私のための小説

桜月猫

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94話

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 公と一緒に台までやって来た桜。
 そして、今回の対戦相手は、

「やっぱり勝ち上がってきたね、桜」

 対戦相手の少女は桜を見て笑顔を向けた。
 少女は桜の小学の頃からのライバルでもあるA子だ。

「ちょっと待って、作者」

 A子からストップがかかった。

「なに?」
「なんで私の名前が適当なの?」
「えっ?」

 なんでそんなことを言ってくるのかわからずに私は首を傾げた。

「どうしてそこに疑問をもつの?」
「だって、桜のライバルなのよ。そんな私の名前が適当なのはおかしいでしょ」
「おかしくないよ。だってA子は卓球の大会でのみ出てくるモブなんだから」

 A子が驚きの表情で私を見てきた。

「桜のライバルなのに!?」
「桜のライバルでもよ。
 ただでさえメインキャラ達の名前だけでも混乱してるのに、これ以上混乱するようなことはしたくないわ」

 公と桜が呆れていたが、私にとっては死活問題だ。

「そんな手抜きは許さないから!」
「別にA子に許してもらわなくても勝手に進めるからいいわよ」

 A子が睨み付けてきたが私は気にしない。

「それを言い出したら、名前がついているのに初登場以降全く出てきてないキャラだっているでしょ!」

 A子の指摘に『あ~』と納得する公と桜。

「確かにそんなキャラ達もいるわね」

 それについては否定できないので素直に認めた。

「なら、私にも名前をつけてくれてもいいじゃない!」
「え~」

 私が渋っていると、A子の睨み付けが鋭くなった。

「作者。早く試合を始めたいから渋ってないで名前つけてあげなよ」

 なげやりな感じで言う桜。

「仕方ないな~。じゃあ一子いちこで」
「え~」

 せっかく名前をつけてあげたのに不満げな声をあげる一子。

「不満ならモブ名のA子に戻すけど?」
「さぁ、桜!試合を始めるわよ!」

 納得した一子はウォーミングアップのラリーを桜と始めた。
 ちなみに、過去の公式戦の対戦成績は20戦して桜が11勝、一子が9勝と桜が勝ち越している。

「だからこそ、今日勝って少しでも差を縮める」

 気合い満タンでウォーミングアップをする一子に対し、桜は普段通りだった。
 そうしてウォーミングアップが終わり、桜のサーブで試合が始まった。


          ◇


 その頃、別の台では彩と球がウォーミングアップのラリーをしていた。

「とうとうこの時が来てしまったのね」
「球先輩。全力で勝たせていただきますから」
「私だって負けるつもりはないわよ」

 ウォーミングアップの時点でバチバチと言葉でやりあう彩と球。
 ウォーミングアップも終わり、彩のサーブで試合が始まった。
 試合は一進一退の攻防が続き、1セット目からデュースの展開になった。
 そして10対10からの彩のサーブ。
 彩は速いドライブ回転のサーブを選択するも、球の強烈なスマッシュの餌食になってリターンエースを取られてしまった。
 その強烈なリターンエースに動揺してしまった彩は、その後のラリーも打ち負けて1セット目を落としてしまった。


          ◇


 戻ってきた桜と一子の試合は1セット目は桜が取り、2セット目に入っていた。


          ◇

 彩と球の試合も2セット目に入った。
 1セット目を落としたということもあって、2セット目は彩が積極的に攻撃を仕掛けて主導権を握ると試合を優位に進めた。
 しかし、球だって一方的にやられる気はなく、粘って粘ってなんとか主導権を取り返そうとしたが、最後まで押しきられて2セット目を落としてしまった。
 少しの休憩を挟んで始まった3セット目は2セット目の勢いそのまま彩が攻め立て、球を追い込んでいく。

「くっ!」

 まだ主導権を取り戻せずにいる球はどんどん押されていき、3セット目も連続で彩に取られてしまった。

「よし!」

 連続でセットを取れた彩は小さくガッツポーズをした。
 ラケットを置き、タオルで汗を拭いながら球は軽く深呼吸をした。

「気持ちを切り替えないとね」

 もう1度深呼吸をした球は試合に戻っていった。


          ◇


 桜と一子の試合は5セット目に入っていた。
 セットは桜が3セット、一子が1セット取っていて、5セット目も桜が押していた。


          ◇


 4セット目。
 勢いを取り戻しつつある球は、彩を押し返し始めた。
 そして、4セット目もデュースに入っていった。
 そこからは一進一退の攻防で15対15までやって来た。
 そこで先に仕掛けたのは球で、サーブからの3球目攻撃で得点を取ってゲームポイントを取ると、彩のサーブを速攻のスマッシュでしとめて4セット目を奪った。
 そこで球は少しホッとした。
 その後、互いに1セットずつを取り合った2人。
 そうして始まった最終第7セット。
 ここでも球と彩のし烈な攻防があり、10対9と球がマッチポイントを取った。
 次の1点を取られると負けてしまう彩は気持ちを落ち着かせるために大きく深呼吸をした。
 そして、台についた彩は球のサーブを待った。
 球は遅くバックスピンのかかったサーブをネット際に落とした。
 それを彩はネット際に返すと、球は3球目攻撃で決めにかかったが彩はカウンターでスマッシュを打ち込んだ。
 しかし、そのスマッシュをさらに球がスマッシュで返し、逆カウンターを決めて試合を決めた。

「よし!」

 球は大きくガッツポーズをした。

「おめでとうございます」
「ありがとう」

 彩が手を差し出すと球は笑顔で手を握り返した。


          ◇


 桜と一子の試合は最終的に4対1で桜が勝った。

「ちょっと作者!」
「なに?」
「なんで私達の戦いがメインじゃないのよ!」

 一子が私に迫ってきた。

「だってもともとここの話は球と彩の試合をメインにするつもりだったからよ」
「なんでよ!」
「だってメインの桜とモブの一子の試合をメインにしてもおもしろくないもの」

 一子がキッと睨み付けてきた。

「ほら、一子。終わったんだから戻るわよ」

 桜は一子の襟を掴んでひきずっていった。
 引きずられている一子は桜も睨み付けていた。

「なによ?」
「この前の試合から私も練習をかさねて強くなったはずなのに、なんで桜のほうがもっと強くなってるのよ」

 一子は頬を膨らませた。
 桜は普段から瑠璃・球・彩といういい練習相手がいるおかげで中学の時からさらに強くなったのだ。

「いいじゃない。ここまで勝ち進んだら県大会にいけるんだから」
「そうなんだけど………」

 負けたことでふて腐れている一子に桜は苦笑した。
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