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7章 次への引き継ぎと暗躍の者達

179 杖と石と強い意志

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 私は彼の使っていた杖を手にした。
 そして杖の機能を有効にする。

『アリス姉ちゃん、初めまして。
 僕の名前はルディン。
 でも、初めましてじゃないのかな。』

 杖を通して頭の中に声が届く。
 彼のことはシーリが覚えている。

「そうね、私の一部にシーリがいるからおぼろげだけど覚えているわ。
 あなたはどうしたいの?」

『オキス兄ちゃんがやりたかったことを引き継ぐんでしょ。
 だから僕も協力するよ。』

「・・・。
 揃いも揃ってなぜ誰も私を責めないの?」

『みんな覚悟してここまで来ているんだよ。
 誰かが犠牲になる覚悟を。
 目的の為に、とにかく最良の選択を選ぶように。
 それに誰もアリス姉ちゃんのことを恨んだりはしていないよ。
 みんなアリス姉ちゃんを助けたくてここまで来たんだから。』

「彼の仲間はお人好しばかりね。
 彼自身もそうだったから、類は友を呼ぶのかしら。」

 私は昔のことを思い出した。
 前世の自分も同じようなものだったのかも知れない。
 しかしその記憶はおぼろげになっている。 
 永劫の回帰を多用した弊害だろう。

 賢者の杖とリンクすることによって、魔術回路の構築能力に変化が起こる。
 今まで使用不可能だった関数が有効になっている。
 しかしその関数が何に使えるのかは理解できない。
 試しに回路に組み込んで使ってみたけれど、上手く発動しない。

 彼なら理解できていたのかも知れないけれど、私は彼ほど頭が良いわけでは無い。
 私は永劫の回帰で、手当たり次第組み合わせを見つけてきたのだ。
 今回有効になった関数は、そんな方法で動くような簡単なものでは無いらしい。
 賢者の杖の力は、既存の魔法を強化するのに使えば良いだろう。

 私は首に提げている賢者の石に手をかける。
 ジブルトという小人族のお爺さんが置いていったものだ。
 この石があれば、魔力量は父に匹敵する状態になる。
 アストレイアの腹心だったというジブルトは、今は隠居しているという。
 ただ、未だに国のことが心配で大人しくはしていられないと、各地を飛び回っているそうだ。
 全然隠居していない。

 四天王グレドキープの件を私に持ちかけてきたのもジブルトだ。
 何か裏があるのを感じつつも、私はその話に乗った。
 そして魔軍が壊滅した後、ジブルトは賢者の石を持ってきたのだ。
 彼がここにやってきたときに、これを使って戦えるようにと。

 いったい何を企んでいるのか分からない。
 結果として、私は彼を殺すことになった。
 彼を殺すことは魔王側としては間違ったことでは無い。
 しかしジブルトの目的はそれ以外の所にある気がする。

 そして出発の準備は整った。






 
 新関数での無双は無い。
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