紡ぐ者

haruyama81@gmail.com

文字の大きさ
上 下
19 / 117
【第4章 開戦の予兆】

第1節 異常事態

しおりを挟む
「団長!」
1人の観測員がドアを勢いよく開けて団長室に入ってきた。様子から見てかなり興奮している、
「どうしたんですか?少し騒がしいですよ。あと落ち着きなさい。」
「あ、お見苦しいところを見せてしまい申し訳ありません。」
観測員は落ち着きを取り戻す。
「こちらのデータをご覧になってください。」
アーロンドは1枚の紙を渡される。それには折れ線グラフと何かの数値が書いてある。右側に行くほどグラフの数値が不安定になっている。
「魔力の濃度を数値化したグラフです。」
「この数値……今までに見たことがない。」
「どこで観測したものですか?」
「島根県の出雲市内の山の中で観測しました。」
「ふむ。」
アーロンドは顎を撫でる。
「しばらくは観測を続けてください。変化があればまたご連絡を。」
アーロンドは観測員を部屋から退出させる。
「……。」
(この数値……急激に上昇した翌日には一気に下がっている。)
(しかし数日間高い日もある。)
「平常値の日が少ないですね。」
アーロンドは立ち上がり窓の外の太陽を見る。
「何か……不吉な予感がしますねぇ。」
アーロンドは1人、不敵に笑っていた。

ジリジリジリジリジリリリリリ
「セミうるせぇーー!あと暑いぃぃぃ!」
ロビンはソファに座って絶叫していた。季節はすでに7月の下旬に差し掛かっており夏の暑さがロビンを襲う。ロビンは冷凍庫からバリバリくんを取り出し食べる。
「暑い日には冷たいものに限るな。」
アリスから電話がかかってくる。
「なんだ?」
「ロビン、今暇?」
「暑くてなんもやる気おきねぇ。」
「じゃあ私の家に来てよ。」
「はいはい。」
プツン
電話が切れた。ロビンは内容を整理する。
(なんで俺を家に呼んだんだ?まさかあいつ、変なことでもするつもりじゃないだろうな?)
どちらにせよはいと答えてしまった以上行かないわけにはいかない。ロビンは支度をして家を出る。

アリス宅…
ピンポーン
ロビンはアリスの家のベルを鳴らす。待っでいたとばかりの早さで玄関が開く。しかし出てきたのは美桜だった。
「意外と早かったわね。上がって。」
ロビンは家に上がる。
「なんでお前がいるんだ?」
「呼ばれたからに決まってるでしょ。」
美桜は当たり前と言わんばかりに答える。
「やっぱお前らセットだろ。」
「もう一回倒されたいの?」
「あ、いえ、結構。」
美桜は半ギレ状態で答える。ロビンは弱々しい声で拒否する。
「ギャーー!」
部屋の奥から叫び声が聞こえる。
「なんだなんだ?」
「だずげでぇぇ!」
アリスが泣きべそをかきながら飛びついてくる。部屋のほうから見覚えのある茶色のあいつが走ってきた。
「うおおぉぉぉい!」
「なに連れて来てんのあんた!」
3人はパニックになる。茶色のあいつは普通よりも大きく気持ち悪さに拍車がかかっている。
「ロビンなんどがじでえぇぇぇ!」
アリスは泣き叫ぶように助けを求める。
「あんな気持ち悪いのはゴメンだよ!」
「私むじぎらいなんだがらあぁぁ!」
ペシッ!
「「!」」
美桜が新聞で茶色のあいつを潰す。アリスの顔から血の気が引いていく。
「ふう、ふう、一応始末したけど。」
美桜は息を切らしながら報告する。
「………お前勇敢だな。」
ロビンは美桜に称賛の言葉を送る。一方アリスは気絶している。

数分後…
「ん?う~ん。」
アリスは体を伸ばす。ロビンが声をかける。
「やっと起きたか。お前、美桜があいつを潰してからずっと気絶してたぞ。」
「あれ?そうなの?」
「うん。というか寝てたでしょ。」
「いや寝てないよ。うん、きっとそう。」
アリスは目線をそらしながら言う。
(絶対寝てたな。)
(絶対寝てたわね。)
2人は視線を合わせ互いに頷く。
「そういえばなんで俺を呼んだんだ?」
「あと私も。」
2人はアリスに聞く。
「決まってるでしょ、1人じゃ暇なの。それだけ。」
「「はい?」」
2人はキョトンとする。アリスはん?と不思議そうな顔をする。
「こいつ…何考えてるんだ?」
「私も分からない。」
2人は小声でヒソヒソと話す。アリスはキッチンに行き、紅茶を淹れてくる。
「はい、どうぞ。」
「サンキュ。」
「どうも。」
アリスは椅子に座り話をする。
「さっき言った暇だからは嘘。本当は2人とやりたいことがあって呼んだんだ。」
「なんだ?」
「言ってみなさい。」
アリスは笑みを浮かべる。
「今日昼ご飯はどこかに食べに行こうよ~♡」
アリスは体をくねらせながら答える。ロビンと美桜は目が点になる。
「なんで急に?別にいいけど。」
「え?即承諾なの?」
「だって暇なんだもん。」
「この暇人が。」
美桜は再び半ギレになる。
「はぁ。ここまで来たならついて行かないこともないけど。」
「それで、何がたべたいの?」
「これ。」
アリスはスマホの画面を見せる。写っていたのはどこかのカフェだった。
「え?昼飯に甘い物食うのか?」
「あ、ゴメン、間違えた。」
アリスは画面を横になぞる。
「こっち、新しいうどん屋さん。食べてみたかったの。」
「ここは夏限定で開店してるから行く機会が少ないんだ。」
「なんで夏限定なんだ?」
ロビンは純粋な疑問を持つ。うどん屋さんなのでどの時期にも開店しているはずだ。
「一言抜けてたね。ここはざるうどん専門店だよ。」
「なるほど理解した。」
「って言うと思うか?」
「え?」
アリスは動揺する。
「なんだよざるうどん専門店って!聞いたことねえよ!」
「知らないの?」
さっきまで黙っていた美桜が口を開く。
「知らない。」
「まあいいわ。」
「話を途中でやめるな。」
ビシッ!
美桜にデコピンされた。
「やっぱお前ツンデレだろ。」
美桜はロビンの腕を掴む。
「こいつ埋めていい?」
「だめ。」
半ギレの美桜に強気で返すアリス。そして腕を捕まれて必死に抵抗するロビン。
(何この空間?)
ロビンは美桜に2度と変なことを言わないと心に誓った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

残影の艦隊~蝦夷共和国の理想と銀の道

谷鋭二
歴史・時代
この物語の舞台は主に幕末・維新の頃の日本です。物語の主人公榎本武揚は、幕末動乱のさなかにはるばるオランダに渡り、最高の技術、最高のスキル、最高の知識を手にいれ日本に戻ってきます。 しかし榎本がオランダにいる間に幕府の権威は完全に失墜し、やがて大政奉還、鳥羽・伏見の戦いをへて幕府は瓦解します。自然幕臣榎本武揚は行き場を失い、未来は絶望的となります。 榎本は新たな己の居場所を蝦夷(北海道)に見出し、同じく行き場を失った多くの幕臣とともに、蝦夷を開拓し新たなフロンティアを築くという壮大な夢を描きます。しかしやがてはその蝦夷にも薩長の魔の手がのびてくるわけです。 この物語では榎本武揚なる人物が最北に地にいかなる夢を見たか追いかけると同時に、世に言う箱館戦争の後、罪を許された榎本のその後の人生にも光を当ててみたいと思っている次第であります。

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

あなたが選んだのは、私ではない私でした

LIN
ホラー
隣町から引っ越してきたケリーのことを妹のように可愛く思っていた。 私の持っているものを買って「お揃いだね!」と言ったケリーを見て、妹ができたみたいで嬉しかった。だから、我儘なところも笑って許せた。 でも、段々と私に似てくるケリー… 少しずつ感じる違和感… ケリーは一体何がしたかったの?

芭小庵〜夏至

dragon49
大衆娯楽
俳句。

俺様公爵様は平民上がりの男爵令嬢にご執心

狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
五歳の時に男爵である父親に引き取られたセレア。 でもそれは、父がセレアを愛していたわけでも、死んだ愛人(セレア母)に負い目があるからでもなく、セレアが聖女が持つ浄化能力を顕現させたからであった。 国に聖女は何人かいるが、最近瘴気だまりが発生しやすくなっていることもあり、聖女は領地を持つ高位貴族たちから大人気だ。 つまり、自分がのし上がるための政略結婚の道具にしたくて引き取ったのである。 義母は愛人の子であるセレアが気に入らないようで、父がいないところで殴る蹴るの暴力を加えてくる。 義母の子である異母兄は、セレアが成長するにつれていやらしい目で見るようになってきた。 …もう、こんな家にいたくない! そんな思いを抱えながら、セレアは父に連れられてあるパーティーに参加する。父はそこで、二十も年上の好色な侯爵にセレアを紹介し、娶せようと計画しているのだ。 どうやら、セレアと引き換えに、貴族議員に推薦してもらえる約束を取り付けているらしい。それを知ったセレアは、隙を見て逃げだそうと画策する。けれどもその途中、異母兄に見つかり、茂みに連れ込まれてしまう。 「結婚がいやなら俺がかくまってやるよ」舌なめずりで言う異母兄。 絶体絶命! セレアは異母兄から逃げようと抵抗するも、逆に怒らせて殴られて気絶してしまう。 そして次に目を覚ました時、セレアは知らない邸にいた。 なんと、あの場から助けてくれたレマディエ公爵ジルベールに連行され、セレアは彼の邸に連れて来られていたのである。 助けてくれたーーそう思ったのもつかの間、ジルベールは助けてやった礼に妻になれと迫ってくる。 逃げ出したいのに、逃げられない!これってある意味監禁ですよね!? なんとかしてジルベールのもとから逃げ出して、自由を手にしたいのに、彼はあの手この手でセレアの逃亡を阻止してきてーー

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

別れた婚約者が「俺のこと、まだ好きなんだろう?」と復縁せまってきて気持ち悪いんですが

リオール
恋愛
婚約破棄して別れたはずなのに、なぜか元婚約者に復縁迫られてるんですけど!? ※ご都合主義展開 ※全7話  

処理中です...