14 / 15
défendu
伯爵家次男 ロイク・シルヴェストル・シャンデルナゴール
しおりを挟む
「ロイク……?それが…あなたの本当の名前なの?ルイ。」
突然打ち明けられた衝撃的な事実に驚いた様子のアメリーが、ルイ…もといロイクを見つめている。
「ああ。でももうこの名は捨てたんだ。あの家を出てからの俺は貴族なんかじゃない。君の知ってるルイだ。いつか話そうと思っていたんだ。君に隠し事なんかしたくないからね。」
そう言ってロイクは過去の自分を全てアメリーにさらけ出した。
自分はシャンデルナゴール伯爵の次男として生まれ、幼い頃から親の指示通りに生きてきたこと。いずれはどこかの貴族と結婚させられ、シャンデルナゴール家の血筋を残さなければならなかったこと。そして、その全てが嫌になり家も名前も全て捨てて一人で生きていこうと決めたことを。
「…でも、結局1人で生きるなんて無理だった。貴族の世界から出たことが無く市民の生活の厳しさを知らなかった俺は…あの時君に助けられなかったらどこかで野垂れ死んでいただろうね…。ありがとうアメリー。」
ロイクは改めてアメリーに感謝の言葉を伝えた。
そんなロイクを見つめながらアメリーは不安そうな顔をした。
「…あなたが元貴族だということは分かったわ。…でもそうなると、沢山の人があなたを探してるんじゃ……」
アメリーの言う通りだ。
ロイクが家を出てからシャンデルナゴール家の召使達は血眼になってロイクを捜しているに違いない。
今いる場所も安全だとは言いきれない。
「そう…俺があの家の奴らに見つかるのも時間の問題なんだ。だから家を出た当初は色んな街を転々としながらいずれは国境を越えて隣国に逃げるつもりだった……でも……」
言葉の途中でロイクはアメリーを抱き寄せた。
「今の俺には君が居る。君をこの街に残して1人で逃亡するなんて考えられない。」
ロイクがこの世で唯一愛する人であるアメリー。16年の人生の中で初めて人を愛することが出来たのは紛れも無く彼女のお陰だ。そんな大切な人と別れるなど死んでも出来ないとロイクは強く感じていた。
「私も…一緒にこの街を離れればいいの?」
不安そうなアメリー。彼女から体を離しロイクは首を横に振った。
「いや、君はこの街の人達…特に花屋の夫妻にとっては無くてはならない存在だ。俺一人の我儘の為に君を振り回すなんて考えていない。ただ…俺は今まで以上に目立たないよう行動する。外出は仕事と必需品の調達のみに絞って…今までのように君とこの街を歩くことも出来なくなる……。」
つい先日、アメリーと街を歩いている時に嫌な視線を感じたロイク。振り返らずに横目で見るとマクシミリアン家の長男と召使がいたのだ。彼らが自分の両親に告げ口するかもしれない。
「仕事の方はより良い物を仕立てる為に客に見えない部屋で集中したいとかって理由をつけてシェロンさんを説得するつもりだ。休憩時間も部屋に籠って過ごすから…今までみたいに君に会いに行けない……。」
視線を落とすロイク。そんな彼にアメリーは明るく答えた。
「でも、それなら私が会いに行けばいいじゃない!街を散歩出来なくてもあなたと2人なら楽しいわよ!」
無邪気なアメリーの笑顔にロイクは益々罪悪感を覚えた。
「本当に申し訳ない……。君のような素敵な女性は俺のような陰で生きる男じゃなくて堂々と人前を歩ける良い男に大切にされるべきなのに……」
アメリーは15歳。ロイクは年頃の彼女から普通の恋愛を奪っているような気がしてならなかった。それでも自分は彼女無しでは生きられないから別れを告げることも出来ない。しかし、そんな彼のジレンマをアメリーはあっさりとかき消した。
「他の男性なんて興味無いわ!私が好きなのはあなただけよ。」
そう言ってアメリーはロイクの頬にキスをした。ロイクは驚いた表情でアメリーを見た後、彼女をゆっくりと抱き寄せた。
「ありがとう……。俺はこれからも君の恋人…ルイ・シャノワーヌだ。」
その日、アメリーは孤児院へ帰ることは無かった。
突然打ち明けられた衝撃的な事実に驚いた様子のアメリーが、ルイ…もといロイクを見つめている。
「ああ。でももうこの名は捨てたんだ。あの家を出てからの俺は貴族なんかじゃない。君の知ってるルイだ。いつか話そうと思っていたんだ。君に隠し事なんかしたくないからね。」
そう言ってロイクは過去の自分を全てアメリーにさらけ出した。
自分はシャンデルナゴール伯爵の次男として生まれ、幼い頃から親の指示通りに生きてきたこと。いずれはどこかの貴族と結婚させられ、シャンデルナゴール家の血筋を残さなければならなかったこと。そして、その全てが嫌になり家も名前も全て捨てて一人で生きていこうと決めたことを。
「…でも、結局1人で生きるなんて無理だった。貴族の世界から出たことが無く市民の生活の厳しさを知らなかった俺は…あの時君に助けられなかったらどこかで野垂れ死んでいただろうね…。ありがとうアメリー。」
ロイクは改めてアメリーに感謝の言葉を伝えた。
そんなロイクを見つめながらアメリーは不安そうな顔をした。
「…あなたが元貴族だということは分かったわ。…でもそうなると、沢山の人があなたを探してるんじゃ……」
アメリーの言う通りだ。
ロイクが家を出てからシャンデルナゴール家の召使達は血眼になってロイクを捜しているに違いない。
今いる場所も安全だとは言いきれない。
「そう…俺があの家の奴らに見つかるのも時間の問題なんだ。だから家を出た当初は色んな街を転々としながらいずれは国境を越えて隣国に逃げるつもりだった……でも……」
言葉の途中でロイクはアメリーを抱き寄せた。
「今の俺には君が居る。君をこの街に残して1人で逃亡するなんて考えられない。」
ロイクがこの世で唯一愛する人であるアメリー。16年の人生の中で初めて人を愛することが出来たのは紛れも無く彼女のお陰だ。そんな大切な人と別れるなど死んでも出来ないとロイクは強く感じていた。
「私も…一緒にこの街を離れればいいの?」
不安そうなアメリー。彼女から体を離しロイクは首を横に振った。
「いや、君はこの街の人達…特に花屋の夫妻にとっては無くてはならない存在だ。俺一人の我儘の為に君を振り回すなんて考えていない。ただ…俺は今まで以上に目立たないよう行動する。外出は仕事と必需品の調達のみに絞って…今までのように君とこの街を歩くことも出来なくなる……。」
つい先日、アメリーと街を歩いている時に嫌な視線を感じたロイク。振り返らずに横目で見るとマクシミリアン家の長男と召使がいたのだ。彼らが自分の両親に告げ口するかもしれない。
「仕事の方はより良い物を仕立てる為に客に見えない部屋で集中したいとかって理由をつけてシェロンさんを説得するつもりだ。休憩時間も部屋に籠って過ごすから…今までみたいに君に会いに行けない……。」
視線を落とすロイク。そんな彼にアメリーは明るく答えた。
「でも、それなら私が会いに行けばいいじゃない!街を散歩出来なくてもあなたと2人なら楽しいわよ!」
無邪気なアメリーの笑顔にロイクは益々罪悪感を覚えた。
「本当に申し訳ない……。君のような素敵な女性は俺のような陰で生きる男じゃなくて堂々と人前を歩ける良い男に大切にされるべきなのに……」
アメリーは15歳。ロイクは年頃の彼女から普通の恋愛を奪っているような気がしてならなかった。それでも自分は彼女無しでは生きられないから別れを告げることも出来ない。しかし、そんな彼のジレンマをアメリーはあっさりとかき消した。
「他の男性なんて興味無いわ!私が好きなのはあなただけよ。」
そう言ってアメリーはロイクの頬にキスをした。ロイクは驚いた表情でアメリーを見た後、彼女をゆっくりと抱き寄せた。
「ありがとう……。俺はこれからも君の恋人…ルイ・シャノワーヌだ。」
その日、アメリーは孤児院へ帰ることは無かった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
密室島の輪舞曲
葉羽
ミステリー
夏休み、天才高校生の神藤葉羽は幼なじみの望月彩由美とともに、離島にある古い洋館「月影館」を訪れる。その洋館で連続して起きる不可解な密室殺人事件。被害者たちは、内側から完全に施錠された部屋で首吊り死体として発見される。しかし、葉羽は死体の状況に違和感を覚えていた。
洋館には、著名な実業家や学者たち12名が宿泊しており、彼らは謎めいた「月影会」というグループに所属していた。彼らの間で次々と起こる密室殺人。不可解な現象と怪奇的な出来事が重なり、洋館は恐怖の渦に包まれていく。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
ゴーストからの捜査帳
ひなたぼっこ
ミステリー
埼玉県警刑事部捜査一課で働く母を持つアキは、ゴーストを見る能力を持っていた。ある日、県警の廊下で、被害者の幽霊に出くわしたアキは、誰にも知られていない被害者の情報を幽霊本人に託される…。
声の響く洋館
葉羽
ミステリー
神藤葉羽と望月彩由美は、友人の失踪をきっかけに不気味な洋館を訪れる。そこで彼らは、過去の住人たちの声を聞き、その悲劇に導かれる。失踪した友人たちの影を追い、葉羽と彩由美は声の正体を探りながら、過去の未練に囚われた人々の思いを解放するための儀式を行うことを決意する。
彼らは古びた日記を手掛かりに、恐れや不安を乗り越えながら、解放の儀式を成功させる。過去の住人たちが解放される中で、葉羽と彩由美は自らの成長を実感し、新たな未来へと歩み出す。物語は、過去の悲劇を乗り越え、希望に満ちた未来を切り開く二人の姿を描く。
グレイマンションの謎
葉羽
ミステリー
東京の郊外にひっそりと佇む古びた洋館「グレイマンション」。その家には、何代にもわたる名家の歴史と共に、数々の怪奇現象が語り継がれてきた。主人公の神藤葉羽(しんどう はね)は、推理小説を愛する高校生。彼は、ある夏の日、幼馴染の望月彩由美(もちづき あゆみ)と共に、その洋館を訪れることになる。
二人は、グレイマンションにまつわる伝説や噂を確かめるために、館内を探索する。しかし、次第に彼らは奇妙な現象や不気味な出来事に巻き込まれていく。失踪した家族の影がちらつく中、葉羽は自らの推理力を駆使して真相に迫る。果たして、彼らはこの洋館の秘密を解き明かすことができるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる