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第2章

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それから数日の月日がたった。
私はゴードン家の令嬢として立ち振る舞いに気を付けながら日々を過ごしている。
オロバスはあれ以来姿を私に見せない。
魔族達が今どうなっているのかもわからない。
そんな中再び私は国王様に呼び出されえてしまった。


「アレーレ様。お支度はこれで宜しいのでしょうか?」
「ええ。これでいいわ。それにしてもお父様ではなく私に何の用があるのかしら、国王様……」


マロンもその理由は伝わっていないようだ。
今朝いつもの通りお父様と食事をしていても国王様の事を宜しく伝えてくれ、としか言われなかった。
屋敷の前では王家から直属の部下たちが馬車を囲んで私の事を待っている。
私は颯爽と歩きながら付き人のマロンと共に馬車に乗り込んだ。
屋敷からお城までは数十分と言った距離にある。
ゴードン家は代々王家の政に携わる大臣としての仕事を任されている。
お父様も度々お城に赴き仕事をしながら統領として仕事をこなす忙しい人らしい。
庶民で育った私にはその仕事内容を全く理解できない。


「アレーレ様、もうじきお城に到着致します。私はお城の応接室にてお待ちしております」
「マロンは一緒ではないの?」
「はい。私は侍女の身、国王殿下にお会いになる身分ではないのです」


マロンは私の付き人、そしてゴードン家の侍女だから接見が許されていないという事なんだ。
馬車はゆっくりとお城の門を潜りエントランスで立ち止まった。


「では、行ってらっしゃいませ、アレーレ様」
「すぐ終わるといいのだけれど……」


正直1人は不安だ。
この世界に転生して初めて1人になるのではないかと思う。
王家の執事のジンに案内されて王の間に通され大きな門の前で立ち止まった。


「アレーレ様。ご到着致しました。どうぞ中へお進みください」
「有難う、ジン」


ははっ、と深々と頭を下げ扉をゆっくり開けると部屋の奥に国王様が座っているのが見えた。
私はゆっくりと歩き以前父と来た時に立ち止まった所で足を止めた。


「アレーレ、よく参られた。突然の招集の事、申し訳ない」
「国王様、本日もご機嫌麗しゅう、国王様の為ならばこのアレーレ何時でも参ります」


はっはっは、と大きな声で笑う国王と口元を照れ隠しながら笑う私。
ジンが椅子を用意してくれたのでその椅子に腰かけた。
ジンはその足で王の間を後にした。


「この度はそちの婚儀についての話なのだが、あれからどうだ。進んでおるのか?」

ヨーク公爵の嫡男との婚約について聞かれた私は進展がないことを国王に伝えた。
すると国王の後ろからす~っと黒い人影が合わられたかと思うと目の前に金髪のイケメンが姿を見せた。
王家の紋章が入った服装を身に纏い笑顔で国王の横に立ち私を見つめている。


「国王様、そちらのお方は……?」


私がそう質問すると国王は首を傾げながら話をした。


「忘れたのか? こやつは私の息子、ターバリン王子だ。幼少の頃よく遊んでいたではないか。最近あっていなかった所為でへそを曲げているのか? アレーレ」


私の前の記憶が全くなくまた墓穴を掘ってしまった。
この人が国王の嫡男のターバリン王子なのか。
私は笑いながら誤魔化そうと作り笑いをした。
すると王子が私の所へ歩み寄り目の前で立ち止まった。



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