私のための小説

桜月猫

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103話

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 部屋に入った庵は、かごからマイクを取り出した。
 それを見た公達は耳を塞いだ。

「さぁ!遊ぶぞー!」

 予想通りおもいっきり叫んだ庵。
 叫んだことで庵がすっきりしていると、蛙に頭を殴られ、公に腹を殴られ、両にお尻を蹴られた。

「ぐおっ」

 ダメージを受けてうずくまる庵。

「て、テメーら。なにしやがる」

 庵の抗議の言葉に3人はため息を吐いた。

「お前がいきなり叫ぶのが悪い」
「テメーらちゃんとガードしてたじゃねーか」

 庵は机に手をつきながら立ち上がった。

「ガードしたからといって、叫ばれたことに対して怒らないかと言われればそれは別問題なんだよ」

 蛙が頭を叩くと庵は納得したのか何も言ってこなかった。

「さて、じゃあ気合いをいれなおしてストレス発散のために歌うか」

 すぐに復活した庵はリモコンで曲を探し始めた。

「ストレス発散に気合いを入れるってのはおかしいだろ」
「そうだなバカだな。それに、庵にストレスがあるわけないだろ?」
「あぁ。それに付き合わされるこっちはいい迷惑だな」
「悪かったな!」

 叫んだ庵は両を指差した。

「両!俺にもストレスはあるからな!」

 それを聞いた3人は驚いた様子で庵を見た。

「なんだよ!その表情は!ってか!俺のストレスの一端はお前なんだからな!」

 庵に指差された公はわけがわからないとばかりに首を傾げた。
 そんな公にイラッとした庵は拳を握りしめた。

「俺が何をしたっていうんだ?」
「どんどん新しい女の子と仲良くなりやがって!」
「いつも言っているけど、それは俺のせいじゃないからな」
「うるせー!」

 八つ当たりをしながら庵は公を睨み付けていた。

「それに、朧月は夏休みに入ってからデートで俺の呼び出しを拒否しまくってくるし!」
「それってつまり、ただのひがみだろ?」
「うぐっ!」

 両の直球の言葉に庵は胸をおさえた。

 ホントにちっちゃい男ね~。

「うるせー!」

 ほら~。また逆ギレして~。そんなことだから庵はいつまでたってもちっちゃいのよ。あっ。ついでに身長も初期設定の176センチから159センチにまで縮めちゃおっか。

「おい!作者!」

 私に対して怒鳴っている庵の身長がみるみるうちに縮んでいき、159センチの小柄な体格になった。

 あら、かわいい。

「かわいいじゃねーよ!縮んだせいで服もブカブカだし、さっさと元に戻しやがれ!」

 え~。かわいいからいいじゃん。ってか、そっちのほうが女の子にモテるかもしれないよ?

「マジか?」
「中身が庵である以上ムリだろ」
「絶望的だな」
「ドンマイ」
「ウガー!」

 公と蛙の否定の言葉と両の慰めの言葉にキレた庵は立ち上がったのだが、体が縮んで服のサイズがあっていないので、ズボンとパンツがずり落ちて下半身をさらけ出した。

「やっぱりムリだろうな」
「絶望的な変態だな」
「フッ」

 慌ててパンツとズボンを引っ張りあげて下半身を隠した庵は3人を睨んだ。

「俺達のせいじゃないぞ」

 それはわかっているのだが、庵は両をさらに鋭い目で睨み付けた。

「両!さっき笑っただろ!」
「あぁ。すまん。ついおさえきれなくてな。フフッ」
「また笑いやがって!」
「すまんすまん。しかし、小さいな」

 そう言いながらまた「フッ」と笑った両。

「なにが小さいと言うんだ!」

 庵がくってかかると、両はニヤリと笑った。

「ナニが小さいのか、言ってほしいのか?」
「グッ」

 言葉をつまらせた庵は両に迫るのを止めた。

「いい」

 そう言いながら椅子に座り直した庵は、ふてくされてブスッとしながらそっぽを向いた。

「そうか」

 微笑んだ両の視線は公に向いた。

「なんだ?」
「公って庵が八つ当たりするくらいモテるんだな」

 ハーレム王の称号を持ってるからね。

「ちょっと待て!作者!また勝手に変な称号つけやがって!」

 これは主人公補正で自動でつくものだから、初めからついていたわよ。

「結局はテメーのせいだろ!」

 私のせいじゃないのにキレられても困るわよ。

「お前のせいだ!」
「まぁ落ち着けよ、公」

 公の肩に手を乗せながら両は公に接近した。

「そうだな」
「しかし、公がモテるのもわかるぜ」

 徐々に公との距離をつめていく両。

「えっと………」

 両のその行動に戸惑う公。
 すると、ふてくされている庵がその光景を見てボソッと呟いた。

「両って同性愛者だからな」

 静寂に包まれる室内。

「庵。確かに俺は同性愛者だが、異性もイケるんだぜ」
「そうだったな」

 素っ気ない返事をする庵に両はため息を吐いた。

「えっと………。そうなのか?」

 公が戸惑いながらも問いかけると、両は笑顔で頷いた。

「そうだぜ」
「あ~」

 困った表情の公を見て、両は寂しそうに公から離れた。

「やっぱり同性愛者は気持ち悪いか?いや、そうだよな。そんなヤツとはやっぱり友達になんてなれないよな。すまん。黙ってて」

 頭を下げようとした両を公が止めた。

「いや。同性愛者が気持ち悪いとか思わないさ。それも1つの個性だからな。だから、これからも友達としてよろしく」

 ハァハァ。

 公が手を差し出すと、両は嬉しくなって公に抱きついた。

「ありがとう!公!」
「どういたしまして」

 ハァハァ。

 その光景を見ながら庵はふと疑問に思う。

「なぁ、公」
「なんだ?」

 ハァハァ。

 両に抱きつかれたまま公は庵のほうへ視線を向けた。

「同性愛者に偏見がないならなんでさっきは微妙な表情になったんだ?」
「あ~」

 ハァハァ。

 公が頭を掻いていると、両は公から離れてその答えを待った。

「友達としてならいいんだけど、そういう対象に見られても困ると思ってな。俺、ノーマルだし」
「なるほどな」

 ハァハァ。

 納得した両は公へ微笑んだ。

「安心してくれ。ノーマル相手に迫る気はないから。だから、友達としてよろしく」

 両が手を差し出すと、公はその手を握り返した。

 ハァハァ。

「もちろん」

 ハァハァ。

「って!さっきから荒い息づかいがうるせーぞ!作者!」

 ハァハァ。公×両カップリングいいわ!この場合攻めは公!?それとも両!?あー!決められない!このまま別ストーリーで進めるのもアリよね!アリよね!!

『この作者腐ってやがる!』

 えぇ!そうよ!腐ってるわよ!腐った女子ですもの!腐ってなにが悪いのよ!

「開き直りやがった!」
「やべーよ」
「このままホントに別ストーリーいったらどうなるんだよ」

 私の腐り具合におののいている公・庵・蛙の隣では両が平然としていた。

「俺はそっちでもかまわないけど?」
『お前はな!』

 こうなったらトコトン腐るのもいいわね!

「うわっ!本気でそっち方面に行く気か!」

 公が焦っていると、部屋についている電話が鳴り出した。

「こんな時になんだよ!」

 少し怒りながら公が電話に出た。

≪お客様。残り時間あと5分です≫
「はい。ってロマ!?」
≪はい≫
「なんでロマがいるの!?ってか、まだ1曲も歌ってないうえに30分も経ってないはずだけど!?」
<そうだけどね。今マスターは別ストーリーにいこうか悩んでいるから、今のうちにこの話を終わらせるためにカラオケを終わらせて次の104話に行けば別ストーリーを回避できる可能性が出てくると思うよ?>

 マロの言葉に公・庵・蛙の3人は頷きました。

『カラオケを出よう』
「そうだね」

 両も同意したので、4人はすぐに部屋を出ていきました。
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