庶民OLの私にはやっぱり公爵家の悪役令嬢には不向きなようです

杏仁豆腐

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第1章

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「よくぞここまで成長してくれた。アレーレよ。今宵で其方は18歳となり大人の女性として成人した。今宵は其方の成人祝いである。大いに楽しんでくれ」

気が付くと大きなお屋敷にの中で片膝をついて跪いている私がいた。
目の前に大きくガタイの良い体型で白鬚を生やした如何にもお金持ちな男性が立派な椅子に腰かけ笑顔を振りまいている。
ここは何処? 
私はどうしちゃったの。
頭の中がぐるぐるかき乱れている。






* * * * * *

私は東京の千代田区にある実家に暮らしていて、三つ葉商事という会社に勤めているOLだ。
名前は本田芹那ほんだ せりな
今年で24になる独身、つまり彼氏無しという寂しい女。
いつものように今朝家を出て電車に揺られ会社の前の横断歩道で信号待ちをしている時、一匹の子猫が中央分離帯で右往左往しているのを偶然にも見かけてしまった。
横断歩道の信号待ちをしている大勢の人々が子猫が可哀そうだの、誰か助けてやれだのを騒いでいるのが聞こえ、可哀そうだと思うなら自分たちが助けに行けばなどと思ってしまった。
しかし横断歩道の信号がまだ赤のままだったにも関わらずこの日に限って自然と体が勝手に子猫の元へ走ってしまっていたのだ。

きき―っ!
どかんっ!
ピーポーピーポー……。

大きなブレーキ音と私の身体がトラックのボンネットに強く当たり宙に浮いてそのまま地面に叩き付けられたところまでははっきり覚えている。
しかしその後気が付いたら先程の状況に変わっていた。









* * * * * 

「どうした? アレーレよ。気分でも悪いのか?」


目の前の大男が私の顔色を伺い心配そうな表情を浮かべている。
私は黙ったまま左右に首を振りゆっくりと立ち上がった。
周りを見回すと綺麗なドレスを身に纏った女性たちと貴族スタイルの男性たちが大勢私を見つめている。


「私はどうしてこんなところへ?」


ついそう口走ってしまった。
それを訊き目の前に座っていた男性が立ち上がり私に近寄って来る。
体調が悪いのかと又訊ねられたので今度は頭を上下に振った。
どの人もヨーロッパ諸国に暮らしていそうな外国人ばかり。
この屋敷の侍女(大きな屋敷に女性使用人と言えば侍女でしょ)3人に連れられ別室へと向かった。
大きな扉を開けると映画でよく見る屋根付きのベッドの上に座らされた。


「アレーレ様。ご気分はいかかですか? お水をお持ちしましょうか?」
「え、ええ。お願いするわ」


相手の言葉が理解出来、私もこの人たちの言葉を話せるようだ。
侍女が持って来てくれたコップを手渡され私は水を一杯飲むと急に目の前が真っ暗になってそのままベッドの上に倒れてしまった。


「芹那よ。分かりますか? 私の声が届いていますか?」
「だ、誰?」
「ああ、やっと私の声が届いたようですね。私が見えますか?」


女性の優しそうな声が聞こえ目を開けると目の前に白のドレスのような服を身に纏った女性が立っていた。
私は目を擦り瞬きをしてその女性を見つめた。
間違いなく白い服を着た女性が私の目の前に立っている。
女性は優しく微笑み話の続きをし始めた。



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