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1 始まりは突然

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「このバカ者がっ!!!」


罵声がホールに響き渡った。
勢いよく右こぶしを天高く上げて再び男は続けて口を開けた。



「もう貴様なんぞ、未練も、興味もないっ!!即刻この場所から立ち去れっ!!」

「……どうしたのです、アンドレイ様。私が何をしたというのです?」

「いまさら何を言うか。レイジー! 貴様の悪事も此処までだ。私との婚約は破棄する!」



私にそう言い放つと踵をくるりと返し大きく立派な背中を向け立ち去ってしまった。
一体私が何をしたというのです?
どうして個なってしまったのです?



しーんと静まり返った会場―――ここはアシュタリ伯爵家の大広間だった。
私の名前はレイジー・シュタイン。
歳は17。


この国の貴族が通う聖女学園に籍を置き、行く行くは幼馴染の男性と結婚することになっていた。
相手は先程罵声を私に飛ばしたアンドレイ・アシュタリ。
帝王学を学ぶ大学に通っている。
歳は私より5つ上の22歳。



「まぁ…なんて大きな声で……」

「ああ、これであの子も終わったな…」

「あの方に目の敵にされたらこの国に居づらくなろうな」

ヒソヒソと会場にいる綺麗に着飾った令嬢や紳士たちの声が……。


ダメ、私は負けたらダメなんだから。
ここで引き下がるわけにはいかないわっ。




私は心の中でそう叫びながらぐっと胸に手を当ててアンドレイの後ろ姿をじっと見つめた。

いかないでっ!
私を一人にしないでっ!
どうしてこうなってしまったのっ!?

自問自答するが勿論何の前触れもなく事は怒ってしまったのだった。





あれから一週間の時が流れ……私は聖女学園に向かう馬車の中で目が覚めた。
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