて行く。
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