上 下
99 / 262
4章 神の雷光と裏切りの花

100 この百話食ってみろ、ひゃぁくうわ

しおりを挟む
 研究所付近でリプリアと合流した。
 リプリアはエリッタから賢者の杖を取り返すのに失敗したことを詫びた。
 しかし場所を特定しただけでもありがたい。

 今回の作戦行動はジキル、パメラ、リプリアの三名に僕とは別行動をとってもらう。
 僕自身は正面から研究所に乗り込むからだ。
 今回リーフはお留守番、ペイストンとギグウロフ部隊は離れたところで待機だ。
 作戦が成功すれば動かす必要は無いだろう。

 僕は研究所の正面入り口に立つ。
 さすがに研究所なので砦のような堅牢な造りにはなっていない。
 柵で囲われてはいるが、別行動の三名なら突破は容易だろう。
 当然のごとく僕は警備の兵隊に取り囲まれる。

「僕はオキスと言います。
 ブリデイン王国の宮廷魔術師クルデウスの弟子です。
 師匠はこちらにいらっしゃいますよね。
 面会を希望するとお伝えください。」

 師匠の性格からして、僕が真っ正面からやってきたら拒みはしないだろう。
 しばらく待たされた後、僕は研究所の中へ通された。
 ここまでは予定通りだ。

 僕は研究所の一室へ案内された。
 特に武装解除を求められることも無かった。
 一応ボロ剣と師匠からもらった杖を腰に下げている状態だ。
 そして中へ通される。

「良く戻ったの。」

 中には師匠がいた。
 師匠は僕を見て嬉しそうな顔をする。
 そしてその隣にはエリッタだ。

「はい。
 色々とありましたが。」

「そうか。
 して、試しの剣はどうであった?
 其奴は結果を見届けずに戻ってきてしまったからの。」

 師匠はエリッタを見る。
 エリッタは色々な意味でばつの悪そうな顔をする。

「残念ながら僕は勇者ではありませんでした。
 途中までしか抜くことが出来ませんでした。」

「そうか、そうか。
 それは残念じゃ。」

 相変わらずニコニコしていて、全然残念そうでは無い。

「して、ヌシはここに何をしに来た。
 もしかしてそれを取りに来たのか?」

 師匠の指した先には賢者の杖があった。

「これがあればヌシは必ず私の所へ戻ってくることになる。
 だから其奴に言いつけておったのだ。
 ヌシと違って出来は悪いが、命令に背くことは無いのでな。」

 出している雰囲気は温和なのに、話の内容で僕とエリッタを刺してくる。
 相変わらずだ。
 エリッタは黙って俯いている。
 結局の所、僕は師匠の誘導に乗ってここに来たようなものだ。
 それを理解した上で僕は行動している。

「エリッタ、僕は気にしていないよ。
 師匠からの指示を受けているのは、なんとなく感づいていたし、色んな事情もあるんだよね。」

 僕がそう言ったときエリッタはピクッと反応したけれど、相変わらず俯いて黙っている。

「師匠、神魔砲の件と言えば分かりますよね。」

「うむ、もちろん。
 私が音頭をとって研究を進めておるからの。」

「何故、村を一つ消滅させたんですか?」

「この間の試射の件じゃな。
 あれは村を狙ったわけでは無い。
 まだまだ研究不足という所じゃ。
 最愛の弟子に嫌われるようなことはしたくないからの。」

 何気ないことを語るかのような口調だった。
 その態度に、僕は多少の怒りを感じていた。
 そして僕は言う。

「その最愛の弟子というのは、魔王アストレイアの息子のことですか?」

「・・・。」

 師匠は一瞬だけ表情を変えた。
 本当に一瞬だけ。
 そしてすぐにいつもの表情に戻る。

「ほぉ、そういうことなら合点がいくの。
 父親はジェイエルか?」

 師匠はあっという間に結論にたどり着いた。
 そして師匠は僕の知らない魔術回路を編む。
 それは攻撃を目的にするものでは無いようだ。
 師匠は魔法を発動させた。





 師匠に無双させるのはなんとしても避けたい。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

小説探偵

夕凪ヨウ
ミステリー
 20XX年。日本に名を響かせている、1人の小説家がいた。  男の名は江本海里。素晴らしい作品を生み出す彼には、一部の人間しか知らない、“裏の顔”が存在した。  そして、彼の“裏の顔”を知っている者たちは、尊敬と畏怖を込めて、彼をこう呼んだ。  小説探偵、と。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

職業選択の自由~ネクロマンサーを選択した男~

新米少尉
ファンタジー
「私は私の評価を他人に委ねるつもりはありません」 多くの者達が英雄を目指す中、彼はそんなことは望んでいなかった。 ただ一つ、自ら選択した道を黙々と歩むだけを目指した。 その道が他者からは忌み嫌われるものであろうとも彼には誇りと信念があった。 彼が自ら選んだのはネクロマンサーとしての生き方。 これは職業「死霊術師」を自ら選んだ男の物語。 ~他のサイトで投稿していた小説の転載です。完結済の作品ですが、若干の修正をしながらきりのよい部分で一括投稿していきますので試しに覗いていただけると嬉しく思います~

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

処理中です...