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4章 神の雷光と裏切りの花

97 式の敷居が低くなる

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「はあ、そう来たか。
 なるほど、確かにそれしか無いよな。
 先代魔王はそのためにアンタを・・・。
 なんて奴だ。」

 僕の母は、神を倒すためだけにここまでの準備を整えたのだ。
 本当に恐ろしい魔王だ。

「だが今の状況じゃ、アンタの作戦は成り立たない。
 まずはこの世界の戦いに決着を付ける必要がある。
 特にブリデイン王国のクソジジイをなんとかしないと。
 アイツは魔王よりやっかいだ。」

 ギスケが苦々しい表情で言う。

「もしかして宮廷魔術師クルデウスのこと?」

 まあ聞くまでも無いんだろうけど。

「ああ、そうだ。
 アイツが扇動したせいで、周辺の国から人間が攻めてくるようになりやがった。
 魔族討伐と銘打って来てはいるが、実際は帝国の領土の乗っ取りだ。
 そのせいでこっちはてんてこ舞いだ。
 この前は魔銃とかいう武器まで投入してきて酷い目に遭った。
 銃の性質を知ってさえいれば戦いようはあったけどな。
 今は対抗策を打ったから脅威では無くなったが、次から次へと。
 アイツがいなければ、とっくに魔王を倒せていたはずだ。」

 師匠・・・えげつない。
 魔銃は僕も開発に携わっているから申し訳なさ過ぎる。
 しかしいつの間に実戦投入していたんだろう?

「申し訳ないことに、僕はそのクソジジイの弟子なんだ。
 今も弟子なのかは分からないけど。」

「なんだって?」

 僕は師匠の弟子になるまでの事情を話した。

「あのクソジジイ、顔を直接見たことが無いがいつもニコニコしてるのか。
 怖えな。
 アイツが最初に打ってきた一手は、皇女エスフェリアを保護するから王国に引き渡せっていうのだった。
 そうすれば助けてやると。
 当然のごとく断ったら、とたんに邪魔をするために、あの手この手と仕掛けてくるようになった。
 本当に最悪のジジイだぜ。」

 師匠・・・。

「で、これからどうするつもりなんだ?」

「まずは賢者の杖の回収と遺跡の封印解除をする。
 そして平行して魔王アストレイア派の魔族勢力を結集させる。」

「魔族を使うのか?」

「そもそも神は魔族の敵でもあるんだ。
 そして前魔王の意志でもある。
 出来れば現魔王のグレバーンと話し合いもしたい。
 そのためにはある程度の勢力を持つ必要があると思うんだ。」

「封印解除に協力するのはいいんだが、これから色々とやらなければならないことが山積してるんだ。
 だから一緒には行けない。
 さっき改善した式の解き方を教えておく。
 あれなら魔術回路でなんとかなるだろ。」

 ギスケに教えてもらって、僕はさっき分からなかった記号の意味を理解した。
 確かにこれならなんとかなる。
 賢者の杖があればだけれど。

「それからアンタには俺の能力を見せておく。
 今後共闘するなら必要だろう。」

 そう言うと袋から何か砂のようなものを取り出し、宙に投げた。
 拡散したかに見えた砂が不自然な動きをする。
 そして出来たのは魔法陣だった。

「俺は魔力も魔導も持っていない代わりに、サイコキネシスで魔法陣を作るんだ。
 魔術回路の規則性を解明してしまえば、後は簡単だった。
 高度な魔法も短時間で魔法陣化可能だ。
 魔力はその場に漂う微少なものを吸収して発動する。
 さらに別の場所に設置してある魔力送信用魔法陣と連携して、強力な魔力を込めることも可能だ。
 体力回復用の魔法陣を自身の下に設置しておけば、長時間の戦闘にも耐えられる。」

 おい、それ反則。
 僕が一所懸命に魔法の修行をしたのが馬鹿らしくなるような能力だった。
 






 やはり魔神ギスケはチート無双だった。
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