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パーティ―が始まりました。
取り敢えず私の疑念が払しょくされたことはいいことだと思ったのですが、新しい婚約予定者が12歳だったの事には驚きでした。
私は17…釣り合うのでしょうか。
とても不安です。

多くの貴族たちが華やかに立食パーティーをしている中私は一人窓際に立っていました。
一人になりたかったのです。
緊張もありましたし、不安もありましたからどっと疲れが出て来てしまいました。

私が1人で部屋の窓の外を眺めていると私を呼ぶ声が聞こえました。

「舞殿。疲れておいでか?」
「あ、はい…少し緊張していて疲れが……」
「まぁ、あれだけの人数の中で意見がしっかり言えたのだ。立派だったと思う」
「有難う御座います。アルフォンド様」

アルフォンド家のご長男であるアーバント様が私に声をかけて下さったのです。
この人があの時助け船を出してくれなかったら私の言葉なんて誰も信用してくれなかったでしょう。
この人には頭が上がりません。
本当に有り難いです。

「しかし、隣国の事とは言え、舞殿にあのような噂を垂れ流すとはなんと下品な輩だと思ったよ」
「私には突然の事でしたので全く……身に覚えがないので……」
「大丈夫。あのような噂、誰が信じるものか。舞殿には私の弟との婚儀に向けて色々頑張ってもらわねばなるまい」
「私にそのような大役、出来ますでしょうか…」
「出来るとも。そうだ。舞殿は学園に通ってはおらんと訊いたが何故なのですか?」

学園…この国には貴族専用の学園が存在していました。
私は使用人から養女となったばかりだったのでまずはお屋敷でリンさんから色々学んでおりました。
そろそろ学園に行った方がいいとお父様もお母様にも言われていたのですが、一人になるのがとても不安だったので勇気がなく……。

「舞殿?どうかなされたか?」
「あ、いえ、大丈夫です。お父様方にも学園に通うよう言われておりました」
「そうか。私は学園の3年目を迎えていて、今では学園の生徒会長をしているのです。もし舞殿がご入学なさるなら大歓迎ですよ」
「それは、心強いです。私には友達がおりません故…」
「友など直ぐに出来ますよ。一週間もあれば大勢の人たちから祝福されると思います」
「そうでしょうか…私は人見知りもあるので…」
「人見知り?それはどういうことですか?」

人見知りが通じない。
どのように説明すればいいのかとても考えがまとまらなかったのです。
取り敢えず人と触れ合うことが苦手だと言っておきました。

アーバント様との会話はその後も続いておりましたが学園の話ばかりでした。
私は疲れもあってか話の途中で気分が悪くなってしまいその場を離れることにしました。

学園…日本でも学生だったけど楽しかったという思いではないな…。
そんなことを考えながらソファーに座りパーティーが終わるのを待ち続けました。
一度神様に連絡を取った方がいいと思った私はソファーから立ち上がり部屋を出て廊下の隅に隠れるようにしながら携帯を取り出しました。
神様、出てくれるかしら……。


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