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5章 希望の家と集う仲間

120 マゾ魔族の活躍

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 魔物の軍勢を村から距離をとって待機させ、キャンプを張らせた。
 そしてギスケに連絡を取り、魔族の受け入れを打診した。
 ギスケは驚かなかった。
 僕が前魔王の息子という時点でそういう流れになることは予想していたようだ。
 人間に危害を与えなければ容認するという話に落ち着いた。
 この世界の人間は魔族にアレルギーがあるため、ギスケの周囲では反対もあったらしい。
 しかし魔神ギスケは皇帝エスフェリアの絶対的な信頼を得ている。
 その魔人ギスケの意見を覆すことの出来る者はいなかったようだ。

 残りはこちらの住民に対する説明だ。
 ドワーフ達は魔族にそれほどの嫌悪感はない。
 問題は人間達だ。
 人間達の協力を得るためには、馬鹿正直に僕が前魔王の息子だと話すわけにはいかない。
 というわけで古代遺跡で発見した神の遺物で魔族や魔物を使役することが可能になったという設定にした。
 こういう嘘はバレた時が怖いんだけどね。

 そういう流れで住民に説明をしたのだけれど、反応は芳しくなかった。
 村を去って行く人もいた。
 せっかく発展しつつあったのにタイミングが悪い。
 あの四人を止めきれなかったブリゲアンをちょっと恨んだ。

 魔物の軍勢四千を遊ばせておいても仕方が無いので、街道の安全確保に当たらせた。
 クアトロ達に被害を最小限に抑えるように指示すると、「容易きことにございます。」とか言ってすぐに行動に出た。
 その後、街道での魔物による被害はゼロになった。
 魔物の襲撃を魔物に守らせる、そんな状況だった。

 エリッタが自分の仕事が無くなったとボヤいていたけれど大丈夫だよ。
 すぐ別の仕事をあげるからね。

 今回の件で人口の増加が停滞していたのだけれど、街道の安全が確保されてしばらくすると、再び遺跡村に人間が流入してくるようになった。
 工業プラントの建築も進み、そこからさらに建築に必要な資材の生産を行うようになった。
 資金とのバランスを考え、村の中で使う分と、輸出する分を調整する必要がある。
 精度の高い建築資材は、売りに出せばあっという間に買い手が付いた。

 そして生産能力が向上すると共に、材料の輸入が追いつかない状況が発生した。
 そんな時に役に立つのがサリアだ。
 精霊の力は水だけで無く鉱石も探し当てることが出来た。
 人の手が入っていない、手つかずの鉱山がそこにはあった。
 そこへドワーフをリーダーとした採掘チームを派遣した。
 もちろん爆薬の使い方もきちんと熟知した状態だ。
 主力は取り扱いが容易な含水爆薬(がんすいばくやく)だ。
 ダイナマイトは威力が大きすぎて、穴を掘るのでは無く埋めることになってしまうので、そうそう使うことは無いだろう。

 僕も指示を出すだけでは無くきちんと働いている。
 何をやっているかって?
 新しい道を作っているのだ。
 魔法の訓練ついでに、高火力の魔法でショートカットルートを構築中だ。
 だんだん僕の魔法も無双状態に近づいている。
 ロックアイスを作っていた時代が懐かしい。

 ここには最終的にここに鉄道を通す予定だ。
 レール埋設が完了するまでにはかなりの時間を要すことになるだろう。
 地道にやるしか無い。

 資金、資材、人材のバランスをとりながら一歩ずつ進んでいる。
 作る物の種類が増えていく中、気をつけなければいけないのは汚染だ。
 最近は有害な溶剤などを使うことが増えている。
 特に地下水が汚染されたら洒落にならない。
 定期的な水質検査と廃棄物の管理も欠かせない。
 有害物質を中和するための処理施設も必要なのだ。
 これがゲームだったら条件がきつすぎてクソゲー扱いされるだろう。

 内政ばっかりやっていると、こんどは外の問題で頓挫する可能性が出てきてしまう。
 ブリゲアンにブリデイン王国の神魔砲の建築状態を確認すると、進度は三割弱ということだった。
 国内の反対派が妨害しているせいで、なかなか建築が進まないらしい。
 勇者ジキルの扇動効果効いているはずだ。
 時間はある。
 まあ、僕がなんとかしなくても、いざとなったらギスケエモンが壊しに行くだろう。
 その前に師匠が何か仕掛けてくるんだろうけどね。

 さらにブリゲアンにはクエルク自治領の古代遺跡について聞いてみた。
 魔術師ワイアデスに古代遺跡を案内したのかどうかだ。
 答えはNOだった。
 そもそもクエルク自治領の古代遺跡の存在も噂に聞く程度だったという。
 内部のセキュリティーを突破する方法ももちろん知らないらしい。
 ブリゲアンがワイアデスに接触したときには、既に賢者の杖の製造方法を知っていたと言うことだ。
 そしてブリゲアンは言った。
 自分にワイアデスに接触を促した魔族がいると。 








 暗躍無双している奴がいるらしい。
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