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五章 寒々ホワイト、第五層

100 好きなスキルを選びたい

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 受付のおねえさんはギルドカードを確認する。カードには自動的に到達状況が書き込まれるのだ。

「まさか、またソロで攻略したの?」
「はい。」
「・・・。」
 受付のおねえさんが渋い顔をしている・・・。

 そういえば第二層と第三層でカッチェがボス戦に紛れていたことは何も言われていない。正式にパーティを組まないと記録されないシステムなんだろうか? それとも本人が認識しないと駄目という可能性もある。ギルドカードの自動記録システムは色々と謎だ。それはさておき、僕は受付のおねえさんを安心させることにした。

「大丈夫です、第五層でようやくパーティーメンバーをゲットしました。」
「そう、良かった。でもアフタ君が第五層まで進むなんて・・・。やっぱり他の冒険者とは纏うオーラが違うだけのことはあるわ。」
「オーラ?」
「長いこと冒険者ギルドの受付なんかをやっていると、なんとなくそういうのが分かるようになるのよ。」
「長い事って何年ぐらいやってるんですか?」
「女の人にそういう事を聞くものじゃ無いわよ。」

 話を振ったのはそっちなのに、何故か僕が叱られた感じになっている。

「核はこちらで引き取る?」
「いえ、今回はとっておきます。」
「そう、でも核は他の素材と違ってアイテムの合成なんかには使えないわよ。」
「大丈夫です。」
 魔物の合成に使うから。

 おねえさんから新しいギルド特典を確認する。どうやらギルドから融資を受けることが可能になるらしい。その額は最大1000万シュネ。だけど死んだらどう回収するつもりなんだろう? そういえばギルドの図書館で情報を閲覧しようと思ってたんだよなぁ。でも待ち合わせがあるので後回しかな。

 僕がギルドから出ようとしたとき、見覚えのある人物とすれ違う。そう、忘れもしない僕が最初にギルドに訪れたときに、100万シュネをかすめ取ろうとした男だ。

「もしかしてあの時の?」
 大男も僕のことに気づいたようだ。
「その節はどうも。」
 僕は大男に言った。

「皮肉か? 今日は剣聖様はいなんだぜ。下手な態度を取っていると少々痛い目を見るぞ。」
 大男は僕を威圧してきた。何故かそれが全然怖くない。

「ヴァインさん、アフタ君は第五層到達者ですよ。」
「え?」
 受付のおねえさんの言葉に、大男の顔がみるみる青くなる。

「ああ、そうか。凄いんだな。なかなかやるじゃないか。そうだ用事を思い出した、じゃあな。」
 そう言って去って行った。大男はヴァインというらしい。彼は何層まで行ってるんだろう?
「ヴァインさんは二層止まりよ。」
 そう、受付のおねえさんが教えてくれた。なるほど。だから始発の町で見かけないのか。

 さて、次はドロップ素材を売りに素材屋へ行こう。大量に白狼素材が余っている。そして素材を売却した結果が以下の通りとなった。
 
白狼の牙  26万0000シュネ × 8
白狼の爪  14万0000シュネ × 10
白狼の毛皮 48万0000シュネ × 5
 
 一気に600万近く所持金が増えた。ちょっと金欠気味だったので、ようやく一息付けた感じだ。すでに金銭感覚が変わってしまっていて、金持ちになったような感じはしない。そもそもこの金額では借金を返すことすら出来ないのだ。

 素材の売却を済ませた僕は、ついにスキル鑑定の店の前に来た。ゴクリと喉を鳴らす。さあ、鬼が出るか蛇が出るか。扉を開けて中に入った。

「いらっしゃい。良く来たね。」
 出迎えたのは頭に一切の無駄が存在しないお爺さんだった。言うまでも無いと思うけど、無駄とは髪の毛のことだよ。

「スキル鑑定をお願いします。」
「スキル鑑定はちょっと値が張るんだけど大丈夫かな?」
「いくらです?」
 僕は戦々恐々と聞く。ここで1000万シュネとかふっかけられたら、ギルドからも借金しなければならない。

「5万シュネだよ。」
 僕はずっこけそうになった。安い! いや、これを安いと感じるようになってしまった僕の金銭感覚はどうなんだろう?
「お願いします。」

 頭に無駄の無いお爺さんは僕の顔を覗き込んだ。
「君もしかしてユニーク持ち? ふうむ・・・確認しよう。」
 お爺さんは自分の無駄の無い頭に手を当ててなにやら力を込めている。そしてその手を今度は僕の頭に乗せてきた。ハゲって感染しないよね?

「うぬぬぬ、なんと! これは何という強力なスキル!」
「強力?!」
 ついに僕の時代がやってくるのか?
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