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6章 魔王の息子と最後の無双

168 軽いカルチャーショック

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 ジキルとパメラが倒した暗黒騎士クリセリオンの配下達を埋葬し、僕達は出発した。
 埋葬を手伝った事に関して彼は礼を述べていたけれど、逆に申し訳ない気がする。
 倒された彼らは自分たちの仕事をしていただけなのだから。
 ちなみに埋葬の穴は、穴掘りの達人カシムが地面を吹き飛ばして空けていた。

 僕の魔力はまだまだ全然回復していないけれど、神の残滓の力は一晩二晩で元に戻る。
 もしかして長期戦になったら魔力を中心に扱う魔族って不利なのでは無いだろうか?

 僕達は倒した騎士達が乗っていた馬に跨(また)がっている。
 正直、馬に乗るのは始めてだったけれど何とかなった。
 移動が楽になりつつアリスのいる魔領の北へ向かっている最中、何回か強面の魔族の兵や護衛を伴った商隊と擦れ違った。
 しかし顔が通っている暗黒騎士クリセリオンのおかげで、逆に向こうがビビって道を空けた。
 
 そして途中で魔族の街に立ち寄ることになった。
 幼い頃にずっと山籠もりしていたせいで、魔領は山というイメージしか無かったけれどやっぱりあるよね、街。
 一応タレンティから聞いてはいたけれど、もっと寂れた感じかと思っていたら、とんでもなく栄えている。

 まず驚いたのが、その辺りの露店で魔道具を使った調理器具が普通に使われていることだ。
 人間側の国では魔道具は驚きの高値で、しかも燃料の魔晶石は高価なため、おいそれと使えない。
 それが当たり前のように使っているのだ。
 昼間なので分かり難いが、どうやら街灯も魔道具が使われている。

 魔領の街は魔族や亜人達が普通に暮らしている。
 一見、人間にしか見えない人とも擦れ違うことがある。
 変身タイプの魔族や亜人なのか、本当に人間なのかイマイチよく分からない。

 クリセリオンがいるおかげで、堂々と宿に宿泊することになったのだけど、そこでも驚いた。
 レバー式の蛇口がある。
 捻れば水が出る。

 使われているエネルギーが魔力であることを覗けば、転生前の世界に近い。
 考えてみると魔素が大量に漂っている魔領では、魔晶石は取り放題なのではないだろうか?
 人間の国へ持っていって売り払ったら一財産も二財産も築くことが可能だろう。
 コストや実用面で化石燃料とどちらに優位性があるのか気になるところだ。
 少なくとも魔力は消費時に大気を汚さない。

 僕はいつものごとく街を探索することにした。
 クリセリオンが付いてくると申し出たけれど、彼は目立ちすぎるのでいつも通り単独行動だ。
 まずは目を付けていた魔道具の店に入った。
 生活用品から工具などを売っている、ホームセンターの様な店だ。
 僕はワクワクしながら見て回った。
 魔力で動くストーブや、ちょっと形は違うけど扇風機のような物、ドライヤーまである。
 絶対に転生者か転移者が開発に関わっている気がする。
 知識チートの匂いがプンプンするぞ。

 ホームセンターには武器が売っていなかった。
 どんなものがあるのか気になったので街を探してみたのだけど、全く売っていなかった。
 通行人は武器を装備している人もいるので、武器そのものが禁止されているわけでは無いのだろうけど、販売はされていないようだ。
 その辺りの人に武器はどこで売っているのか聞こうかと思ったけれどやめた。
 その質問が地雷の可能性がある。
 あとでタレンティかクリセリオンに聞けば良いだろう。

 その他、僕が山籠もりしている間に食べた果物などが売っていた。
 実は魔領の通貨はタレンティが用立ててくれていたので、そのぐらいのものを買うお金はある。
 僕は懐かしい食べ物を購入し、食べる場所を探した。

 綺麗に植林されている公園を見つけたので、そこへ移動した。
 僕は袋をごそごそ漁りながら食べる体勢に入った。
 そして飛び退く。
 石の塊が着弾した。

 僕は神の残滓を纏う。
 同時に魔力探知を使用する。
 四人ほど引っかかった。
 それぞれがかなりの魔力量だ。
 放つ殺気もかなりピリピリ来る。
 素人では無い。

 相手の出方を窺うが、次の攻撃が来ない。
 僕の魔力残量は一割弱、無駄撃ちは出来ない。
 さてどうしたものか。









 どこかに魔道具無双職人がいる気がする。
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