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「おい、エリーザ! この期に及んで私対して無礼な事を言いふらしていると聞いたぞっ! どういうことだ、説明しろ」
校舎に入る前に待ち構えていた王太子がわたくしの目の前に現れました。
はてさて何を言っているのでしょう。
どうせアリーシャから訊いたのでしょう。
王太子の幼少期の頃の情けない話を。
全く懲りない人です。
わたくしは言いふらしているわけでもないのです。
一緒に登校していたアンヌとカムランが不安げな顔をしてわたくしの方を見ているのですがわたくしは全く動じません。
澄ました顔をしながらわたくしの前に立ちはだかる王太子の所まで歩き立ち止まりました。
「何を興奮されているのでしょうか。わたくしは言いふらしたりなどしておりませんが……」
わたくしがそう言うと顔を真っ赤にして怒りを露わしながら王太子が話し出しました。
「何を言うかっ。私の事を愚弄していると聞いたぞ。貴様、私を誰だと思っているのだ。エグランド王国の王太子だぞ」
「それは存じておりますわ。そんなに興奮されると頭の血管が切れてしまいますわ。落ち着いて星です。それに周りの人々を良く見て下さいまし。皆様何事かと大騒ぎされておりますわ」
「貴様、そんな悠長なことを言いおってっ!! 私を愚弄するなど国家反逆罪だぞ!!」
「何を……わたくしが何処で何を申せば『国家反逆罪』になるのです? いい加減なことを言いますとここに居る皆様に誤解されますわ。王太子様、気を落ち着きくださいませ」
何を、と王太子がふと周りを見回しました。
すると学園に登校してくる多くの学生たち……全て貴族の子息や令嬢方がヒソヒソ話をしながら王太子を見ておりました。
ここで騒ぎをすればまた国王様の耳に入ることになりお怒りになることが判らないのでしょうか。
わたくしは王太子に一礼するといそいそと校舎の中へ入る為に歩き出しました。
「おい、ちょっと待て、まだ話は終わっておらぬぞ!」
「いい加減にしてください。わたくしは何もしておりません。王太子様の誤解なのです。これ以上騒ぎ立てると本当に取り返しのつかないことになりますわよ?」
「そ、それは……ええい! 話はまた後程ゆっくりさせて貰うからな。覚悟しておけ!」
王太子はそう言って踵を返して校舎の中へ入っていきました。
わたくしはため息をついて本当はもっと言ってやりたかったのを我慢していたのです。
あの場で王太子の恥ずかしい過去をぶちまければ王太子の立場もないでしょう。
しかし、それをするとわたくしにもあらぬ疑いが掛かると思ったのです。
わたくしは未だ王太子の所為で『悪役令嬢』というレッテルを貼られて周りから疎まれた存在なのです。
わたくしのマイナス印象は避けねばなりません。
「メリーザ、大丈夫ですか? あの罵声によく耐えましたわね」
「本当に目の敵にしているのですね、王太子様は……」
「ええ、大丈夫ですわ。二人ともご心配をお掛けしましたわ」
アンヌとカムランには申し訳ないと思っているのです。
わたくしの傍に居るだけであまり良い印象を持たれない上に、あのような場に居合わせてしまったことに……。
二人とも本当に御免なさい。
でもわたくしは立ち向かうことを決めたのです。
これから恐らくもっと王太子の嫌がらせは有るでしょう。
それに立ち向かうためにわたくしはこれからも戦うことを誓ったのです。
「校舎の中へ入りましょう。二人とも行きますわよ」
「「はい」」
二人は笑顔を取り戻しわたくしの横を歩き始めました。
わたくし達が校舎の中へ入っていくのを彼が見ていたのをその時のわたくしは知る由もありませんでした。
彼……エリック・ダグラス。
わたくしの事を機にかけてくれる彼はいったい何者なのでしょうか。
その正体をわたくしは知りませんでした。
校舎に入る前に待ち構えていた王太子がわたくしの目の前に現れました。
はてさて何を言っているのでしょう。
どうせアリーシャから訊いたのでしょう。
王太子の幼少期の頃の情けない話を。
全く懲りない人です。
わたくしは言いふらしているわけでもないのです。
一緒に登校していたアンヌとカムランが不安げな顔をしてわたくしの方を見ているのですがわたくしは全く動じません。
澄ました顔をしながらわたくしの前に立ちはだかる王太子の所まで歩き立ち止まりました。
「何を興奮されているのでしょうか。わたくしは言いふらしたりなどしておりませんが……」
わたくしがそう言うと顔を真っ赤にして怒りを露わしながら王太子が話し出しました。
「何を言うかっ。私の事を愚弄していると聞いたぞ。貴様、私を誰だと思っているのだ。エグランド王国の王太子だぞ」
「それは存じておりますわ。そんなに興奮されると頭の血管が切れてしまいますわ。落ち着いて星です。それに周りの人々を良く見て下さいまし。皆様何事かと大騒ぎされておりますわ」
「貴様、そんな悠長なことを言いおってっ!! 私を愚弄するなど国家反逆罪だぞ!!」
「何を……わたくしが何処で何を申せば『国家反逆罪』になるのです? いい加減なことを言いますとここに居る皆様に誤解されますわ。王太子様、気を落ち着きくださいませ」
何を、と王太子がふと周りを見回しました。
すると学園に登校してくる多くの学生たち……全て貴族の子息や令嬢方がヒソヒソ話をしながら王太子を見ておりました。
ここで騒ぎをすればまた国王様の耳に入ることになりお怒りになることが判らないのでしょうか。
わたくしは王太子に一礼するといそいそと校舎の中へ入る為に歩き出しました。
「おい、ちょっと待て、まだ話は終わっておらぬぞ!」
「いい加減にしてください。わたくしは何もしておりません。王太子様の誤解なのです。これ以上騒ぎ立てると本当に取り返しのつかないことになりますわよ?」
「そ、それは……ええい! 話はまた後程ゆっくりさせて貰うからな。覚悟しておけ!」
王太子はそう言って踵を返して校舎の中へ入っていきました。
わたくしはため息をついて本当はもっと言ってやりたかったのを我慢していたのです。
あの場で王太子の恥ずかしい過去をぶちまければ王太子の立場もないでしょう。
しかし、それをするとわたくしにもあらぬ疑いが掛かると思ったのです。
わたくしは未だ王太子の所為で『悪役令嬢』というレッテルを貼られて周りから疎まれた存在なのです。
わたくしのマイナス印象は避けねばなりません。
「メリーザ、大丈夫ですか? あの罵声によく耐えましたわね」
「本当に目の敵にしているのですね、王太子様は……」
「ええ、大丈夫ですわ。二人ともご心配をお掛けしましたわ」
アンヌとカムランには申し訳ないと思っているのです。
わたくしの傍に居るだけであまり良い印象を持たれない上に、あのような場に居合わせてしまったことに……。
二人とも本当に御免なさい。
でもわたくしは立ち向かうことを決めたのです。
これから恐らくもっと王太子の嫌がらせは有るでしょう。
それに立ち向かうためにわたくしはこれからも戦うことを誓ったのです。
「校舎の中へ入りましょう。二人とも行きますわよ」
「「はい」」
二人は笑顔を取り戻しわたくしの横を歩き始めました。
わたくし達が校舎の中へ入っていくのを彼が見ていたのをその時のわたくしは知る由もありませんでした。
彼……エリック・ダグラス。
わたくしの事を機にかけてくれる彼はいったい何者なのでしょうか。
その正体をわたくしは知りませんでした。
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