5 / 80
第1章
5
しおりを挟む
「何かしら?」
私は部屋に入って来た侍女にそう言うといつもの入浴時間に私が現れないのを心配になり失礼を承知の上私の部屋を訪ねて来たということらしい。
私の行動は常に誰かが把握されているのだとその時知ることが出来た。
これも又公爵家の娘として必要な情報だ。
「アレーレ様。お支度がまだでしたらまた後程伺いますが……」
「あ、良いの。今から支度をしてそちらに伺うことにするわ」
私がそう言うと侍女が不思議そうな顔をして私を見つめていた。
違うの?
この答えは間違ってるの?
いつもの私ってどういう振る舞いをしてるか全然分かんない。
と言うより前の私ってどんだけ悪役な振る舞いしてたっていうのよ。
マロンにお風呂の支度を指示するとてきぱきと下着やらなんやらを手にして直ぐ私の元に戻って来た。
「さ、行きましょ。マロン」
「私ではなく、お風呂はサロン姉様が担当しておりますので……」
サロン……ああ、今さっきこの部屋に入って来たこの子のことか。
なるほどね、様々な事柄によっては担当が変わるシステムってことなのね。
中々厄介だわ、この世界のお嬢様ってのは。
マロンの姉だというサロンにお風呂場まで案内して貰うと大きな扉の前で立ち止まった。
「ここはお風呂場なのね……」
(なんて大きな扉なのかしら……)
「アレーレ様。私共がご奉仕させて頂きます……」
「ご、ご奉仕!?」
「はい。いつも以上に丁寧に……」
ちょ、ちょっと待って?
それってどういう事するっていうの!?
まさか……。
「サロン。いつも通りとは。具体的に何をして下さるの?」
え? と言う顔をするサロン。
「お風呂はいつも私共侍女がアレーレ様のお身体を丁寧に洗わせて頂いているではありませんか。それとも私共のご奉仕ではご不満なのでしょうか……」
ええっ!!
マジでなの?
一人でお風呂くらい入れるって言いたいっ。
貧相な裸体を人様の前に晒すなんてまるで罰ゲームそのものじゃない。
これがこの世界…というよりこの家のやり方とでもいうの!?
「あの…え~と、一人で、入りたい…な…」
私は小さな声でそう呟いた。
するとそれを聞いていたサロンが驚いた表情で私を見つめた。
そのいちいち驚くの止めてくれないかな……。
私こっちに来てまだ数時間しか経ってないのよ。
大体令嬢って言うのがいまいちまだ分かってないんだから。
「アレーレ様、どこかご気分でも悪いのでしょうか。いつもなら『早く洗って頂戴。汗で私の綺麗な肌が荒れちゃうじゃない』と仰るのですが……」
「そうですっ。いつもなら『自分で身体を洗うとか本当に面倒くさいったないわ。さっさと洗って頂戴』と私共にご命令なさるのに……」
サロンの他に二人の侍女のうち一人がそう言った。
そういうキャラなのか……アレーレって。
暫く考えた挙句いつも通りにしていないといけない気がしたので、観念し腹を括った私は侍女たちにお願いしてこのみすぼらしい身体を洗って貰うことにした。
裸になった私を連れて侍女三人で私の腕や胸、お尻や背中、長い髪の毛を洗って貰う私。
目の前に有る大きな鏡に映る私の顔をその時初めて見た。
綺麗なブロンズの長髪に緑の瞳、ブロンズの眉毛に長い睫毛、整った顔立ち。
それに生前は小さな胸でお腹が少し出ていた隠れぽっちゃりな私だったはずが、今の私は胸も大きくそれにお腹もしゅっとして素晴らしいプロポーションだったのだ。
前世の私とは似ても似つかない美人が私の目の前に……ってこれ私だ。
転生してよかったぁ~、この時初めてあの時子猫を助けようと良い事をしたのご褒美を貰えてた気がした。
「えっと、貴女お名前は?」
私の腕を洗っている侍女にそう訊ねた。
すると不思議そうな顔をしながら『モロ』と名乗った。
そしてもう一人は空気を呼んだのか自らを『ソロ』と名乗った。
モロとソロとサロンか。なんだか変な名前だわね。
私はそう思いながら綺麗になった身体、長い髪の毛は上で纏めて広い湯船に肩まで浸かった。
「はぁ~、いい気持いいわぁ~」
「お湯加減はいかがですか、アレーレ様」
「上出来よ、モロ、ソロ、サロン」
「「「有難き幸せ」」」
三人同時に頭を下げてそう言った。
なんだかまるで日本でいうところの時代劇に出てくるお姫様気分。
さっきまではとっても窮屈で仕方がなかったのだけれどお風呂だけは天国そのものって感じね。
しっかりお風呂を頂いた私は湯船から上がり三人の侍女に身体を拭いて貰うとネグリジェのような薄い生地のパジャマに着替えてお風呂場を後にした。
今日はなんだか色々あってか相当疲れてしまった私はそののま寝室にある一人では広すぎる豪華なベッドで横になった。
侍女たちは何か用事があればこの金色の鐘を鳴らすようにとベッドの傍にある机の上に置いて部屋を後にした。
私は部屋に入って来た侍女にそう言うといつもの入浴時間に私が現れないのを心配になり失礼を承知の上私の部屋を訪ねて来たということらしい。
私の行動は常に誰かが把握されているのだとその時知ることが出来た。
これも又公爵家の娘として必要な情報だ。
「アレーレ様。お支度がまだでしたらまた後程伺いますが……」
「あ、良いの。今から支度をしてそちらに伺うことにするわ」
私がそう言うと侍女が不思議そうな顔をして私を見つめていた。
違うの?
この答えは間違ってるの?
いつもの私ってどういう振る舞いをしてるか全然分かんない。
と言うより前の私ってどんだけ悪役な振る舞いしてたっていうのよ。
マロンにお風呂の支度を指示するとてきぱきと下着やらなんやらを手にして直ぐ私の元に戻って来た。
「さ、行きましょ。マロン」
「私ではなく、お風呂はサロン姉様が担当しておりますので……」
サロン……ああ、今さっきこの部屋に入って来たこの子のことか。
なるほどね、様々な事柄によっては担当が変わるシステムってことなのね。
中々厄介だわ、この世界のお嬢様ってのは。
マロンの姉だというサロンにお風呂場まで案内して貰うと大きな扉の前で立ち止まった。
「ここはお風呂場なのね……」
(なんて大きな扉なのかしら……)
「アレーレ様。私共がご奉仕させて頂きます……」
「ご、ご奉仕!?」
「はい。いつも以上に丁寧に……」
ちょ、ちょっと待って?
それってどういう事するっていうの!?
まさか……。
「サロン。いつも通りとは。具体的に何をして下さるの?」
え? と言う顔をするサロン。
「お風呂はいつも私共侍女がアレーレ様のお身体を丁寧に洗わせて頂いているではありませんか。それとも私共のご奉仕ではご不満なのでしょうか……」
ええっ!!
マジでなの?
一人でお風呂くらい入れるって言いたいっ。
貧相な裸体を人様の前に晒すなんてまるで罰ゲームそのものじゃない。
これがこの世界…というよりこの家のやり方とでもいうの!?
「あの…え~と、一人で、入りたい…な…」
私は小さな声でそう呟いた。
するとそれを聞いていたサロンが驚いた表情で私を見つめた。
そのいちいち驚くの止めてくれないかな……。
私こっちに来てまだ数時間しか経ってないのよ。
大体令嬢って言うのがいまいちまだ分かってないんだから。
「アレーレ様、どこかご気分でも悪いのでしょうか。いつもなら『早く洗って頂戴。汗で私の綺麗な肌が荒れちゃうじゃない』と仰るのですが……」
「そうですっ。いつもなら『自分で身体を洗うとか本当に面倒くさいったないわ。さっさと洗って頂戴』と私共にご命令なさるのに……」
サロンの他に二人の侍女のうち一人がそう言った。
そういうキャラなのか……アレーレって。
暫く考えた挙句いつも通りにしていないといけない気がしたので、観念し腹を括った私は侍女たちにお願いしてこのみすぼらしい身体を洗って貰うことにした。
裸になった私を連れて侍女三人で私の腕や胸、お尻や背中、長い髪の毛を洗って貰う私。
目の前に有る大きな鏡に映る私の顔をその時初めて見た。
綺麗なブロンズの長髪に緑の瞳、ブロンズの眉毛に長い睫毛、整った顔立ち。
それに生前は小さな胸でお腹が少し出ていた隠れぽっちゃりな私だったはずが、今の私は胸も大きくそれにお腹もしゅっとして素晴らしいプロポーションだったのだ。
前世の私とは似ても似つかない美人が私の目の前に……ってこれ私だ。
転生してよかったぁ~、この時初めてあの時子猫を助けようと良い事をしたのご褒美を貰えてた気がした。
「えっと、貴女お名前は?」
私の腕を洗っている侍女にそう訊ねた。
すると不思議そうな顔をしながら『モロ』と名乗った。
そしてもう一人は空気を呼んだのか自らを『ソロ』と名乗った。
モロとソロとサロンか。なんだか変な名前だわね。
私はそう思いながら綺麗になった身体、長い髪の毛は上で纏めて広い湯船に肩まで浸かった。
「はぁ~、いい気持いいわぁ~」
「お湯加減はいかがですか、アレーレ様」
「上出来よ、モロ、ソロ、サロン」
「「「有難き幸せ」」」
三人同時に頭を下げてそう言った。
なんだかまるで日本でいうところの時代劇に出てくるお姫様気分。
さっきまではとっても窮屈で仕方がなかったのだけれどお風呂だけは天国そのものって感じね。
しっかりお風呂を頂いた私は湯船から上がり三人の侍女に身体を拭いて貰うとネグリジェのような薄い生地のパジャマに着替えてお風呂場を後にした。
今日はなんだか色々あってか相当疲れてしまった私はそののま寝室にある一人では広すぎる豪華なベッドで横になった。
侍女たちは何か用事があればこの金色の鐘を鳴らすようにとベッドの傍にある机の上に置いて部屋を後にした。
0
お気に入りに追加
857
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司に恋していいですか?
茜色
恋愛
恋愛に臆病な28歳のOL椎名澪(しいな みお)は、かつて自分をフッた男性が別の女性と結婚するという噂を聞く。ますます自信を失い落ち込んだ日々を送っていた澪は、仕事で大きなミスを犯してしまう。ことの重大さに動揺する澪の窮地を救ってくれたのは、以前から密かに憧れていた課長の成瀬昇吾(なるせ しょうご)だった。
澪より7歳年上の成瀬は、仕事もできてモテるのに何故か未だに独身で謎の多い人物。澪は自分など相手にされないと遠慮しつつ、仕事を通して一緒に過ごすうちに、成瀬に惹かれる想いを抑えられなくなっていく。けれども社内には、成瀬に関する気になる噂があって・・・。
※ R18描写は後半まで出てきません。「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。
婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?
もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。
王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト
悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。
変態王子&モブ令嬢 番外編
咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と
「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の
番外編集です。
本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。
「小説家になろう」でも公開しています。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。
義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる