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第1章
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「マロン。暫く一人にして頂戴。何かあれば呼ぶから」
「畏まりました、アレーレ様。それでは失礼いたします」
マロンは深々と頭を下げて大きな扉を静かに閉じた。
私は何冊か適当に書棚から取り出し席に着いて読み始めた。
どの本も味気ない……と言うより全くなってないのだ。
ただ男同士が手を繋いでどこか旅行に行く話や、隠れて抱き合うだけの話や、魔族討伐の前夜お酒を酌み交わすありきたりの話やら……。
一体全体何なの、よこれはっ。
「前のアレーレはこれを読んで何を思っていたのかしら。全然面白くも萌えもない。これじゃただの子供の作文ね」
そう独り言を呟いているとコンコンとドアをノックする音が部屋に鳴り響いた。
私は部屋にあった時計を目にすると既にお昼時間が過ぎていたようだ。
くだらないと思いつつも本に気を取られてしまい時間の事をすっかり忘れてしまっていた。
「はい。どうぞ」
「失礼致します。お昼のご用意が出来ました」
「分かったわ。すぐ行きます」
私は手にしていた本をそっと静かに閉じた。
「アレーレ様。お昼のご用意が整いましたのでお迎えにあがりました」
澄ました顔をしながらマロンがそう言って一礼した。
私は席を立ちマロンの前で立ち止まると、ご苦労様、と労いの言葉を掛けた。
マロンの案内で食堂に着くと既にお父様が座って私の事を待っている様子。
お父様は笑顔で私を見ると席に座るように私に声を掛けた。
「書斎で勉強とは感心だな、アレーレよ」
開口一番出たのがこの言葉だった。
勉強と言うより部屋中にあったあの味気ないBL本を読みふけっていただけ、何て言える訳もない私は笑顔で会釈した。
目の前に出されたお料理を見て心の中で『凄いお料理だわ。流石貴族ってことね』と感心してしまった。
「それでは頂こうか」
「はい、お父様」
大きなテーブルに私とお父様の2人だけの食事。
周りには侍女たちが数名立ったまま私たちの食事風景を凝視している。
なんだか人に見られている食事っていうもの落ち着かないものね。
私とお父様は黙ったまま、ただ食器とフォークの重なる音だけが静かに鳴り響いていた。
黙ったままの食事も前世でも当たり前だったけれど、転生してもこの恥ずかしさと言うか虚しさってて言うのは変わらないものなのね、私はそう思いながらスプーンでスープを掬い口元に運んだ。
「ところでアレーレよ。この後時間はあるのか?」
お父様がそう訊ねて来た。
本日の私の行動予定について特に何もないか近くにいた侍女に訊ねた。
すると侍女は手帳のようなものをポケットから取り出し私にこの後の予定がないことを伝えてくれた。
「特に何もないようですわ。お父様」
「おお、そうか。実はこれから国王陛下にご挨拶に行かねばならんのだ。其方の成人祝いのお言葉を頂戴することになってな。だから私と一緒についてきてはくれまいか」
いきなり国王様の御前に行くことになってしまった私は心の中でため息をついてしまった。
まだ転生して2日目の出来事って言うのにいきなり国王様と面会することになるとは……。
私とお父様は食事を済ませよそ行きのドレスに着替えると屋敷の前に止まっていた馬車に乗り込みお城に向かった。
馬車に揺られること数分、お父様に連れられてやって来たのは大きなお城の門の前。
門番が馬車の運転手と何やら話を交わすと再び馬車が動き出した。
私の目の前に現れた光景に私は唖然としてしまった。
流石は一国の王様のお城。
東京ディ〇ニーランドの白〇姫のお城なんか目じゃないわ。
つい庶民的な事を考えてしまう私ってやっぱり貴族の娘としては失格なのかしら、そう自暴自棄になってしまったのだった。
「畏まりました、アレーレ様。それでは失礼いたします」
マロンは深々と頭を下げて大きな扉を静かに閉じた。
私は何冊か適当に書棚から取り出し席に着いて読み始めた。
どの本も味気ない……と言うより全くなってないのだ。
ただ男同士が手を繋いでどこか旅行に行く話や、隠れて抱き合うだけの話や、魔族討伐の前夜お酒を酌み交わすありきたりの話やら……。
一体全体何なの、よこれはっ。
「前のアレーレはこれを読んで何を思っていたのかしら。全然面白くも萌えもない。これじゃただの子供の作文ね」
そう独り言を呟いているとコンコンとドアをノックする音が部屋に鳴り響いた。
私は部屋にあった時計を目にすると既にお昼時間が過ぎていたようだ。
くだらないと思いつつも本に気を取られてしまい時間の事をすっかり忘れてしまっていた。
「はい。どうぞ」
「失礼致します。お昼のご用意が出来ました」
「分かったわ。すぐ行きます」
私は手にしていた本をそっと静かに閉じた。
「アレーレ様。お昼のご用意が整いましたのでお迎えにあがりました」
澄ました顔をしながらマロンがそう言って一礼した。
私は席を立ちマロンの前で立ち止まると、ご苦労様、と労いの言葉を掛けた。
マロンの案内で食堂に着くと既にお父様が座って私の事を待っている様子。
お父様は笑顔で私を見ると席に座るように私に声を掛けた。
「書斎で勉強とは感心だな、アレーレよ」
開口一番出たのがこの言葉だった。
勉強と言うより部屋中にあったあの味気ないBL本を読みふけっていただけ、何て言える訳もない私は笑顔で会釈した。
目の前に出されたお料理を見て心の中で『凄いお料理だわ。流石貴族ってことね』と感心してしまった。
「それでは頂こうか」
「はい、お父様」
大きなテーブルに私とお父様の2人だけの食事。
周りには侍女たちが数名立ったまま私たちの食事風景を凝視している。
なんだか人に見られている食事っていうもの落ち着かないものね。
私とお父様は黙ったまま、ただ食器とフォークの重なる音だけが静かに鳴り響いていた。
黙ったままの食事も前世でも当たり前だったけれど、転生してもこの恥ずかしさと言うか虚しさってて言うのは変わらないものなのね、私はそう思いながらスプーンでスープを掬い口元に運んだ。
「ところでアレーレよ。この後時間はあるのか?」
お父様がそう訊ねて来た。
本日の私の行動予定について特に何もないか近くにいた侍女に訊ねた。
すると侍女は手帳のようなものをポケットから取り出し私にこの後の予定がないことを伝えてくれた。
「特に何もないようですわ。お父様」
「おお、そうか。実はこれから国王陛下にご挨拶に行かねばならんのだ。其方の成人祝いのお言葉を頂戴することになってな。だから私と一緒についてきてはくれまいか」
いきなり国王様の御前に行くことになってしまった私は心の中でため息をついてしまった。
まだ転生して2日目の出来事って言うのにいきなり国王様と面会することになるとは……。
私とお父様は食事を済ませよそ行きのドレスに着替えると屋敷の前に止まっていた馬車に乗り込みお城に向かった。
馬車に揺られること数分、お父様に連れられてやって来たのは大きなお城の門の前。
門番が馬車の運転手と何やら話を交わすと再び馬車が動き出した。
私の目の前に現れた光景に私は唖然としてしまった。
流石は一国の王様のお城。
東京ディ〇ニーランドの白〇姫のお城なんか目じゃないわ。
つい庶民的な事を考えてしまう私ってやっぱり貴族の娘としては失格なのかしら、そう自暴自棄になってしまったのだった。
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