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第3章

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突然の王子との婚約の話が出たことを夕食の時にお父様に報告した。
するとお父様の顔色が急に変化した。
何かまずい事でもあったのだろうか。
手にしていたフォークをゆっくり置いてお父様が話し出した。


「そうか……やはりそう来たか。アレーレよ、既にその話が其方に出たということは恐らくヨーク公爵の元にも話が通っておると言う事だ。つまり時間切れと言うことだな」


時間切れ……? いったいどういう事? 


「どういうことなのでしょう、時間切れとは……?」
「うむ。実はな――――」


お父様が言うにはヨーク公爵とは王政に置いて重要な立場の方らしく、以前から王子との婚約の話は上がっていたそうだ。
もしそれが実現してしまえばヨーク公爵よりも立場が上になってしまう。
そうなればヨーク公爵側の人間たちに目を付けられてしまう。
そこでお父様からヨーク公爵に縁談を持ち込んだらしい。
私がヨーク公爵の嫡男と結婚すれば同じ立場として、しかもヨーク公爵側の人たちも抱き込めると踏んだそうだ。まさに政略結婚、と言うやつだった。


「しかし、国王がそのような事を仰る以上其方を王子の妃として差し出すしかなくなるな……」
「すみません。お父様。私は何も知らなかったこととはいえ、とんでもない事になってしまい……」
「良いのだよ。そもそも縁談が上がっていたのは王子の側からだったのだから。私も少し誤った選択をしてしまったのかもしれない。すまない、アレーレ」


お父様との話はそれ以上なく食事を済ませてた。
もし事実を知っていたとしたら私はアンドレ―様と婚約して結婚すればよかったのか、それともこれを気にゴードン家が安泰してより平和な国造りが出来るのか、私は書斎に戻ってそのことを考えていた。


「アレーレ様、今宜しいでしょうか?」


突然男の声が聞こえた。
オロバス? 私は、大丈夫よ、と声を掛けると大きな風が急に吹き出した。
書斎の上に置かれた紙が吹き飛んで私はその風の所為で目を瞑った。


「オロバスでございます。申し訳ありません、突然お声をお掛けしまい……」


急にぱったりと風が止まる。
私は目をゆっくりと開けると目の前に片膝をついて跪く銀髪で黒装束のオロバスを目にした。


「どうしたの、こんな時間に。何事かしら?」


私はそうオロバスに訊ねた。


「一部の魔族がはやり何かを企んでいることが判明致しました。一応公爵様のお耳に入れておいた方が宜しいのかと思いまして」
「それは事実なのですか? 何か証拠があっての事なの?」

オロバスにそう訊ねると目の前で魔法陣が展開された。
そこには魔族達が数名集まり話し合いをしている風景が映し出されていた。


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