54 / 262
3章 冒険の始まりと動き出す王国
54 依頼を受けるのはいつ以来か
しおりを挟む
「試しの剣を抜いてしもうたか。」
僕から話を聞いた師匠は、一瞬ではあるけれど寂しそうな感情が流れてきた。
「まあ、予測していたうちの一つではある。
昔会った勇者と外見がそっくりだからの。」
そういえば似ていると言っていた。
こうなってくると僕は元魔王と勇者の息子だったりというオチも現実味を帯びてくる。
「僕はどうするべきなのでしょう?」
「それはヌシが決める事じゃ。
だが教会の思惑通りに動いても良いことは無い。
もし選定を拒否するのであれば、私から断ろう。」
「帝国には行ってみたいと思っていました。
僕が勇者かどうか、それと先代の勇者についても気になっています。
それと魔神ギスケ。」
「まあ、そう急(せ)くものでは無い。
教会にも準備の時間が必要であろうしな。
ヌシにももう少し考える時間があっても良かろう。
まだ課題も終わっておらぬ。」
そういうと僕に杖を手渡した。
「これから色々なことがヌシの身に降りかかろう。
その時私は近くにはおらぬだろう。
これを持って行くが良い。」
僕は杖を受け取る。
立派な杖だ。
賢者の杖程では無いけれど、魔術回路構成補助機能が付いている。
「ありがとうございます。
使わせていただきます。」
「うむ。
ヌシは私の弟子じゃ。
それはいつになっても変わらぬ。
何があっても必ず戻ってくるのじゃ。」
なんだか長い別れになるような言い方だ。
「師匠こそどうしたんですか?
僕はこれから課題をこなしに行くだけですよ。」
師匠は目を閉じゆっくり頷く。
「そうであったな。
私も年をとったのかもしれぬ。
では、気をつけていくのじゃ。」
こうして僕は課題をこなすべく冒険者ギルドへ赴いた。
冒険者ギルドは想像通りの雰囲気だった。
依頼が所狭しと掲示板に張り付いている。
色や記号で内容が判断できるようになっているのは、字が読めない冒険者に対する対策だろう。
そして冒険者らしき人達が、依頼を確認や談笑をしていた。
僕がギルドの中でキョロキョロしていると、数人の冒険者と目が合った。
気にせず受付へ進む。
受付はファンタジー世界では良くあるお姉さん・・・では無くおばさんだった。
「冒険者の登録に来ました。」
「あら、その年で。
あらまあ。
紹介状が必要になるけど大丈夫?」
僕は師匠に書いてもらっていた紹介状を出した。
「それじゃ、これに必要事項を記入してね。
字が読み書きできないようなら、こちらで代筆するわよ。」
「大丈夫です。」
僕がそう言うと、受付のおばさんは紹介状に目を通した。
おばさんはしばらく固まっていた。
その間に登録に必要な内容を書いていく。
「じゃ、じゃあ登録をするからしばらく椅子にでも座って待っていてね。」
そういうと焦った様子でいそいそと奥へ引っ込んでいった。
何やら奥でヒソヒソと話し声が聞こえる。
恐らく師匠の紹介状が原因だろう。
いちいち気にしていたら仕方が無いので、僕は依頼を見て回ることにした。
資材調達のクエストが多い。
モンスター討伐も何かしらの部位を入手するためのものだ。
その中に純度の高い魔晶石採取というのがある。
師匠から教わったものの一つに、広範囲の魔力の気配を感じ取るというのがあった。
これならば僕にはお誂(あつら)え向きだ。
そうこうしているうちに登録が終わったようだ。
「オキスさん、登録が終わりました。
こちらが登録カードになります。」
さっきとは違う人が出てきた。
鼻髭が印象的な生真面目(きまじめ)そうなおじさんだ。
「初めまして。
私はこのギルドの責任者をしております、ビストレスと申します。
この度は、このようなところへお越しいただいてありがとうございます。」
この人めちゃくちゃ腰が低い。
もともとこういう人なのか、それとも師匠のせいなのか。
「この依頼を受けたいのですが。」
僕は依頼の一つを指さした。
「はい、こちらですね。
高純度の魔晶石採取の依頼ですか。
特に期限は設けられておりませんので、手の空いたときで大丈夫ですよ。
それからこちらがギルドの規約になりますので、お暇なときにでもお読みください。
それとも口頭で説明いたしましょうか?」
「大丈夫です、後で読んでおきます。」
僕はギルドの規約が書いてあるしおりを受け取る。
ということで、無事依頼を受けることは出来た。
次は仲間捜しをしなければならない。
さて、見つかるかどうか。
ぼっち無双は勘弁。
僕から話を聞いた師匠は、一瞬ではあるけれど寂しそうな感情が流れてきた。
「まあ、予測していたうちの一つではある。
昔会った勇者と外見がそっくりだからの。」
そういえば似ていると言っていた。
こうなってくると僕は元魔王と勇者の息子だったりというオチも現実味を帯びてくる。
「僕はどうするべきなのでしょう?」
「それはヌシが決める事じゃ。
だが教会の思惑通りに動いても良いことは無い。
もし選定を拒否するのであれば、私から断ろう。」
「帝国には行ってみたいと思っていました。
僕が勇者かどうか、それと先代の勇者についても気になっています。
それと魔神ギスケ。」
「まあ、そう急(せ)くものでは無い。
教会にも準備の時間が必要であろうしな。
ヌシにももう少し考える時間があっても良かろう。
まだ課題も終わっておらぬ。」
そういうと僕に杖を手渡した。
「これから色々なことがヌシの身に降りかかろう。
その時私は近くにはおらぬだろう。
これを持って行くが良い。」
僕は杖を受け取る。
立派な杖だ。
賢者の杖程では無いけれど、魔術回路構成補助機能が付いている。
「ありがとうございます。
使わせていただきます。」
「うむ。
ヌシは私の弟子じゃ。
それはいつになっても変わらぬ。
何があっても必ず戻ってくるのじゃ。」
なんだか長い別れになるような言い方だ。
「師匠こそどうしたんですか?
僕はこれから課題をこなしに行くだけですよ。」
師匠は目を閉じゆっくり頷く。
「そうであったな。
私も年をとったのかもしれぬ。
では、気をつけていくのじゃ。」
こうして僕は課題をこなすべく冒険者ギルドへ赴いた。
冒険者ギルドは想像通りの雰囲気だった。
依頼が所狭しと掲示板に張り付いている。
色や記号で内容が判断できるようになっているのは、字が読めない冒険者に対する対策だろう。
そして冒険者らしき人達が、依頼を確認や談笑をしていた。
僕がギルドの中でキョロキョロしていると、数人の冒険者と目が合った。
気にせず受付へ進む。
受付はファンタジー世界では良くあるお姉さん・・・では無くおばさんだった。
「冒険者の登録に来ました。」
「あら、その年で。
あらまあ。
紹介状が必要になるけど大丈夫?」
僕は師匠に書いてもらっていた紹介状を出した。
「それじゃ、これに必要事項を記入してね。
字が読み書きできないようなら、こちらで代筆するわよ。」
「大丈夫です。」
僕がそう言うと、受付のおばさんは紹介状に目を通した。
おばさんはしばらく固まっていた。
その間に登録に必要な内容を書いていく。
「じゃ、じゃあ登録をするからしばらく椅子にでも座って待っていてね。」
そういうと焦った様子でいそいそと奥へ引っ込んでいった。
何やら奥でヒソヒソと話し声が聞こえる。
恐らく師匠の紹介状が原因だろう。
いちいち気にしていたら仕方が無いので、僕は依頼を見て回ることにした。
資材調達のクエストが多い。
モンスター討伐も何かしらの部位を入手するためのものだ。
その中に純度の高い魔晶石採取というのがある。
師匠から教わったものの一つに、広範囲の魔力の気配を感じ取るというのがあった。
これならば僕にはお誂(あつら)え向きだ。
そうこうしているうちに登録が終わったようだ。
「オキスさん、登録が終わりました。
こちらが登録カードになります。」
さっきとは違う人が出てきた。
鼻髭が印象的な生真面目(きまじめ)そうなおじさんだ。
「初めまして。
私はこのギルドの責任者をしております、ビストレスと申します。
この度は、このようなところへお越しいただいてありがとうございます。」
この人めちゃくちゃ腰が低い。
もともとこういう人なのか、それとも師匠のせいなのか。
「この依頼を受けたいのですが。」
僕は依頼の一つを指さした。
「はい、こちらですね。
高純度の魔晶石採取の依頼ですか。
特に期限は設けられておりませんので、手の空いたときで大丈夫ですよ。
それからこちらがギルドの規約になりますので、お暇なときにでもお読みください。
それとも口頭で説明いたしましょうか?」
「大丈夫です、後で読んでおきます。」
僕はギルドの規約が書いてあるしおりを受け取る。
ということで、無事依頼を受けることは出来た。
次は仲間捜しをしなければならない。
さて、見つかるかどうか。
ぼっち無双は勘弁。
0
お気に入りに追加
622
あなたにおすすめの小説
英雄の孫は見習い女神と共に~そしてチートは受け継がれる~
GARUD
ファンタジー
半世紀ほど前、ブリガント帝国は未曾有の危機に陥った。
その危機を救ったのは一人の傭兵。
その傭兵は見たこともない数々の道具を使用して帝国の危機を見事に救い、その褒美として帝国の姫君を嫁に迎えた。
その傭兵は、その後も数々の功績を打ち立て、数人の女性を娶り、帝国に一時の平和を齎したのだが──
そんな彼も既に還暦し、力も全盛期と比べ、衰えた。
そして、それを待っていたかのように……再び帝国に、この世界に魔の手が迫る!
そんな時、颯爽と立ち上がった少年が居た!彼こそは、その伝説の傭兵の孫だった!
突如現れた漆黒の翼を生やした自称女神と共に、祖父から受け継がれしチートを駆使して世界に迫る魔の手を打ち払う!
異色の異世界無双が今始まる!
この作品は完結済の[俺のチートは課金ショップ?~異世界を課金アイテムで無双する~]のスピンオフとなります。当たり前ですが前作を読んでいなくても特に問題なく楽しめる作品に仕上げて行きます
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
死霊使いの花嫁
羽鳥紘
ファンタジー
死霊が住まうという屋敷で目覚めたミオは、自分が死霊使いである当主の花嫁であると聞かされる。覚えのないことに戸惑いながらも、当面の衣食住のため、ミオは当主ミハイルと契約を結ぶことにするが――◆小匙一杯ずつのラブとシリアスとコメディとバトルとミステリーとホラーが入ったファンタジー。番外編4コマ⇒https://www.alphapolis.co.jp/manga/452083416/619372892web◆拍手⇒http://unfinished-koh.net/patipati/ufpati.cgi
冥界の仕事人
ひろろ
ファンタジー
冥界とは、所謂 “あの世” と呼ばれる死後の世界。
現世とは異なる不思議な世界に現れた少女、水島あおい(17)。個性的な人々との出会いや別れ、相棒オストリッチとの冥界珍道中ファンタジー
この物語は仏教の世界観をモチーフとしたファンタジーになります。架空の世界となりますので、御了承下さいませ。
伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。
婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜
一花カナウ
ファンタジー
結婚式まで残りひと月を控えた《私》は買い物のために街へ。
そこで露天商に絡まれ、家に忘れてきた【守り石】の代わりにと紫黄水晶のペンダントを託される。奇妙な出来事だったと思うのも束の間、本来なら街に出ないはずの魔物に遭遇。生命の危機を前に《私》は精霊使いとして覚醒し、紫黄水晶からアメシストとシトリンというふたりの鉱物人形を喚び出すのだった。
これは《強靭な魔力を持つために生贄となる運命を背負った聖女》と彼女を支えるために生み出された美しい兵器《鉱物人形》の物語。
※カクヨムでも掲載中。以降、ノベルアップ+、ムーンライトノベルズでも公開予定。
※表紙は仮です(お絵描きの気力が尽きました)
右から、アメシスト、ジュエル、シトリンです。
※イチャイチャは後半で
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる