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6章 魔王の息子と最後の無双

163 ぷらんと旅するプラン

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「この世界の魔法は飛行機と同じだ。」

 ギスケが言った。

「飛行機?」

 僕は聞く。

「なぜ飛ぶのかが正確に説明できないんだ。
 結局やっていることは実験を繰り返して、結果が類似するそれっぽい定理を導き出すだけだ。
 けれど状況を変えると結果が狂い出す。
 それでまた新しい定理を付け加えるんだ。」

 まあたしかにフライトシミュレーションでも、全てを計算しているわけじゃないしなあ。

「魔法も同じだと?」

「ああ。
 魔法も演算回路を何度も組み直して、それっぽい結果が出たものが伝承されていく。
 魔術回路を一から計算して導き出せる人間はほとんどいない。」

「ほとんど?」

「俺と、頭に矢を受けて死んだ奴だけだ。」
 
 魔術師オルドウルか。
 本当に惜しい人を亡くしたなあ。
 僕も一通りの魔術回路を編むことが出来るようになったけれど、そもそも魔法の原理そのものを理解していない。
 炎を作り出す魔術回路を編むことは出来ても、結局の所どうやって物理的に炎に変化するのか全く理解していないのだ。

 そして僕はこれから先のことをギスケに伝えることにした。

「ギスケ、僕はこのまま魔領へ進むことにするよ。」

 いい加減、魔領に行かないと。

「行くのか・・・。
 まあ、止めはしない。
 死ぬなよ。」

 ギスケはあっさり了承した。
 そしてギスケとの通信をエルシアと交代した。
 ギスケが何らかの指示を出すのだろう。

 僕は仲間のいる部屋へ移動する。
 途中、兵士達と擦れ違ったが、一人の例外も無く恐怖に引きつった顔を僕に向けた。
 僕、悪い魔族じゃ無いよ?

 全員に今後のプランを伝える。
 闇魔法の影響で魔領にも混乱が生じているはずだ。
 その隙にアリスの件を片付ける。
 それには魔領の情報を知るタレンティの協力がいる。
 彼女は騎兵と共にこちらに向かっている。
 敵は消滅したけれど警戒のため、砦に向かう指示は撤回されていないのだ。

 合流次第出発することにした。
 タレンティの件についてエルシアに確認をとったら、あっさり了承された。
 もともとタレンティとの協力は、アリスの件があったからだ。
 それを反故には出来ないのだろう。
 そしてとっとと僕達を厄介払いをしたいという感じがありありと見て取れた。

 出発までに出来るだけ魔力を回復させておきたい所なんだけど、これは時間が必要になる。
 ギスケは魔力回復の魔法陣が作れるらしいけれど、そんなものここには無い。
 あとは魔晶石が近くにあれば回復が早くなるんだけど、砦の在庫を使うわけにはいかない。
 まあ時間経過で回復するからいいか。
 満タンまで一ヶ月以上かかりそうだけど。

 待っている間暇なので、僕とジキルはブリューデンに乗って、砦の周りの偵察に出た。
 帝国と魔領の間に巨大な穴が空いている。
 こうなるとお互いの国へ地上から兵力を送るのは不可能になったと言って良い。
 大回りして険しい山岳ルートが無くは無い。
 しかし大兵力を送るには現実的ではない。

 もしかして魔族と人間の戦いを止めるという目標を達成したのかな?
 魔族が偉い損害を受けているけど。

 そして空間が歪んでいるのも確認した。
 もう三日以上過ぎているはずなのに、収まっている気配は無い。
 なんだかジキルが落ち込んでいた。
 僕は「気にする必要はないよ。」と言っておいた。
 僕が言って良いセリフかどうか微妙なところだったけれど、突っ込む人はいない。

 考えたところで事態が好転することは無い。
 余計なことを考えるのはやめることにした。








 無双って、もっと爽快なものだと思っていた。
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