44 / 52
本編 魔神の誕生と滅びの帝都
44 胴体が別になった部隊の別働隊
しおりを挟む
そこにはオーク達だった残骸が散らばっていた。
すでに逃げ出しているゴブリン達。
俺は追撃をかけるため、再び魔術回路を構成する。
氷の魔術回路に誘導オプションを付け、逃げ出すゴブリンの一匹に向け発動し・・・ない。
「この辺りの魔力を使い切ったか。」
俺は追撃を諦める。
ゴブリン達が逃げずに弓を射かけてきていれば、俺たちは為す術も無かっただろう。
今回は何とかなったが、これからは力配分を考えないといけないようだ。
そして俺自身の疲労もそれなりにある。
複雑な魔術回路をテレキネシスで構成するのは、かなり脳に負担をかける。
疑似魔術回路の構成の少しのミスが命取りになりかねない。
ふとオーク達の残骸の陰に動く者を発見する。
敵の生き残りか?
「ひぃぃぃ。」
俺が確認のため近づくと、そんな声が聞こえた。
声の先を見ると、どうやら魔物では無い。
人間の姿をしているが、おそらく魔族だ。
「どうやらさっきの魔物の指揮はお前が執っていたようだな。」
俺は魔族の男に話しかけた。
魔族の男は歯をガチガチと鳴らし、這いずりながら必死に俺から遠ざかろうとする。
「そんなに慌てなくていい。
見逃してやるよ。
その代わり少し教えてくれ。」
俺は魔法が使えない状態になっているが、悟られるわけにはいかない。
余裕のある態度で臨む。
「な、なんだ?」
怯えながらも言葉を返す魔族。
妙な訛(なま)りがあるのは、魔族特有のものだろうか?
「東側にお前達がいたと言うことは、もしかしてこの先もお祭り会場になっていたりするのか?」
「そ、そうだ。
モタモタしていたら別働隊がやってくるぞ。
クミシュ砦を落とすための部隊だ。
もし命を助けてくれるなら、あんた達のことは黙っておくよ。
絶対に何も言わない、絶対だ!」
必死に命乞いをする魔族の男。
その言葉をそれほど信用するつもりは無いが、この先に別働隊がいるのは本当だろう。
しかし矛盾がある。
クミシュ砦を落とすのなら、多少モタモタしていたところでこっちにやってくることは無い。
砦の件は本当で、こちらにやってくるのは嘘だ。
「そうか、参考になった。
俺の名はギスケだ。
魔王に会ったら伝えておけ。」
俺はそう言って、踵を返す。
余裕を見せつけるためだ。
ここで魔法が使えないことを悟られると、一気に形勢が逆転してしまう。
俺が一歩また一歩と離れていっても、不意打ちをかけてくる気配は無い。
どうやら上手くいったようだ。
一時はどうなるかと思ったが、なんとか危機は乗り越えた。
そして俺とエスフェリアとアグレスの三名は、目標であるクミシュ砦に向けて進む。
すでに逃げ出しているゴブリン達。
俺は追撃をかけるため、再び魔術回路を構成する。
氷の魔術回路に誘導オプションを付け、逃げ出すゴブリンの一匹に向け発動し・・・ない。
「この辺りの魔力を使い切ったか。」
俺は追撃を諦める。
ゴブリン達が逃げずに弓を射かけてきていれば、俺たちは為す術も無かっただろう。
今回は何とかなったが、これからは力配分を考えないといけないようだ。
そして俺自身の疲労もそれなりにある。
複雑な魔術回路をテレキネシスで構成するのは、かなり脳に負担をかける。
疑似魔術回路の構成の少しのミスが命取りになりかねない。
ふとオーク達の残骸の陰に動く者を発見する。
敵の生き残りか?
「ひぃぃぃ。」
俺が確認のため近づくと、そんな声が聞こえた。
声の先を見ると、どうやら魔物では無い。
人間の姿をしているが、おそらく魔族だ。
「どうやらさっきの魔物の指揮はお前が執っていたようだな。」
俺は魔族の男に話しかけた。
魔族の男は歯をガチガチと鳴らし、這いずりながら必死に俺から遠ざかろうとする。
「そんなに慌てなくていい。
見逃してやるよ。
その代わり少し教えてくれ。」
俺は魔法が使えない状態になっているが、悟られるわけにはいかない。
余裕のある態度で臨む。
「な、なんだ?」
怯えながらも言葉を返す魔族。
妙な訛(なま)りがあるのは、魔族特有のものだろうか?
「東側にお前達がいたと言うことは、もしかしてこの先もお祭り会場になっていたりするのか?」
「そ、そうだ。
モタモタしていたら別働隊がやってくるぞ。
クミシュ砦を落とすための部隊だ。
もし命を助けてくれるなら、あんた達のことは黙っておくよ。
絶対に何も言わない、絶対だ!」
必死に命乞いをする魔族の男。
その言葉をそれほど信用するつもりは無いが、この先に別働隊がいるのは本当だろう。
しかし矛盾がある。
クミシュ砦を落とすのなら、多少モタモタしていたところでこっちにやってくることは無い。
砦の件は本当で、こちらにやってくるのは嘘だ。
「そうか、参考になった。
俺の名はギスケだ。
魔王に会ったら伝えておけ。」
俺はそう言って、踵を返す。
余裕を見せつけるためだ。
ここで魔法が使えないことを悟られると、一気に形勢が逆転してしまう。
俺が一歩また一歩と離れていっても、不意打ちをかけてくる気配は無い。
どうやら上手くいったようだ。
一時はどうなるかと思ったが、なんとか危機は乗り越えた。
そして俺とエスフェリアとアグレスの三名は、目標であるクミシュ砦に向けて進む。
0
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
転生先は水神様の眷属様!?
お花見茶
ファンタジー
高校二年生の夏、私――弥生は子供をかばってトラックにはねられる。気がつくと、目の前には超絶イケメンが!!面食いの私にはたまりません!!その超絶イケメンは私がこれから行く世界の水の神様らしい。
……眷属?貴方の?そんなのYESに決まってるでしょう!!え?この子達育てるの?私が?私にしか頼めない?もう、そんなに褒めたって何も出てきませんよぉ〜♪もちろんです、きちんと育ててみせましょう!!チョロいとか言うなや。
……ところでこの子達誰ですか?え、子供!?私の!?
°·✽·°·✽·°·✽·°·✽·°·✽·°
◈不定期投稿です
◈感想送ってくれると嬉しいです
◈誤字脱字あったら教えてください
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい
広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」
「え?」
「は?」
「いせかい……?」
異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。
ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。
そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!?
異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。
時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。
目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』
半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。
そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。
伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。
信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。
少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。
====
※お気に入り、感想がありましたら励みになります
※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。
※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります
※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる