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三章 あん・あん、いやあん、第三層
52 そうこうしている間に出来る装甲車
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「わ~ん、ごめんなさいですの。」
クレータから飛び出してくるギデア。救いがあるとすれば、既に出来上がっている方の露天風呂のと距離が離れていたため、そちらの目隠しが一部壊れた程度で収まっていることだろう。そして入浴中だったムサイ冒険者達の、キャーっという黄色い悲鳴が聞こえる。なんなんだ、この世界は?
「力を抜いて、軽くやったつもりだったですの。この棍のせいですの。」
そう言ってアダマンタイトの棍を恨めしそうに見るギデア。いやいやいや、その棍を作るために、魔法オヤジが死にかけたんだぞ! そもそも、力を抜いて軽く穴を掘るつもりとは、どれだけ無双ぶりを発揮すれば気が済むんだ?
そういえば、僕よりもクレーターポイントの近くにいたカッチェの姿が見えない。第三層のボスにボコボコにされる程度の実力では、ギデアの一撃に耐えうるはずも無い。死んだか?
「あそこになにか生えているですの~。」
僕はギデアの指さす方角を見る。うん、何かが生えているな。たぶんカッチェっという生き物の足だ。上半身が地面に突き刺さっている。どうやったらこんな器用な状態になるんだろう?
僕はカッチェの足を持って掘り起こした。気分は大根を引き抜くかのようだ。上手く引っ張らないと、途中でポッキリ折れるんだよね。
「アニキ、また命を救われたっす。」
どうやら無事だったらしい。
「とりあえず、開けすぎた穴を埋め戻してくれますか?」
「分かりましたの。」
「カッチェは露天風呂の目隠しの修理を頼めますか?」
「了解っす。」
コミュ障の僕は、他人と一緒に作業するのがとても苦痛だ。そろそろ一人でコツコツエンジン制作に戻りたい。そんな願いも空しく、この日は露天風呂の増設と修理で終わることになった。
日数 項目 金額 個数 合計 所持金
-----------------------------------------------------------------------------
30日目 食料 -1万2000蝸 1個 -1万2000蝸 49万8800蝸
30日目 エンジン部品 -3万5000蝸 1個 -3万5000蝸 46万3800蝸
30日目 露天風呂建設資材 -6万3000蝸 1個 -6万3000蝸 40万0800蝸
30日目 燃料売り上げ 6万0000蝸 1個 6万0000蝸 46万0800蝸
30日目 借金返済(4) -1万0000蝸 1個 -1万0000蝸 45万0800蝸
31日目。僕は相変わらずエンジン作成作業だ。すでにいくつか試作を作り、稼働実験をしている。しかし出力が弱かったり、異常発熱してぶっ壊れたりと散々だった。やはり魔法オヤジの力が必要だ。カッチェの話によると、既に退院しているらしい。僕は鍛冶場を訪ねた。
「おう、ヨクジョウか。ずいぶん世話になったな。感謝してるよ。」
魔法オヤジにプスプスしていた時の面影は無い。で、ごく自然に僕をヨクジョウと呼ぶのはやめて欲しい。不自然なほど突然広まりだした。誰なんだ、こんな通り名を広めている奴は?
「身体は大丈夫なんですか?」
「ああ、この通りピンピンしているさ。ただ、しばらくアダマンタイトの武器は作れそうに無い。しかし普通の鍛冶なら問題ないぞ。何か頼みがあってきたんだろ? 遠慮は無しだ。」
魔法オヤジがむさ苦しく、男気を振りまく。まあ、惚れたりはしないけどね。
そして僕は、エンジンを作るための部品を魔法オヤジに発注した。彼はその程度なら明日の朝には届けてやると言った。
僕は作業場に戻る。エンジンのパーツが出来るまで、その他の部分の制作に入る。何を作るかって? もちろん第三層を攻略するために必要な物だ。
日数 項目 金額 個数 合計 所持金
-----------------------------------------------------------------------------
31日目 食料 -1万3000蝸 1個 -1万3000蝸 43万7800蝸
31日目 エンジン部品 -2万2000蝸 1個 -2万2000蝸 41万5800蝸
31日目 燃料売り上げ 9万0000蝸 1個 9万0000蝸 50万5800蝸
31日目 借金返済(5) -1万0000蝸 1個 -1万0000蝸 49万5800蝸
31日目 パーツ類 -6万9000蝸 1個 -6万9000蝸 42万6800蝸
風呂が増設されたことによって、燃料の売り上げが増えた。さらに明日からは、魔法オヤジも燃料を買ってくれるらしい。どうやら商売が軌道に乗り始めたようだ。
32日目。魔法オヤジが作ったパーツでエンジンを組み上げる。そしてついに僕の想定を満たすレベルでの開発に成功した。それを平行して作っていた車に取り付ける。まだ見た目はスッカスカだが、これから装甲を取り付けて装甲車を作るのだ。
第三層、今回の最大のネックは移動時に出現する雑魚の強さだ。とくにスケルトン達は僕の手には負えない。だからボス部屋に至るまで、装甲車でスケルトン達を轢き殺しつつ到達予定なのだ。装甲車が完成した暁には、あの骸骨共を全て踏みつぶし粉砕する。奴らのカルシウム分を草原のアルカリ肥料に変えてやるのだ!
今は風通しの良い、装甲が無い装甲車。ぶっちゃけ言うとオープンカーだ。さあ、ついにこいつの試運転を始めるぞ!
クレータから飛び出してくるギデア。救いがあるとすれば、既に出来上がっている方の露天風呂のと距離が離れていたため、そちらの目隠しが一部壊れた程度で収まっていることだろう。そして入浴中だったムサイ冒険者達の、キャーっという黄色い悲鳴が聞こえる。なんなんだ、この世界は?
「力を抜いて、軽くやったつもりだったですの。この棍のせいですの。」
そう言ってアダマンタイトの棍を恨めしそうに見るギデア。いやいやいや、その棍を作るために、魔法オヤジが死にかけたんだぞ! そもそも、力を抜いて軽く穴を掘るつもりとは、どれだけ無双ぶりを発揮すれば気が済むんだ?
そういえば、僕よりもクレーターポイントの近くにいたカッチェの姿が見えない。第三層のボスにボコボコにされる程度の実力では、ギデアの一撃に耐えうるはずも無い。死んだか?
「あそこになにか生えているですの~。」
僕はギデアの指さす方角を見る。うん、何かが生えているな。たぶんカッチェっという生き物の足だ。上半身が地面に突き刺さっている。どうやったらこんな器用な状態になるんだろう?
僕はカッチェの足を持って掘り起こした。気分は大根を引き抜くかのようだ。上手く引っ張らないと、途中でポッキリ折れるんだよね。
「アニキ、また命を救われたっす。」
どうやら無事だったらしい。
「とりあえず、開けすぎた穴を埋め戻してくれますか?」
「分かりましたの。」
「カッチェは露天風呂の目隠しの修理を頼めますか?」
「了解っす。」
コミュ障の僕は、他人と一緒に作業するのがとても苦痛だ。そろそろ一人でコツコツエンジン制作に戻りたい。そんな願いも空しく、この日は露天風呂の増設と修理で終わることになった。
日数 項目 金額 個数 合計 所持金
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30日目 食料 -1万2000蝸 1個 -1万2000蝸 49万8800蝸
30日目 エンジン部品 -3万5000蝸 1個 -3万5000蝸 46万3800蝸
30日目 露天風呂建設資材 -6万3000蝸 1個 -6万3000蝸 40万0800蝸
30日目 燃料売り上げ 6万0000蝸 1個 6万0000蝸 46万0800蝸
30日目 借金返済(4) -1万0000蝸 1個 -1万0000蝸 45万0800蝸
31日目。僕は相変わらずエンジン作成作業だ。すでにいくつか試作を作り、稼働実験をしている。しかし出力が弱かったり、異常発熱してぶっ壊れたりと散々だった。やはり魔法オヤジの力が必要だ。カッチェの話によると、既に退院しているらしい。僕は鍛冶場を訪ねた。
「おう、ヨクジョウか。ずいぶん世話になったな。感謝してるよ。」
魔法オヤジにプスプスしていた時の面影は無い。で、ごく自然に僕をヨクジョウと呼ぶのはやめて欲しい。不自然なほど突然広まりだした。誰なんだ、こんな通り名を広めている奴は?
「身体は大丈夫なんですか?」
「ああ、この通りピンピンしているさ。ただ、しばらくアダマンタイトの武器は作れそうに無い。しかし普通の鍛冶なら問題ないぞ。何か頼みがあってきたんだろ? 遠慮は無しだ。」
魔法オヤジがむさ苦しく、男気を振りまく。まあ、惚れたりはしないけどね。
そして僕は、エンジンを作るための部品を魔法オヤジに発注した。彼はその程度なら明日の朝には届けてやると言った。
僕は作業場に戻る。エンジンのパーツが出来るまで、その他の部分の制作に入る。何を作るかって? もちろん第三層を攻略するために必要な物だ。
日数 項目 金額 個数 合計 所持金
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31日目 食料 -1万3000蝸 1個 -1万3000蝸 43万7800蝸
31日目 エンジン部品 -2万2000蝸 1個 -2万2000蝸 41万5800蝸
31日目 燃料売り上げ 9万0000蝸 1個 9万0000蝸 50万5800蝸
31日目 借金返済(5) -1万0000蝸 1個 -1万0000蝸 49万5800蝸
31日目 パーツ類 -6万9000蝸 1個 -6万9000蝸 42万6800蝸
風呂が増設されたことによって、燃料の売り上げが増えた。さらに明日からは、魔法オヤジも燃料を買ってくれるらしい。どうやら商売が軌道に乗り始めたようだ。
32日目。魔法オヤジが作ったパーツでエンジンを組み上げる。そしてついに僕の想定を満たすレベルでの開発に成功した。それを平行して作っていた車に取り付ける。まだ見た目はスッカスカだが、これから装甲を取り付けて装甲車を作るのだ。
第三層、今回の最大のネックは移動時に出現する雑魚の強さだ。とくにスケルトン達は僕の手には負えない。だからボス部屋に至るまで、装甲車でスケルトン達を轢き殺しつつ到達予定なのだ。装甲車が完成した暁には、あの骸骨共を全て踏みつぶし粉砕する。奴らのカルシウム分を草原のアルカリ肥料に変えてやるのだ!
今は風通しの良い、装甲が無い装甲車。ぶっちゃけ言うとオープンカーだ。さあ、ついにこいつの試運転を始めるぞ!
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