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本編 魔神の誕生と滅びの帝都
39 ぎりぎりになっても義理堅い
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薄汚れた五つ星スイートに滞在する俺とエスフェリア。
彼女は皇女らしく、黄色を主体としたドレスをまとっている。
この国では身分の高いもの以外、衣服に黄色を使ってはいけないという規則があるらしい。
この場ではかなり違和感のある格好だ。
「さてとりあえず捕まってみたけど、これからどうするんだ?」
俺はボーイに聞こえない声でエスフェリアに話しかけた。
「しばらく待機です。
明日になると魔王の軍勢が帝都目前になり、かなりの混乱が生じます。」
エスフェリアはその場に座り込む。
「そうか。
こんな状況だが、飯はちゃんと出るのかな?
ここのパンと豆スープは絶品だぞ。
エスフェリアがあれを食べたら、皇族初の快挙になるだろうな。」
俺はボーイに感づかれないように、探知魔法を発動させる。
間抜けなことに、魔晶石の粉は回収されていない。
そして魔力封じの枷は、俺に何の効力ももたらしていない。
いや、両手の扱いに若干の不自由はあるか。
とは言ってもその程度だ。
脱出の段になったら、魔法で破壊してしまえばいい。
探知の結果、この場には七人。
俺、エスフェリア、ボーイ、そしてその他四人。
入れ替わりが無いとすると、先輩方はご健在のようだ。
一人は座り込んでいて、三人は寝ている体勢をとっているようだ。
「もしかしてこの牢の中に、脱出時に連れて行く人物がいるのか?」
「はい、よく分かりましたね。」
「わざわざ捕まる理由を考えれば分かるだろ。
四人いるが、誰だ?」
「そちらの牢にいるお兄さんです。
宮殿に盗みに入り捕まりました。
名前はベネッティ、14歳です。
本来彼は宮殿の抜け道の案内役です。
とはいってもすでに私が案内を受けているので順路は知っていますが。」
「だったら連れて行く必要は無いんじゃ?」
「以前の周回でも受けた恩は恩です。
知識だけもらってそれだけでは、義が成り立ちません。」
「義理堅いな。
まあ、そういうのは嫌いじゃ無い。」
そんな話をこそこそとしていると、それほど期待してはいなかったが、きちんと飯が運ばれてきた。
「これが噂のメニューなのですか?」
「いや・・・残念ながら。」
今回運ばれてきたのは、それなりにきちんと作られた料理だった。
さすがに皇族相手に豆スープは出さないのか。
「一応毒味はしてやろう。」
俺が先に口を付けようとすると、エスフェリアが俺からスプーンを奪い取った。
「なんだ?」
エスフェリアは料理をすくい取ると、俺の口元に持ってくる。
「あーん。」
「『あーん』じゃねえ、何やってんだ?」
「枷があると食べにくいですよね。
はい、あーん。」
「馬鹿野郎。」
俺はスプーンを奪い返すと、自分で食べた。
そんな俺をエスフェリアはニコニコしながら見ている。
何なんだコイツは?
彼女は皇女らしく、黄色を主体としたドレスをまとっている。
この国では身分の高いもの以外、衣服に黄色を使ってはいけないという規則があるらしい。
この場ではかなり違和感のある格好だ。
「さてとりあえず捕まってみたけど、これからどうするんだ?」
俺はボーイに聞こえない声でエスフェリアに話しかけた。
「しばらく待機です。
明日になると魔王の軍勢が帝都目前になり、かなりの混乱が生じます。」
エスフェリアはその場に座り込む。
「そうか。
こんな状況だが、飯はちゃんと出るのかな?
ここのパンと豆スープは絶品だぞ。
エスフェリアがあれを食べたら、皇族初の快挙になるだろうな。」
俺はボーイに感づかれないように、探知魔法を発動させる。
間抜けなことに、魔晶石の粉は回収されていない。
そして魔力封じの枷は、俺に何の効力ももたらしていない。
いや、両手の扱いに若干の不自由はあるか。
とは言ってもその程度だ。
脱出の段になったら、魔法で破壊してしまえばいい。
探知の結果、この場には七人。
俺、エスフェリア、ボーイ、そしてその他四人。
入れ替わりが無いとすると、先輩方はご健在のようだ。
一人は座り込んでいて、三人は寝ている体勢をとっているようだ。
「もしかしてこの牢の中に、脱出時に連れて行く人物がいるのか?」
「はい、よく分かりましたね。」
「わざわざ捕まる理由を考えれば分かるだろ。
四人いるが、誰だ?」
「そちらの牢にいるお兄さんです。
宮殿に盗みに入り捕まりました。
名前はベネッティ、14歳です。
本来彼は宮殿の抜け道の案内役です。
とはいってもすでに私が案内を受けているので順路は知っていますが。」
「だったら連れて行く必要は無いんじゃ?」
「以前の周回でも受けた恩は恩です。
知識だけもらってそれだけでは、義が成り立ちません。」
「義理堅いな。
まあ、そういうのは嫌いじゃ無い。」
そんな話をこそこそとしていると、それほど期待してはいなかったが、きちんと飯が運ばれてきた。
「これが噂のメニューなのですか?」
「いや・・・残念ながら。」
今回運ばれてきたのは、それなりにきちんと作られた料理だった。
さすがに皇族相手に豆スープは出さないのか。
「一応毒味はしてやろう。」
俺が先に口を付けようとすると、エスフェリアが俺からスプーンを奪い取った。
「なんだ?」
エスフェリアは料理をすくい取ると、俺の口元に持ってくる。
「あーん。」
「『あーん』じゃねえ、何やってんだ?」
「枷があると食べにくいですよね。
はい、あーん。」
「馬鹿野郎。」
俺はスプーンを奪い返すと、自分で食べた。
そんな俺をエスフェリアはニコニコしながら見ている。
何なんだコイツは?
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