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六章 熱血沸騰、第六層

120 ホモサピエンスと訪問者

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 48日目。ちょっとウトウトしていたら、少しだけ時間が経過していたようだ。サドンの顔色は、真っ青の最初の頃よりはだいぶ良くなっている。

「やあ、アフタ。おはようと言った方がいい時間なのかな?」
「いや、まだそんなに時間は経ってないよ。日付をまたいだぐらいかな。」

 サドンが目を覚ました。一晩は起きないと思っていたら、意外に意識が戻るのが早かった。サドンは自分の腕に繋がっている点滴を見る。

「まさかこの世界で点滴をしてもらうとは。もしかして僕が初めてじゃないかな?」
「たぶん。」
「本当に凄いな、アフタは。」

 何が凄いのかさっぱり分からない。クリティカルを連発する人間の方がよっぽど凄いだろう。

「一つ確認していいかい?」
「いいけど。」
「僕はまだ動いては駄目なのかな?」
「もちろん駄目。」
「となると、困ったことが一つある。」
「?」

 サドンが下半身へ目配せする。何だろうとしばらく考え・・・あ!

 点滴は水分を身体に流し込むのだ。そして流れた水分はどこへ行くのか? もちろん汗などを除けば、勝手に身体の外に出て行ったりはしない。

「ああ、ちょっと準備するから待ってて。」
「早めに頼むよ。苦痛耐性が高くても、生理現象はどうにもならないらしい。」

 マズイ、サドンがピンチだ。僕は慌てて溲瓶(しびん)の代わりになりそうなものを探す。第三層の研究施設から色々持ち出しているおかげで、一通りのものは持ち合わせている。だから点滴もたやすく作れたのだ。

 使えそうなもの・・・フラスコ、コレに決めた! 僕はフラスコを取り出し、サドンの下半身をまさぐる。

「さすがに恥ずかしいものがあるね。まあ、アフタになら・・・。」
「気持ち悪い発言禁止!」

 まさか野郎の息子をフラスコに突っ込む手伝いをすることになるとは思わなかった。そんな時、扉がガチャリと開く音が聞こえた。

「・・・。」
 直立不動の姿勢を取るスコヴィル。
「やあ、スコヴィル。僕はアフタと大事な用を済ませている最中さ。」

 最悪のタイミングだった。よりによって、このタイミングで来るとは、スコヴィル恐るべし。そしてこの状況に動揺しないサドン、アンタの心は鉄で出来ているのか? 僕だったら黄色い悲鳴の一つぐらいあげているかも知れない。

「ご、ご、ごめんなさい。男の人って、た、大変なんですね!」

 そう言ってパタンと閉まる扉。いや、ちょっと。大変は大変でも、なんで「男の人」っていう変な限定条件? 尿意は男女関係ないでしょ。いったいなんだと思ったんだ? おい!

「さあ、続きを頼むよ。」

 サドンの言葉に現実に引き戻される。恐ろしい誤解をされた気がするけれど、後で説明すればきっと何とかなるはずだ。

 そして朝がやってきた。夜明けと共にスコヴィルが部屋に入ってきた。少し顔が赤い気がするけれど、どうしてなのか深く考えるのはやめておこう。

「サドンさんの様子はどうですか?」
「体力の方はだいぶ戻してきたみたいです。」

 そうは言ったものの、普通なら回復するような状況じゃ無い。そもそもサドンの体力がチートじみているのだ。

「では今度は私が変わります。魔力の方も眠ったらそれなりに回復しました。」
「ではお願いします。僕も少し眠ることにします。」
 僕は隣のベッドで眠ることにした。何があってもここなら問題ないだろう。

 そして僕は夢を見る。そしていつものアレが始まった。
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