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第7話 貴族の呼び出し

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面倒くさいことになったな。俺はそう思いながら頭に手を置いて苦笑いした。この人の立場がどの程度偉いのか分からないからあまり変な態度も出来ない。俺は一呼吸置いてから話し出した。

「私が貴族であることについては周知していなかったこちらの不手際。お気になさらず。一度屋敷に顔を出します。ご迷惑をおかけして申し訳ない。ところであなたはこのギルドの管理者なのですか?」

 俺の質問に男性職員は答えた。

「はい。私はこのギルド会館のギルドマスターです。寛大のご対応痛み入ります。それで魔物の討伐による素材なのですが、ギルドで買い取りということでよろしいでしょうか?こちらが全て解体します。素材が欲しいとかのご要望などありますでしょうか?」

 魔物の素材か。ある程度もっておいたほうが武器やクラフトをすることが出来る。俺は魔物の素材の3分1を要求し了承された。今回の件についての契約書を交わし終えると討伐に対する報酬と素材の買い取り金額を受け取った。確認すると全部で金貨1200枚だった。この世界の通貨価値は金貨1枚で日本円で100000円相当。今回の報酬が高額なのかがわかる。全ての事象を終えるとギルマスと握手を交わして応接室を後にした。素材を受け取るのは明日にして俺は宿へ戻った。その日の夜の宿屋の食堂は騒々しかった。俺の活躍を祝うということで大騒ぎ。祝賀会が終わったのは真夜中だった。俺は飲みすぎと疲労感でベッドの上に倒れこんだ。

翌朝、俺は食堂で朝食を済ませると荷物をもってギルド会館に向かった。受付のソフィさんが俺が来たことに気づくと速足で近づいてきた。

「お、おはようございます!ホープ様。素材の受け取り、ですよね?こちらです。ご案内します」

 なんだかいつもよりよそよそしい対応に違和感を覚えた。恐らく俺が貴族の息子だとわかったからだろう。俺は黙ってソフィさんの後ろについていった。ギルド会館の外にある倉庫に案内された。

「こちらです。すでにホープ様の素材は纏めてあります。どうぞ、お受け取り下さいませ」

「ああ。有難うございます」

 俺は纏めてある袋を手にしてアイテムボックスに収納した。するとそれを見ていたソフィが大きな声で驚いた。どうしたのかと俺もその声に驚いてしまった。

「どうかしましたか?」

 俺は驚きの表情のまま膠着したソフィに声を掛けた。するとソフィはゆっくりと口を開いた。

「そ、それって…。アイテム…ボックス、ですか?」

「ええ。そうです。何か問題ですか?」

「この世界にそれをお持ちの方は数人と言われている超レアアイテムなんですよ!それを持っていることに驚いてしまいました。大きな声を出してごめんなさい。」

 なるほど。この世界にはアイテムボックスは超貴重品なのだ。恐らく国宝級なのだろう。俺は気にしないでと声掛けをして後ソフィと挨拶を交わして屋敷に向かった。この世界についてまだわからないことが多くあることが分かったのはいい収穫だと思った。暫くすると屋敷に到着した。玄関の扉をノックすると大きな扉が開いた。対応してくれたのは侍女のメアリーヌだった。俺の突然の訪問驚き口元に手を当てて涙を流しだした。俺はその姿を見るだけになっていると後ろから母親がやってきた。

「ホープ!お帰りなさい!凄く心配していたのよ!?体は大丈夫なの?怪我はしていない?」

 心配する母の後ろで涙を流すだけその場で動こうとしないメアリーヌ。彼女も心配していたのだろう。彼女は幼少期から俺の専属メイドなのだから。母親に心配しないでいいことと、怪我もしていないことを伝えた。そして動こうとしないメアリーヌの前で俺はそっと頬に手を添えた。びっくりした表情をする彼女に俺は優しく囁くように話した。

「メアリーヌ、心配かけたな。すまない。でも俺は大丈夫だから。立派に冒険者をしているよ。だから涙をお拭き」

「…はい。ホープ様」

 彼女はポケットからハンカチを取り出し涙を拭う。使用人以外他の家族は全てで払っているとのことだったので宿に戻ると伝えると母親が俺の腕を掴んだ。

「ホープ。今日はこちらで泊っていかない?お父様や兄弟たちと会ってほしいの。大事な話をしたいの。だから貴方を呼び出したの。ダメかしら?」

 話があったのか。ちょっと嫌な感じがしたが親の頼み事に対して卑下することは出来ない。俺は皆が揃うまでここに滞在するが、話が終わったら宿に戻ることを条件に伝えた。母親は不満げな顔だったが、俺の頑固に負け条件を了承した。暫く自室で待機している時間に新たな知識を吸収するため読書をして時間潰しをした。。

 その後夕食の時刻になり家族が全員揃ったところで食事をすることになった。他愛のない話をしながら食べた後父親から話があると話し出した。

「ホープ、実はお前に頼みたいことがあってきてもらった。先日大量の魔物を討伐したそうだな。一人で討伐出来る数ではないと報告を受けている。本当に危ないことをして親を心配させないでほしいものだ」

 そう言ってため息をついて俺を心配そうに見つめていた。隣にいた母親も頬に手を当てながら不安そうな表情をしている。周りの兄弟たちも同じような表情をしていた。さらに話は続いていく。
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